Share

第203話 強行侵入

Author: 花崎紬
 話を聞いた露間朔也は思わず激昂した。「それは人間のやることか?」

入江紀美子も頭にきて額に手を当て、「だから、静かにして頂戴……」と言った。

ちょうどその時、ボディーガードの一人が入ってきた。

「入江さん、玄関で無理やりに入ってこようとした人を押さえました」

紀美子は驚いて、まさか大河光輝が来たのか?

「ビッチ!出てこい!」

そう思った傍から、ドアの向こうから怒鳴りが聞こえてきた。

朔也ははたと立ち上がり、「あいつを黙らせてくる!」と怒りを抑えきれずに言った。

紀美子は慌てて朔也の襟を掴み、「無茶なことをしないで!!」と言って止めようとした。

怒り狂った朔也は喋った。「G!あの畜生が玄関まで押しかけてきたんだぞ!君のことをビッチ呼ばわりするなんて、俺は許さん!」

紀美子は立ち上がり、「私が解決するから、あなたは黙っといて」

「ダメだ!」朔也は断った。「一緒にいく!」

固執した朔也を見て、紀美子は妥協せざるを得なかった。「じゃあ、無茶だけはしないと約束して」

「分かったよ!」朔也はうんざりして返事した。

紀美子は漸く安心して朔也と一緒に玄関に向った。

玄関の外にて。

光輝はボディーガード達に押さえられて床に伏せていた。

しかし彼はそれでも続けて罵っていた。

紀美子が出てきたのを見て、光輝は再び首を上に捩じって怒鳴り続けた。「ビッチ!うちの母が怪我したことをなぜ黙ってた!

お前のせいで母が怪我したんだろう、慰謝料を払え!」

紀美子は外で揉め事になったら近所に迷惑なので、ボディーガード達に光輝を別荘の中に入れるように指示した。

ドアをしめてから、紀美子は冷たい視線で光輝を見て、「このことは誰に教えてもらったの?」と聞いた。

「お前に関係ねえよ!」光輝はまた首を捩じって叫んだ。「俺が分かっているのはお前のせいで母が病院まで運ばれたことだ!」

紀美子は横目で光輝を睨み、ソファに座って聞いた。「あなたは金だけが欲しいんでしょう?」

「その通りだが、なにか?!」光輝は恥知らずに聞き返した。

紀美子は彼を見つめながら、「金はあげない。なぜなら、初江さんの治療にも金がかかるから。

無茶なことをして私から金を脅かそうとするなら、裁判を起こすわよ。

でも一つだけ注意してあげるわ、あなたは自ら初江さんと親子関係を解除してもう10年以上
Continue to read this book for free
Scan code to download App
Locked Chapter

Related chapters

  • 会社を辞めてから始まる社長との恋   第204話 なぜ助けてくれるんだ?

     大河光輝は嬉しさを隠せずに答えた。「分かった!一週間だな!待ってやる!」入江紀美子は頷いてボディーガード達に指示して光輝を解放した。光輝が帰った後、露間朔也は怒りで歯ぎしりした。「冗談じゃない!!人でなしだ!」紀美子はソファに腰を掛け、淡々と答えた。「この世の中で一番まともに付き合えないのはこういう理不尽な人だよ」「だから君は本当に1億で奴を追い払うつもり?」朔也は聞いた。「そこまで裕福じゃないわ」紀美子は無力で朔也を見た。以心伝心が消えたのかしら?朔也は暫く戸惑ってから、急に悟った。「分かった、遅延戦術か!」「そうとも言えるわ」紀美子は、「一番重要なのはその背後で情報を流した人は誰だったのかよ」朔也は感心して親指を立てた。「やるな、G!」夜、寝る前に。紀美子は渡辺翔太に電話をかけた。電話が繋がり、紀美子は聞いた。「お兄ちゃん、起きてる?」「うん、どうかした?」翔太の声は疲弊に満ちていたが、優しさを帯びていた。紀美子は軽く眉を寄せ、「お兄ちゃん、なんだか疲れてるみたいけど、最近なんかあったの?」と聞いた。翔太は目の前の山積みの顧客資料を見て、苦笑いしながら首を振った。「いいや、喉の調子が悪いだけだ」彼は渡辺家を内部から潰し、裏で顧客を横取りたいことを紀美子に教えたくなかった。教えたら彼女まで心配をさせるからだった。彼は最短時間で外祖父のコントロールから離脱し、自分を強くしてたった一人の妹を守らなければならなかった。紀美子「明日人を遣ってハチミツを持って行かせる、体にいいから水に混ぜて飲んで。それに、ちょっと手伝ってもらいことがある」翔太「何だ?」紀美子「初江さんが襲われた件、そして子供達が誘拐された件で、渡辺家がやった証拠がほしいの……」紀美子はその日の出来事を翔太に教えた。話を聞いて、翔太は「その証拠を光輝に渡して彼に外祖父と狛村静恵に弁償を要求させるつもりか?」「そう」紀美子「私は纏めてけじめをつけてもらいたかったけど、今は会社を巻き込まれてるから、一歩先に行動を取らざるを得なくなったわ」「分かった、二日だけ時間をくれ」翔太は言った。「ありがとう、お兄ちゃん」紀美子は笑って礼を言った。紀美子に「お兄ちゃん」と呼ばれ、翔太の疲弊は一掃された。「紀美

