紀美子がソファに腰を下ろしたばかりのとき、玄関先から車のエンジン音が聞こえてきた。 すぐに、ノックの音が響いた。 「お母さん、僕が出るよ」佑樹はドアに一番近かったので、水の入ったコップを持ってドアへ向かった。 ドアを開けると、白髪混じりだが精力的なおじいさんが佑樹の前に現れた。 佑樹は微笑んで尋ねた。「どなたをお探しですか?」 森川爺は佑樹を見下ろし、一瞬で動きを止めた。 そして、興奮した表情で尋ねた。「坊や、君は誰だい?」 佑樹は笑顔で答えた。「おじいさん、最初にこちらが誰かを聞くのは失礼じゃないですか?」 「似ている!」森川爺は顔を輝かせた。「話し方と口調が晋太郎にそっくりだ!」 その言葉を聞いた佑樹は警戒心を抱き、口を開こうとしたそのとき、後ろから母の呼び声が聞こえた。 「佑樹、誰が来たの?」 佑樹は振り向いて紀美子を見た。「変なおじいさんが来たよ」 紀美子はその声を聞いてすぐに警戒した。玄関に急いで向かった。 森川爺を見た瞬間、紀美子の心臓は激しく鼓動した。 晋太郎一人でも警戒しなければならないのに、今度は森川爺まで来た! もし彼らが佑樹の血が森川家と繋がっているものだと知ったら、彼女はこの子を守れない! 紀美子は手を握りしめ、冷静を装って前に進んだ。「森川さん」 紀美子を見た途端、森川爺の表情は一気に冷たくなった。 彼は手を上げて佑樹を指差し、「これは晋太郎の子供か?」 紀美子は答えず、佑樹のそばに行き、小さな背中を優しく叩いた。 「佑樹、二階で遊んでてね。お母さんはこのおじいさんと話があるから」 佑樹はうなずき、リビングに戻り、念江とゆみを連れて二階に上がった。 曲がり角で、佑樹は念江とゆみの小さな手を握りしめ、しゃがみこんだ。 ゆみは興奮して言った。「お兄ちゃん、聞き耳を立てるの?それ、好きだよ!」 佑樹は静かにするよう合図し、ゆみはすぐに口を閉じた。 紀美子が森川爺をリビングに連れて行くのを見た後、念江の目は暗くなり、低い声で言った。「おじいさんだ」 ゆみは驚いた。「あなたのおじいさん?!お母さんをいじめに来たのかな?」 念江は首を振った。「わからない」 佑樹は小さな頭で考えを巡らせ、念江に手を差し出して言った。「携帯を貸して」 念江
森川爺は鷹のような目を細めた。「君は特別だな!」 「お褒めいただき、ありがとうございます」紀美子も遠慮なく答えた。 森川爺は視線を階段に向けた。「では、子供のことについて話しましょう」 紀美子は警戒心を抱きながら彼を見た。「私の子供にあなたは何の権利があるのですか?」 森川爺は顔色を険しくして答えた。「あの子は晋太郎にそっくりだ!」 「だからといって、晋太郎の子供だとは限りません!」紀美子は冷たく反論した。 森川爺は鼻で笑った。「いいだろう!君が強がっても、DNAは嘘をつかない! 「今日ここで言っておくが、あの子が晋太郎の子供なら、森川家は決して君のような女のそばに子供を置かない! 親権は必ず手に入れる!」 紀美子の心臓は鼓動し、手のひらには冷や汗が滲んだ。 晋太郎が真実を知っているなら、まだ対処の方法がある。 しかし、もし森川爺に知られたら、彼女には一切の余地がなくなるだろう! 彼女の子供を絶対に森川爺に連れ去らせるわけにはいかない! 突然、玄関からドアが開く音が聞こえた。 紀美子と森川爺が振り返って見ると、悟が新鮮な野菜を持って急いで入ってきた。 紀美子は驚いた。「どうして……」 「パパが帰ってきたよ」 佑樹が階段の上から顔を出した。 続いて、ゆみの柔らかい声が響いた。「パパ、何を買ってきたの?」 