第20話 なぜそんなに強く反応するんだ。

　紀美子は気分が重たい中、退院手続きを手際よく済ませた。

病院を出ると、外を行き交う車を見て、彼女は少し気が散ってしまった。

しばらく黙って立ったが、彼女は携帯を取り出してタクシーを呼ぼうとした。

この時、携帯の画面に入江茂からの着信が入った。

紀美子は疲れた様子で深く息を吸い、電話を取った。

「どうしたの？」

「紀美子、お前は一体どうして電話を一度もかけてこないんだ？」と茂が言った

「あなたが私をブロックしたのよ。誰かが私を使ってあなたに連絡するのを恐れて。忘れたの？」と紀美子が答えた。

茂は苦笑いし、「忘れていたよ。気にするな、今どこにいるんだ？」

紀美子は病院を見つめ、「会社に戻って残業しようと思って」

数日間の入院で、仕事がかなり遅れていたからだ。

「そうか、残業代がたくさん出るのはいいことだ。紀美子、今手元にお金あるか？」

紀美子は携帯を握りしめた。お金のこと以外、話題はないのか？

前回自分をカジノに置き去りにしたことを、彼はもう忘れたのか？

紀美子は冷たく言った。「ない。全部借金返済に使ったから」

「数千円でもいいから。紀美子、お前が数千円も持ってないなんてことはないだろ？」と茂は焦った。

紀美子の心は痛み、「父さん、私を絶望に追い込むつもり？」

「お母さんの医療費を一度も負担してくれなかったのに、ギャンブルの借金は私が返したのよ。それなのに、まだ何を望むの？」

「お前、そんな言い方はないだろう？お前を育てたんだから、少しぐらいお金を使ってもいいだろう？」

紀美子は鼻をすすり、感情を抑えて言った。「本当にもうお金がない。来月にして」

「だめだ！」と茂は怒鳴った。「今すぐお金が必要なんだ！お前がくれないなら、会社に行って騒いでやるぞ！その時、恥をかくのは誰だと思う？」

「四千円！」紀美子は涙を堪えながら言った。「それだけしかない！」

「四千円でもいい。食事代にはなる。早く送ってくれ！」

電話を切った後、紀美子は唇をかみしめ、俯いて涙をこぼした。

彼女は入院しても、彼らに迷惑をかけることは一度も考えたことがなかった。

だが、茂は彼女の骨の髄までしゃぶり尽くそうとしていた。

どうして、彼女だけがこんな父親を持つことになったのか？

紀美子は涙を拭い、苦しみを飲み込んだ。

会社に行くためにバス停を探していた時