  • 会社を辞めてから始まる社長との恋   第205話 生かすか殺すか

     妹?大河光輝はよく考えてから、「入江紀美子か?」と聞いた。渡辺翔太「そうだ。しかし証拠が欲しいなら、まずあることをやってもらう必要がある。」「何を?」「今回のことは誰に教わって、そして誰の指示で紀美子に金を脅したのかを教えてくれ」翔太はそのUSBメモリーを手で弄びながら、「お前の答えの真偽は、俺は確認する方法がある。だがもし嘘をついたり、証拠を手に入れてからまた俺の妹に迷惑をかけたりするなら、自分が生きて帝都から出れるかをよく考えることだ。あと、その証拠が金になるかどうかは、お前自身の力量にかかってる」翔太は淡々と喋っていたが、話を聞いた光輝の顔色は急に変わっていた。多くの人々が集まる公開の場所で、人を無理やり車に突っ込むような人に、何をされてもおかしくない。あの女の背後の人を調べ損ねたのが失策だった!目の前の男を敵に回すより、早く証拠を手に入れて金を要求したほうが断じていい!光輝「分かった、教えてやる。俺に電話をくれた女の名前は知らねえが、通話記録はある……」光輝はすべてを誠実に吐いて、電話番号を翔太に教えた。そして、彼は聞いた。「もうその黒幕を教えてもらって、証拠の録音をくれて帰らせてもらえるか?」「まだだ」翔太は「まずは俺が確認してから」と答えた。そう言って、翔太は車の窓ガラスを下ろし、ボディーガードにその携帯番号を調べるように指示した。数分後、ボディーガードは翔太に報告した。「社長、電話番号は狛村静恵が他人の個人情報を使って登録したものです」翔太の眼底に一抹の冷たさが浮かび、「分かった」と答えた。その後、翔太はUSBメモリーを光輝に渡して、「お前の母を襲った奴は渡辺野碩と狛村静恵が手配したのだ。つまりお前に電話をかけた女、どうするかはお前自分で考えろ」光輝の顔は驚きと憤怒で歪み、USBメモリーを受け取って車を降りていった。ボディーガード「社長、このまま奴に渡していいのですか?」翔太は光輝の後ろ姿を見つめながら、「まさか、渡辺野碩が黙って脅されるような性格だと思っていないよな?」ボディーガードは一瞬動きが止まり、「つまり、奴らをイヌの……ゴホンっ、内輪揉めをさせるつもりですか?」翔太は口元に笑みを浮かべ、「紀美子さえ無事でいてくれれば、奴らがどうなろうと、

  • 会社を辞めてから始まる社長との恋   第206話 お前の母は誰だ?

     もしも入江紀美子が後者を選んだら、彼は今後一切彼女に森川念江と会わせない!森川晋太郎の怒気を感じた杉本肇は一瞬で胸が詰り、頭を下げて答えた。「はい、若様」指示を受けた肇が下がろうとした時、また晋太郎に呼び止められた。「新しく入ってきたボディーガードたちは全員クビだ!技術部は全員入れ替える!」肇はびっくりして、前のボディーガードたちは既に奥様が見つからなかった件で、小原以外全員入れ替えらえた。今日は若様が入江さんのことでキレてまた全員入れ替わることになった。このままだと、会社全体がその件で動揺するだろう……しかし肇は余計なことが言えず、無理やりに指示された通りにやるしかなかった。渡辺邸にて。大河光輝は尋ねてきたが、入り口でボディーガードに止められた。今回、光輝は賢かった。「お二人の兄さん、私は渡辺野碩さんに用事があって、どうか入れさせてもらえないかな?こちらに録音データがあるから渡したいと伝えて」ボディーガード「今伝えてくるから、ここで待ってろ」光輝は数分待っていたら、ボディーガードが出てきた。「ついて来い」そう言って、光輝を連れてやたらと広い屋敷に入った。渡辺家の大きなガーデン、そして超立派な別荘を見て、光輝の目が光った。別荘に入って、光輝はソファに座ってテレビを見ていた野碩が見えた。彼は慌てて挨拶をした。「野碩さん、こんにちは!」野碩は振り向いて光輝を見て、「俺に渡したものって何だ?」と聞いた。光輝は野碩が単刀直入に聞いてきたから、隠さずに言った。「というのはですね、あなたが人を遣ってうちの母親を襲って怪我をさせた件、どう弁償してくれますか?多く請求するつもりはありません、2億でいい!」光輝は渡辺家の立派な屋敷を見て、請求金額を増やした。野碩の目つきは一瞬きつくなり、あざ笑って聞いた。「俺がお前の母を襲ったと?お前の母は誰だ?」「松沢初江だ!入江家で家政婦をしている!」光輝は答えた。野碩は声出して笑った。「松沢初江?聞いたこともないな」光輝「あなたは入江紀美子の子供を拉致した時、うちの母はそれ止めようとしたらあなたの手下に殴られて怪我をしたこと、忘れたのか?」「人に濡れ衣を着せるにも程がある!」野碩は言った。「証拠は?」光輝は携帯を取り出して、コピ