紀美子は目を瞬かせる佑樹を見て、すぐに状況を理解した。 この二人の子供が彼女を助けるために動いたのだ。 紀美子は協力するように立ち上がり、悟の腕を自然に挟み、「今日は早く帰ってきたのね、子供たちと遊んであげられるわ」 悟は一目で状況を理解し、優しく答えた。「特に用事がなかったから、早く帰ったんだ」 そう言って、子供たちに頷きかけた後、視線を森川爺に向けた。 「こちらの方は?」悟が尋ねた。 紀美子は淡い笑顔で説明した。「晋太郎の父親よ」 悟は微笑んで言った。「森川さん、こんにちは」 森川爺は呆然とした。これは一体どういう状況だ?? しかしよく見ると、この男とあの子供は確かに少し似ている。 年を取ったせいで、区別がつかないのか? だが、森川爺はすぐにその考えを否定した。 あの子供は明らかに晋太郎の小さい頃の写し絵だ!念江にもそっくりだ! 他人の
これを考えて、紀美子はほっとした。 二人の子供がこんなに優れているとは、彼女には身に余る光栄だ。 「バン——」 突然、階上から鈍い衝突音が聞こえた。 皆が一斉に頭を上げて上を見た。 反応する間もなく、朔也の叫び声が聞こえた。「放して……放してくれ……」 紀美子は緊張して、すぐに階上に駆け上がった。 三人の子供たちも後に続こうとしたが、悟に止められた。 二階に上がると、紀美子は白芷が朔也に馬乗りになっているのを見た。 彼女は両手で朔也の首を激しく絞めつけ、「死ね!!死ね!!」と繰り返していた。 朔也は顔を真っ赤にしながら、白芷の指を必死に引き離そうとしていた。 反撃はできたが、そうする勇気はなかった。 結局、彼女は紀美子が連れてきた人なのだ。 紀美子は急いで白芷の腕を掴み、「白芷!朔也を放して!」 白芷は急に顔を上げ、猩紅の目で紀美子を睨みつけた。 「私を止めるな!男はみんな死ぬべきだ!」 「白芷!」紀美子は必死に説得した。「彼は悪い男じゃない、私の友達なの。まずは放してくれない?」 「いやだ!」白芷は怒鳴り、拒否した。 彼女の手の力はさらに強くなり、まるで朔也を殺さないと気が済まないかのようだった。 紀美子がもう一度二人を引き離そうとしたその時、悟の声が響いた。 「任せて」 そう言って、彼は身をかがめ、指で白芷の手首のツボを押し、簡単に白芷の手を朔也の喉から外した。 空気を吸った瞬間、朔也は激しく咳き込んだ。 白芷は悟の支配から逃れようと狂ったように暴れ、「この野郎!放して!! 「男なんて誰も信じられない!みんな私を狂わせようとしてる!私が死ぬのを望んでいるんだわ!!」と叫んだ。 その間に、朔也はすぐに立ち上がり、喉を押さえながら紀美子の後ろに隠れた。「G!ゴホン、ゴホン……信じてくれ、私は何もしてないんだ。ただ彼女が狂ったようにドアを開けて飛びかかってきただけだ」 紀美子は朔也の人柄を信じ、彼を慰めた。「わかってるわ。まずは白芷の様子を見てみよう」 朔也は頷き、紀美子は白芷の前に歩み寄った。「白芷、よく見て、私よ!紀美子よ!」 白芷は警戒心を抱きながら紀美子を睨み、「知らない!私はあなたを傷つけるつもりはない!男たちが死ねばいいだけ!」 紀美子は悟