  • 会社を辞めてから始まる社長との恋   第207話 行けなくなった

     弁護士はすぐに来て、契約書を書き終わり2人が署名した後、渡辺野碩は快く2億の小切手を大河光輝に渡した。光輝はまさかこの2億がこんなにも簡単に手に入るとは思わなかった。彼は渡辺野碩の前で携帯の中の録音を削除し、USBメモリーも渡辺野碩に渡した。その後小切手をポケットにしまい感動しながら別荘を出た。光輝が帰ってすぐ、野碩の顔色が一瞬で陰湿になった。あんな下々の者が2億円をもらっていくなど許されない。野碩は隣のボディーガードに冷たい声で命令した。「奴を消せ。きれいに片付けろ!」ボディーガードが頷き、「はい!」と返事した。午後。幼稚園の下校時間になった。入江紀美子は入り口で子供達を迎えに来た。突然、耳元に尖り切ったブレーキをかける音がした。音を辿って眺めると、1台のロング型のメルセデス・マイバッハが彼女の後ろに止まった。そしてすぐ、杉本肇が運転席から降りてきて、礼儀正しく後ろの席のドアを開けた。森川晋太郎は黒いスーツを纏い、パワフルなオーラを発しながら車から降りてきた。目元のくまが近日の疲弊を表わしていたが、それでも彼の俊美な五官を遮りきれなかった。紀美子は彼の前の少し離れた所に立っていたが、彼はまるで相手が見えなかったのように、紀美子の傍を素通りした。紀美子は疑惑の目で彼を見て、これは仕事が終わって子供達の世話をしにきたわけ?余計なことを考えずに、紀美子は視線を戻しそこに立って子供達が出てくるのを待った。暫くして、先生が子供達を連れて学校から出てきた。森川念江は一目で紀美子が見えて、入江佑樹と入江ゆみと一緒に彼女のところに行こうとした途端に、晋太郎の冷たい顔が目に映ってきた。念江は一瞬止まり、何でお父さんが来た?何でお母さんと距離を置いてるの?念江は心の中で悪い予感がして、どちらに行くべきかを躊躇った。となりのゆみはいきなり叫び出した。「お母さんが来た!」佑樹は念江の腕を掴んで、「行くよ、家に帰ろう」そう言った途端に、肇が歩いてきた。彼は念江の前で止まり、「坊ちゃま、私たちと一緒に帰りましょう」と言った。念江は唇をすぼめ、眼差しが幾分と暗くなった。彼は頭を下げ、「彼達と藤河別荘に行っちゃダメなの?」と聞いた。肇はとなりにいた呆然とした顔の佑樹とゆみを眺

  • 会社を辞めてから始まる社長との恋   第208話 何があった?

     息子があんな顔をしているのを見て、入江紀美子は心が痛んだ。この男は一体何を考えてるのだろう。自分が機嫌悪いから子供に発散する?!紀美子は森川晋太郎を見て、「子供の要望を聞いてあげられないの?なぜいつもそんなに独断的なの?!」と問い詰めた。晋太郎は冷たい目線で紀美子を睨んだ。彼女とその2人の子供を見て、晋太郎は思わず彼女が他の男とベッドで交歓するシーンを思い浮かべた!心の中の怒りが一瞬で湧き上がってきた。彼はしゃがんで念江を抱き上げ、振り向いて車の方に歩き出した。紀美子は眉を寄せ、「晋太郎!」と呼び止めようとした。男は暫く止まり、そして再び歩き始めた。紀美子は2人の子供を連れて晋太郎に追いつき、「念江くんが落ち込んでるのが見えないの?!」晋太郎は全く構ってやろうとせず、念江を連れて車に乗り込んだ。そしてドアを「ドン」と閉めた。紀美子は呆然としていて、このシーンを目にした杉本肇は無力にため息をついた。なぜこうなったのだろう……折角仲直りできそうになったのに……紀美子は心の痛みを堪えながら、息子が晋太郎に連れて行かれたのを見送った。彼女は無理に止めることができなかった。晋太郎を怒らせたら、今後は念江に会えなくなってしまう。「お母さん……」入江ゆみは心配そうに母を見上げ、「お母さん、泣かないで」と慰めた。紀美子の飛んでいた思いが娘に引き戻され、呆然と手を上げて子供の頬を撫でた。いつ泣き出したのか、彼女は自覚も無かった。紀美子は胸の痛みを押さえながら、こぼれた涙を拭きとり、しゃがんで娘に言った。「お母さんは大丈夫だよ、ただ念江くんを惜しんでるだけなの」ゆみは小さな手で紀美子の顔を触りながら、「お母さん泣かないで、念江お兄ちゃんはきっと戻ってくるよ」と言った。紀美子は頷き、無理やりに笑顔を見せ、「うん、きっと戻ってくるね」となりの佑樹は重々しい眼差しで遠く離れていく車を見つめた。このクズ男オヤジは、一体何を考えているんだ?!念江は漸く少し笑えるようになったのに、きっと再び自閉的になってしまう!このクズ男オヤジが嫌いだ!お母さんを泣かせるし!お母さんを悲しませるし!将来たとえ彼が自分を受け入れようとも、絶対相手にしないから!車の中にて。念江は静かに頭を垂ら