悟が出て行ってから、丸々四時間が経った。 夕食時になって、ようやく疲れ果てた状態で帰ってきた。 紀美子はジュースを一杯注いで彼に渡し、状況を尋ねた。「どうだった?何か情報は?」 悟は首を振り、ソファに座ってジュースを一口飲んでから話し始めた。 「何もなかった。彼らに写真を見せても、何の手がかりも得られなかった」 紀美子は頭を抱えた。「じゃどうすればいいの?」 誰も探していない、しかも精神疾患を抱えている人を家に置いておくのは不安だ。 何より、子供たちがここにいる。 しかし、送り出すにしてもどこに送ればいいのか?病院か?それはあまりにも非人道的だ。 外に放り出す?精神的に不安定な女性が外で何に遭遇するか想像もつかない。 朔也はソファにだらしなく横たわりながらリンゴをかじっていた。「私が思うには、拾った場所に戻すのが一番だよ」 「それは無理だ」 「絶対にダメよ!」 紀美子と悟が同時に朔也を否定した。 朔也は一瞬息をのむと、「じゃあ、どうするつもりだ?」と言った。 悟は紀美子を見て、「君が気にしないなら、友人の医者を呼んで彼女の状態を見てもらう」 「それしかないね」紀美子は答えた。 話が終わり、紀美子は三人の子供たちを連れて二階へ行き、洗面所へ行った。 そして子供たちを寝室に戻して布団をかけてあげると、ゆみが不安そうに尋ねた。 「ママ、あのおばさんはどうしたの?」 紀美子はゆみの頬を軽くつねって、「心配しないで、おばさんは病気なの。治せば大丈夫だから」 ゆみが言った。「ママ、心配しないで。悟パパが何とかしてくれるよ」 紀美子は微笑んで答えた。「わかってるわ。おやすみなさい。でも、おばさんの前ではこのことを言わないでね」 三人の子供たちは頷き、念江は小声で言った。「お母さん、おやすみなさい」 紀美子は三人の子供たちの額にそれぞれキスをして、「おやすみ……」と言った。 深夜。 真っ暗な子供部屋で、小さな影が突然すっと起き上がった。 鼻を押さえながら、彼は枕元の携帯を手探りで取った。 次に画面を明るくし、布団を持ち上げてベッドから降り、足音を忍ばせながら素早く洗面所へ向かった。 ドアを閉めると、念江は爪先立ちで壁のライトをつけ、鼻を押さえていた手を下ろした。下を
秋山先生は、「彼女はかなり酷い暴力行為を受けたため、男性に対して非常に大きな恐怖を抱えているようです。その恐怖は彼女の潜在意識の中の自己防衛行為を引き起こし、そして怒りに転換し男性を攻撃するようになったわけです。初歩的な診断結果は過度なストレス反応による深度な精神障害ですが、病院に行き治療を受けることをお勧めします」と答えた。入江紀美子は困った。「私は彼女の親族ではないし、彼女の代わりに決定をする権利がありません。何か他の治療法はないのですか?」秋山先生は暫く黙ってから、「ここで薬物を処方して暫く観察することはできますが、やはりできるだけ早く彼女の家族を見つけて引き渡した方がより安全です」紀美子は感動して礼を言った。「ありがとうございます、秋山先生。私の方で何とかしてみます!では、彼女のことを宜しくお願いします。私はまだ仕事がありますから、お金のことは言ってくれれば、何とかします」秋山先生は笑って、「大丈夫です、塚原先生が払ってくれましたから」紀美子は一瞬止まった。彼はまた手際よくやってくれておいたのか?秋山先生は紀美子を見て、「塚原先生と仲が良いですね」と冗談交じりに言った。紀美子は顔が少し赤くなり、「ええ」と低い声で返事した。午後。紀美子は3人の子供を連れて松沢初江の見舞いに東恒病院へ向った。車を降りて、彼達は直接入院病棟を目指した。しかし、その後ろにはもう一台の車が止まっていた。車の中に座っていた狛村静恵は毒々しい目つきで紀美子と子供達の後ろ姿を見つめていた。そして、彼女は入院病棟と書かれた看板を見上げて、紀美子達は誰を見舞いに来たのだろうと戸惑った。静恵は何かを思い出したかのように、慌ててサングラスをかけ、車を降りて紀美子達の後を追った。病院の最上階にて。目の前の病室を見てびっくりした入江ゆみは、「お母さん、ここきれい、ゆみもここに住みたい!」と言った。紀美子は難しい表情を見せながら、「ゆみちゃん、ここは病院だよ、住みたいと思えば住めるところじゃないの。早く「ぷっ、ぷっ、ぷっ」してその言葉を取り消して、縁起でもないわ」ゆみは小さな舌を出しながら、紀美子のまねをして、「ぷっ、ぷっ、ぷっ」と音を出した。紀美子は3人の子供を連れて初江の病室に向った。ゆみは酸素マスクを