  • 会社を辞めてから始まる社長との恋   第209話 彼はまた人殺しをするつもり?!

     渡辺翔太は可哀想に体が震えるまで泣いた入江ゆみを抱き上げた。そして優しそうに彼女の背中を撫でながら、入江紀美子に聞いた。「紀美子、そうだったのか?」紀美子は目を垂らして、「うん……」と返事した。翔太「なぜだ?」紀美子は時間をかけて必死に考えていたが、どうしても分からなかった。「分からないわ」紀美子は落ち込んで答えた。「紀美子、この件は急いではならない」翔太は分析した。「晋太郎は心の中で君を思っていれば、いつまでもそうしてはいられないはずだ」紀美子「お兄ちゃん、私は彼達に裁判を起こしたい」「君は子供の親権を取れないよ」翔太は単刀直入に言った。「念江は最初から晋太郎の下にいたから。しかも晋太郎の帝都での力を考えると、君に勝ち目はない。」紀美子は拳を握り緊め、本当に他の方法はないのか?念江が落ち込んで黙っている姿を思い浮かべたら、紀美子は心が砕けそうになった。ドドド―入江佑樹が急に降りてきて、紀美子の手を掴み、「お母さん、一緒に上がってきて」と言った。紀美子は呆然と息子について2階に上がり、部屋に入ってから、パソコンの画面に映っている念江の小さな顔が見えた。紀美子は慌ててパソコンに近づき、「念江くん!」と呼んだ。母を見て、念江の暗い眼差しが灯った。「お母さん」紀美子は泣きそうになり、「念江くん、お父さんに怒られたりはしなかった?」と聞いた。「いいえ」念江は首を振り、「お母さん、目が赤いよ」と言った。紀美子「大丈夫、埃が目に入っただけ」「お母さんは君に会いたくて、惜しんでいるんだよ」佑樹は構わずに母の嘘の蓋を取った。念江は一瞬止まり、そして口元が微かに笑みを見せ、「うん、僕もお母さんに会いたい」と言った。紀美子は一瞬で目に涙で満ちて、思わず顔を横に向けたら、涙がこぼれ落ちてきた。それを見た念江は母を慰めた。「お母さん、悲しまないで。まだこうして連絡を取ることができるから。暫く経ってお父さんの気持ちが晴れたら、方法を考えてお母さんに会いに行く」佑樹もパソコンの前に来て、「念江、お母さんには僕がいるから、安心して!」と言った。念江「分かった、それじゃあ先に落ちるね。お母さん、佑樹くん、おやすみ」そう言って、念江はビデオチャットを切った。佑樹は小さな手で紀美子を抱きしめて

  • 会社を辞めてから始まる社長との恋   第210話 何言い訳をしてんだ!

     木曜日、早朝。渡辺邸にて。狛村静恵は携帯の着信音に起こされ、イライラして電話に出た。「もしもし!誰?」「ビッチ!俺に捕まってみろ!跡形無く潰してやるから!!」相手のかすれていた低い声が耳の中を響かれ、静恵は思わず目が覚めた。静恵は携帯に表示された電話番号を見て、恐怖で目を大きくした。大河光輝?!彼は既に外祖父に消されたんじゃなかった?なぜ生きている?!静恵は戸惑ったふりをして、「大河さん、それはどういう意味?」と聞いた。「なにもったいぶってんだ!俺は証拠がないが、お前の声を覚えている!」光輝は怒鳴った。「お前じゃなかったら、俺が奴らに金の請求なんかするもんか?!お前じゃなかったら、俺が追われて殺されそうになるもんか?!」静恵は布団をきつく握りしめ、「大河さん、それはあなたが誤解してるのよ。私だって、良心が不安だったから入江紀美子に金を請求するように教えたけど、まさかあんたがうちの外祖父のところに行くなんて思わなかったのよ」「もうすでにこんな羽目になったんだ、これ以上何言い訳をしてんだ?!」「言い訳してるわけじゃないけど、ことの発端は入江にあるのよ!」静恵は光輝を洗脳しようとした。「大河さん、ちょっと分析してみて?最初は入江が私にちょっかいを出したから、うちの外祖父が彼女に手を出した。平たく言えば、入江のせいであなたの母がこんな風になった、そうでしょう?」電話の向こうは黙り込んだ。静恵は心の中で不安になった、こんな奴とは絶対関わってはならない!暫く相手の声が聞こえず、静恵はまた喋り出した。「大河さん、あなはきっと利用されたのよ、渡辺家は帝都ではどんな地位か分かってるよね?人に脅されて黙っていられるものだとでも思う?そのやり方を教えた人は、きっとあなたはうちの外祖父に終われる羽目になるのを踏んで、人の手を借りてあなたを消そうとしたに違いないわ。私に言わせれば、あなたはすべての元凶の所へ行くべきだよ」「どうしろってんだ?!俺にあの入江とかいうビッチに手を出せとでもいうのか?!」光輝は歯ぎしりをしながら問い詰めた。静恵は口元に笑みを浮かべ、目が狡猾に光った。「方法なら、私は一つ知っているわ。あなたがお金を手に入れて、且つ無傷に身を引く方法」「その方法とは?!」「

  • 会社を辞めてから始まる社長との恋   第211話 役に立つと思う?

     紀美子は設計図を手にしていたが、それを下ろし、目を上げて尋ねた。「投資会社?」 楠子は頷いた。「そうです。我々Tycの将来性を見込んで、協力を申し出てきたようです」 紀美子は笑みを浮かべ、楠子を見た。「あなたはどう思う?」 楠子は真剣に答えた。「私は交渉する必要はないと思います。今回の予約販売額を見れば、次のバッチの服の製作と店舗設立の計画を進めるのに十分です。「すでに強力な資金流があるのに、なぜ他人と利益を分ける必要があるのでしょうか?」紀美子は問い返した。「では、別の質問をしよう。帝都で足を踏み固めるためには、金か人脈か、どちらが重要だと思う?」楠子はしばらく黙ってから答えた。「帝都には金持ちはたくさんいます」紀美子は続けた。「だからこそ、広い人脈があれば、遠くまで進むことができる。「こうしよう。まずこの会社の社長の背景と会社の実績を調べて。面談は急がなくてもいい」楠子は頷いた。「勉強になりました、入江社長。すぐに取り掛かります」MK、駐車場。晴は車を止め、降りようとした瞬間、車の後部が急に強くぶつけられた。彼は振り返り、赤いメルセデスから急いで降りてくる見慣れた姿を見た。相手はサングラスをかけていたため、晴は一瞬誰か分からなかった。晴は無言で車から降り、相手に話をしようとしたが、その女性はハイヒールを履いてサングラスを外し、急いで近づいてきた。晴が顔を上げ、二人の視線が交わった瞬間、顔色が変わった。「君か」「まさかあなたが!?」二人は同時に声を上げた。佳世子は晴を睨みつけ、「最低男!言え!どうやって賠償するの!!」晴はこめかみを抑え、「俺がどうして最低男なんだ?あの日君が俺と寝て、さっさと出て行ったんじゃないか?」「私がさっさと出て行ったって!?」佳世子は怒りに震え笑った。「さもないと、もう一度やるとでも言うの?」晴は彼女を見つめ、しばらく考え込んだ。「それも悪くないかもな……」「変態!!クソ野郎!!最低男!!」佳世子は晴の図々しさに激怒した。そして佳世子は電話を取り出し、保険会社に電話をかけた。こんな人と話し合いで済ませたくない!さもなければ、昼食も喉を通らなくなる!だってあれは初めてのことだったのに!あの男は何も言わなかった!佳世子は悔しさで目