松沢初江の息子の大河光輝は、「どちら様ですか?」と聞き返した。「大河さん、私は誰なのかはいいですから」狛村静恵は軽くしくしくと泣きながら、「初江おばさんが、今東恒病院の入院病棟の最上階で治療をうけてるの」「なに?!」光輝は思わず声を上げ、信じられないような口調で、「間違いなくうちの母なのか?!」と確認した。「信じてくれないなら東恒病院に来て自分で確認してみてください」「うそをついていたら、警察に通報するからな!」光輝は警告した。静恵「大河さん、初江さんはいい人です。彼女に助けてもらっていたし、私は今好意であなたに連絡しているのですから、その言い方はないでしょう。怒るにしても、知っているのにわざと教えてくれなかった奴に怒るべき、そうでしょう?」静恵は初江の状況をすべて光輝に教えた。静恵は光輝の怒りを掻きたててから電話を切った。彼女は無表情に演技で流した涙を拭いた。そして、彼女はこれからの展開を座って待っていた。入院病棟にて。紀美子の携帯が鳴り出した。知らない人からの着信を見て、彼女は病室を出て電話に出た。「もしもし……」「入江紀美子さんですか?!」「どちら様ですか?」紀美子は戸惑った。「私は大河光輝だ!松沢初江の息子!」光輝は怒鳴った。何故光輝が自分に電話をしたのか、紀美子は戸惑った。前に初江から、息子の光輝を海外に送りだしてから、彼からの連絡が途絶えたと聞いていた。たとえ初江が彼に連絡をいれても、彼はいつもうんざりして電話を切っていた。その後、光輝は初江と親子関係を解除する始末だった。なので、二人はもう十年以上連絡をとっていなかった。なぜ今急に尋ねてきたのだろう?紀美子は、「そうですが、何か御用がありますか?」と返事した。「うちの母はどうした?!」光輝は咆哮して問い詰めた。紀美子は一瞬で分かった、どうやら誰か小賢しいまねをして彼に初江のことを教えたようだ。「大河さん、今更電話をしてきたのはちょっとおかしな話じゃない?」紀美子は聞き返した。光輝「俺がお前に聞いてんだ、余計なことを言ってんじゃねえよ!」「あなた、どういう立場で聞いてるの?」紀美子は冷たい声で聞いた。「前はあなたが初江さんを見捨てたのに、今更割り込んでくる資格があるの?」「お前はどうな
話を聞いた露間朔也は思わず激昂した。「それは人間のやることか?」入江紀美子も頭にきて額に手を当て、「だから、静かにして頂戴……」と言った。ちょうどその時、ボディーガードの一人が入ってきた。「入江さん、玄関で無理やりに入ってこようとした人を押さえました」紀美子は驚いて、まさか大河光輝が来たのか?「ビッチ!出てこい!」そう思った傍から、ドアの向こうから怒鳴りが聞こえてきた。朔也ははたと立ち上がり、「あいつを黙らせてくる!」と怒りを抑えきれずに言った。紀美子は慌てて朔也の襟を掴み、「無茶なことをしないで!!」と言って止めようとした。怒り狂った朔也は喋った。「G!あの畜生が玄関まで押しかけてきたんだぞ!君のことをビッチ呼ばわりするなんて、俺は許さん!」紀美子は立ち上がり、「私が解決するから、あなたは黙っといて」「ダメだ!」朔也は断った。「一緒にいく!」