Latest chapter

  • 会社を辞めてから始まる社長との恋   第1185話 お金は持ってる

    「そんなこと言わないで」中年の女性は涙を拭いながら言った。「霊にも寿命があるわ。時間がまだ尽きていなかったら、あなたたちの能力ならきっと彼を見つけられるはず」ゆみはふうっとため息をついた。「おばさん、霊の寿命にもいろいろあるの。中には一年もないものもいる。陰の借りを返した時点で、彼らの時間は終わるのよ。だから、お金を渡して手続きを済ませれば、すぐに成仏して転生できるってわけ。あなたも、あの世にしばらくいたなら知ってるはずでしょう?」これについては、ゆみ自身もうまく説明できなかった。結局のところ、すべて小林から聞いた話だ。「とにかく試してみて…お願い。試してみてちょうだい」中年の女性は懇願した。「わかった」部屋の外。晋太郎は少しの間休んでいたが、ふと口を開いた。「ゆみの件、認める」周囲の人々は驚き、彼を見つめた。佑樹が問いかけた。「俺たちの約束のせい?」「それもある。半分くらいな」晋太郎は背筋を伸ばして答えた。「もう半分は、自分がゆみに直接した約束を思い出したからだ」紀美子と二人の子供たちは顔を見合わせた。念江は微笑みながら言った。「パパが思い出してくれたなんて。ゆみがおじいちゃんのもとに戻れるのなら、よかった」「ああ」晋太郎は低い声で返事をした。「俺が子供たちを送っていくよ」「ダメ!」紀美子は即座に反対した。「悟はもうあなたを見つけたのよ。飛行機なんて、乗れるはずがない!」彼女はまるで傷口を抉られたかのように、ひどく動揺していた。晋太郎は彼女をじっと見据えた。「じゃあ、娘を一人で行かせるつもりか?」「小林さんに迎えに来てもらうわ」紀美子はきっぱりと言い切った。「とにかく、あなたは悟の目の前で飛行機に乗ることなんて許されない。どれだけ安全対策を徹底したとしても、私は認めない」今の自分には、晋太郎のどんな決定も止める資格はない。しかし、言うに越したことはない。一方、晋太郎は怪訝そうに彼女を見つめた。「君はこのことを知っているのに、どうして最初に俺に言わなかったんだ?」紀美子は軽く唇を噛んだ。「私は、あなたに嫌な記憶を思い出させたくなかったの」「俺が事件に巻き込まれたとき、君はどこにいた?」晋太郎が問い返した。

  • 会社を辞めてから始まる社長との恋   第1184話 病院に連れて行く

    彼女は周囲を見渡した後、紀美子に向かって掠れた声で呼びかけた。「……ママ……」紀美子は涙を堪えながら、そっとゆみの頬に手を添えた。「うん、ママはここにいるよ。大丈夫?」ゆみはゆっくりと頷いた。「大丈夫だよ、ママ。慣れてるから……」紀美子の目に涙が溜まった。自分の知らないところで、娘が一体どれほどの苦しみを味わってきたのか、想像もつかなかった。「だから車から勝手に降りるなって言っただろ!どうして言うことを聞かないんだ!」佑樹が叱りつけた。すると、念江がわざとらしく咳払いをして佑樹の言葉を遮った。「佑樹、まずはゆみを休ませよう」ゆみは佑樹の言葉を気にせず、ぱちぱちと瞬きをしながら、保健室の隅をじっと見つめた。「……おばさん……見えてるよ……」ゆみが弱々しく呟いた。彼女の視線を辿り、皆もそちらを見たが、何も見えなかった。晋太郎がベッドの反対側に座り、静かに尋ねた。「ゆみ、誰と話しているんだ?」ゆみは乾いた唇を舐め、答えた。「さっきまで私の体に乗っていたおばさん。あそこに立って、私を見てるの」晋太郎は訝しげに再び視線を向けた。しかし、やはり何も見えなかった。ゆみは彼の困惑を察し、紀美子に向かって手を伸ばした。「ママ、バッグの外側のポケットにお札があるから、それをパパに渡して」紀美子は言われた通り、シワだらけのお札を取り出し、晋太郎に手渡した。「パパ、このお札、私がこっそり真似して描いたの。これを貼れば、おばさんの姿が見えるよ」晋太郎は半信半疑ながら、お札を胸に貼り、再び隅を見た。すると今度は、そこに立っているものがはっきりと見えた。顔の様子が分からなくなるほどの損傷を受けた中年の女性が、じっとこちらを見つめている。晋太郎の胸に衝撃が走った。それと同時に、彼の中の常識が崩れ去った。突然、頭に激しい痛みが走り、晋太郎は目を閉じて両手でこめかみを押さえた。晴はすぐに気づき、急いで駆け寄った。「晋太郎?どうしたんだ?」その声に、全員が一斉に晋太郎へ視線を向けた。紀美子はすぐに立ち上がり、慌てて彼の元へ駆け寄った。「晋太郎!?」紀美子は彼のそばにしゃがみ込み、呼びかけた。「どこか具合が悪いの?病院に連れて行くわ!」晋太郎はゆっくり

  • 会社を辞めてから始まる社長との恋   第1183話 完全に理解する

    晋太郎は紀美子のそばに歩み寄り、彼女の手を取って薬を塗って包帯を巻こうとした。「結構よ」紀美子は手を引っ込め、冷たく拒否した。だが、晋太郎は諦めず、再び彼女の手を取り、手首をしっかりと押さえつけながら薬を塗った。紀美子は仕方なく、携帯を取り出し小林に電話をかけた。すぐに、小林は電話に出た。紀美子がまだ口を開く前に、小林の声が聞こえてきた。「ゆみのリュックの内ポケットに、あらかじめ用意したお札が入ってる。それをゆみに身につけさせろ。それでもあいつが離れないなら、もち米をゆみに振りかけるんだ。その後は、彼女がどうするべきかわかっているはずだ」紀美子は、何も言っていないのに状況を察していた小林に驚いた。彼女はうなずいて言った。「わかりました、小林さん。ありがとうございます」「気にするな。大事なのは子どもだ。まずはしっかり対処しろ」「はい」そう答えた後、紀美子は晋太郎に視線を向けた。「悪いけど、あなたの部下に頼んで、あなたの家まで行ってゆみのリュックを取ってきてもらえない?」晋太郎は無言で頷き、彼女の手当を終えると部下に電話をかけた。一時間もしないうちに、ボディーガードがゆみのリュックを届けてくれた。紀美子がお札を取り出した瞬間、ゆみの表情がみるみるうちに強張り、目は大きく見開らかれた。「貼らないで!貼らないで!!私は……私は、私の子を迎えに来ただけ!貼らないで!!」それを聞いて、紀美子は一瞬どうすればいいかわからなくなった。佑樹は言った。「ママ、ゆみに憑いているこの魂は、子供が学校の入り口で交通事故にあって亡くなったんだ。そしてこの魂の主も、自分の子供が死んでから間もなく、車にぶつかって子供と同じ現場で死んだんだ」それを聞いて、紀美子は息をのんだ。自分も母親だからわかる。もし子供に何かあったら、きっと毎日がつらくなるだろう。紀美子は少し考え、「ゆみ」に向かって静かに語りかけた。「私も母親よ。あなたの苦しみを完全に理解することはできないけれど、私にも、あなたと同じように子どもを愛する気持ちがある。私はあなたに何もしてあげられないかもしれない。でも、私の娘を信じてほしい。きっと、あなたが会いたい人に会わせるために、できる限りのことをするわ。あなたが納得できる答えを見つけ出す

  • 会社を辞めてから始まる社長との恋   第1182話 息子を返せ

    晴は特に考えもせずに、事故の日付を晋太郎に伝えた。日付をしばらく考えた後、晋太郎はまた尋ねた。「その時、紀美子は……」まだ言い終わらないうちに、晋太郎の携帯が鳴った。画面を見て、彼は通話ボタンを押した。「何だ?」「お嬢様が憑りつかれたようです!」それを聞いて、晋太郎は眉をひそめた。「どういうことだ!?」彼はすぐにソファから立ち上がり、オフィスのドアに向かって急いだ。晴は呆然としたが、すぐに立ち上がり後を追った。エレベーターの前まで来ると、晋太郎は電話を切った。晴は尋ねた。「どうしたんだ?」「ゆみが、学校に着いたばかりなのに何かあったみたいだ。見に行かないと」「ゆみ?」晴は驚いて言った。「まさか、まだ小林さんの元に戻してなかったのか?!」二人はエレベーターに乗りこんだ。晋太郎は眉をひそめて彼を見た。「どうして君までそんなことを言うんだ?」晴は焦った声で言った。「自分のために娘をそばに置きたいからって、彼女を傷つけちゃいけないよ!ゆみのことは誰もが知ってる。あの時お前も一緒に、一流の心理医を呼んで彼女を診てもらったじゃないか……」晴は、当時晋太郎が自分に話してきたことを伝えた。晋太郎の顔は険しくなった。「それで、お前は他に何を知ってる?」「お前がゆみを小林さんのところに連れて行って、彼女に小林さんから技を学ばせることを認めたことまでしか知らない」晋太郎は唇を噛みしめた。自分はそんなことをしたのか?30分後、二人は保健室に到着した。ドアを開けて入ると、佑樹の赤い目が晋太郎に向けられた。念江も失望した表情で彼を見つめた。晋太郎と晴は、二人の視線を受け流しながら、ベッドに目を向けた。そこには、時折「クスクス」と笑い声を漏らすゆみの姿があった。彼女の両手はベッドの柵に包帯で縛られており、表情はどこかぼんやりとしていた。ドアの音を聞いて、彼女は首を傾けてそちらを見た。次の瞬間、彼女の表情は異様な狂気に染まった。「息子を返せ!あなたたち男は悪魔だ!!息子を返せ!!」それはまるで中年女性のような甲高い叫び声だった。晋太郎の心臓は一瞬、強く締め付けられた。彼は大股でベッドへと歩み寄り、二人の子供に尋ねた。「これは一体、どうい