固執した朔也を見て、紀美子は妥協せざるを得なかった。「じゃあ、無茶だけはしないと約束して」「分かったよ!」朔也はうんざりして返事した。紀美子は漸く安心して朔也と一緒に玄関に向った。玄関の外にて。光輝はボディーガード達に押さえられて床に伏せていた。しかし彼はそれでも続けて罵っていた。紀美子が出てきたのを見て、光輝は再び首を上に捩じって怒鳴り続けた。「ビッチ!うちの母が怪我したことをなぜ黙ってた!お前のせいで母が怪我したんだろう、慰謝料を払え!」紀美子は外で揉め事になったら近所に迷惑なので、ボディーガード達に光輝を別荘の中に入れるように指示した。ドアをしめてから、紀美子は冷たい視線で光輝を見て、「このことは誰に教えてもらったの?」と聞いた。「お前に関係ねえよ!」光輝はまた首を捩じって叫んだ。「俺が分かっているのはお前のせいで母が病院まで運ばれたことだ!」紀美子は横目で光輝を睨み、ソファに座って聞いた。「あなたは金だけが欲しいんでしょう?」「その通りだが、なにか?!」光輝は恥知らずに聞き返した。紀美子は彼を見つめながら、「金はあげない。なぜなら、初江さんの治療にも金がかかるから。無茶なことをして私から金を脅かそうとするなら、裁判を起こすわよ。でも一つだけ注意してあげるわ、あなたは自ら初江さんと親子関係を解除してもう10年以上
大河光輝は嬉しさを隠せずに答えた。「分かった!一週間だな!待ってやる!」入江紀美子は頷いてボディーガード達に指示して光輝を解放した。光輝が帰った後、露間朔也は怒りで歯ぎしりした。「冗談じゃない!!人でなしだ!」紀美子はソファに腰を掛け、淡々と答えた。「この世の中で一番まともに付き合えないのはこういう理不尽な人だよ」「だから君は本当に1億で奴を追い払うつもり?」朔也は聞いた。「そこまで裕福じゃないわ」紀美子は無力で朔也を見た。以心伝心が消えたのかしら?朔也は暫く戸惑ってから、急に悟った。「分かった、遅延戦術か!」「そうとも言えるわ」紀美子は、「一番重要なのはその背後で情報を流した人は誰だったのかよ」朔也は感心して親指を立てた。「やるな、G!」夜、寝る前に。紀美子は渡辺翔太に電話をかけた。電話が繋がり、紀美子は聞いた。「お兄ちゃん、起きてる?」「うん、どうかした?」翔太の声は疲弊に満ちていたが、優しさを帯びていた。紀美子は軽く眉を寄せ、「お兄ちゃん、なんだか疲れてるみたいけど、最近なんかあったの?」と聞いた。翔太は目の前の山積みの顧客資料を見て、苦笑いしながら首を振った。「いいや、喉の調子が悪いだけだ」彼は渡辺家を内部から潰し、裏で顧客を横取りたいことを紀美子に教えたくなかった。教えたら彼女まで心配をさせるからだった。彼は最短時間で外祖父のコントロールから離脱し、自分を強くしてたった一人の妹を守らなければならなかった。紀美子「明日人を遣ってハチミツを持って行かせる、体にいいから水に混ぜて飲んで。それに、ちょっと手伝ってもらいことがある」翔太「何だ?」紀美子「初江さんが襲われた件、そして子供達が誘拐された件で、渡辺家がやった証拠がほしいの……」紀美子はその日の出来事を翔太に教えた。話を聞いて、翔太は「その証拠を光輝に渡して彼に外祖父と狛村静恵に弁償を要求させるつもりか?」「そう」紀美子「私は纏めてけじめをつけてもらいたかったけど、今は会社を巻き込まれてるから、一歩先に行動を取らざるを得なくなったわ」「分かった、二日だけ時間をくれ」翔太は言った。「ありがとう、お兄ちゃん」紀美子は笑って礼を言った。紀美子に「お兄ちゃん」と呼ばれ、翔太の疲弊は一掃された。「紀美