  • 会社を辞めてから始まる社長との恋   第1181話 紀美子だけが欲しい

    「犬が人に噛み付くのを事前に止められると思うか?」晋太郎は嘲笑するように言った。「俺の目には、お前なんてただの虫けらだ。手を出したければやってみろ。俺が死ぬのが先か、それとも俺がお前を踏みつけて二度と這い上がれなくするのが先か、試してみればいい」「森川社長は、あのヘリが爆破された時の絶望をもう忘れたのか?」その言葉に、晋太郎の黒い瞳が一瞬揺らいだ。頭の中に、ヘリコプターに乗っていたあの瞬間が鮮やかに蘇った。機内で起こったすべて、そして最後にパラシュートを背負い、急いで飛び降りたあの瞬間まで。その記憶が、まるで昨日のことのように鮮明に脳内に映し出された。悟は、彼の苦しげな表情を見てさらに続けた。「思い出したか?それでもお前は、俺が手を出せないと思うのか?お前が帝都でどれほどの勢力が大きようが、俺はお前の命を奪うことができる」晋太郎は頭痛に堪えながら、血走った目で悟を睨みつけた。「俺に過去を思い出させたからって、お前を恐れると思うな!」「いや」悟の端整な顔には、依然として薄ら笑みが浮かんでいた。しかし、その笑みの奥には、冷たい殺気が滲んでいた。「ただ、俺の力がお前より上だと教えてあげたかっただけだ。もし俺の条件を受け入れるなら、これ以上お前を追い詰めることはしない」「お前にそんなこと言う資格なんてない」晋太郎は歯を食いしばり、痛みを堪えながら吐き捨てた。悟は彼の言葉を無視して続けた。「この条件なら、お前も受け入れざるを得ないと思うよ」悟は晋太郎に向かって二歩近づいた。その浅い茶色の瞳には並々ならぬ決意が浮かんでいた。「お前は彼女のことを思い出せない。彼女にも、何も与えられないんだろう?だったら、俺に譲ってくれ。彼女を手放してくれさえすれば、俺は必ず彼女を連れてお前の前から消える。これだけが俺の願いだ」晋太郎は眉をひそめて目の前の男を見つめた。「誰のことを言ってるんだ?」「紀美子だ」悟は言った。「他には何もいらない。ただ紀美子だけが欲しい」紀美子を譲れと?その代わり、自分の安全と、元々自分のものだった全てを返してくれるだと?彼は自分を、女に頼って命を守ろうとする腰抜けだと思っているのか!?晋太郎は彼をしばらく見つめてから尋ねた。「そんなに紀美子が

  • 会社を辞めてから始まる社長との恋   第1180話 信頼してくれていた存在

    肇は慎重に晋太郎の様子をうかがった。そして低くため息をつきながら言った。「晋様が私のことを覚えていないのがわかった瞬間、彼が記憶を失っていることに気づきました」美月は話題を変えた。「これから私は彼と一緒にMKにいるつもりなので、アシスタントとして何をすべきか、私に教えてください」肇はしばらく彼女を見つめた。美月は笑いながら尋ねた。「何か問題でも?」「いえ」肇は視線を外した。「あなたが晋様のそばにいるなら、きっと何でもできるでしょう」「私はまだあなたたちの会社の業務に触れたことがないのに、どうしてできると言い切れるの?」「あ……」二人の言葉が終わらないうちに、晋太郎の低い声が彼らの耳に入った。「話は終わったか?」肇はすぐにソファから立ち上がり、頭を下げて言った。「申し訳ありません、晋様」美月は扇子を煽りながら言った。「もう終わりましたよ。さあ、用件をどうぞ」晋太郎は肇を見つめて言った。「お前はずっと悟に付き従っているようだな」「そうです」肇の表情は次第に引き締まった。「私は、何か証拠を手に入れようと、彼のそばに潜入しています」「どうやってその話を信じろというんだ?」晋太郎は問い返した。それを聞いて、肇の胸は一瞬締め付けられた。昔は、晋様が最も信頼してくれていた存在だったのに。今となっては、晋様に疑われることになるなんて。しばらく考えた後、肇は納得した。晋様はもともと疑い深い人だ。今は記憶を失っている状態なんだから、自分を信じないのも当然だ。肇は晋太郎に向かって言った。「晋様、悟のそばにいる間に、彼がA国の子会社の機密を盗んだ証拠を手に入れました。ただ、今その証拠は私の手元にありません。もし私と二人で行くのが不安なら、この女性と一緒に行ってきます」「いいわ」美月は即座に立ち上がって言った。晋太郎は彼女を一瞥して言った。「随分と勝手に発言するようになったな」美月はいたずらっぽい笑みを浮かべた。「じゃあ、自分で行けばいいじゃない」「俺は仕事があるんだ。使い走りはお前の仕事だ」「行きたくないなら、そう言えばいいのに。言い訳しなくてもいいですよ」美月の声は大きくはないが、しっかりと晋太郎の耳に届いた。晋太郎は

  • 会社を辞めてから始まる社長との恋   第1179話 会長

    「情報を深掘りできるかどうかはともかく、まずはこのことを記事にして発表します!」「私も行く!あんな美しい女性が帝都にいて、しかも戻ってきたばかりの森川社長のそばにいるなんて。きっと大きな話題になるわ!」記者たちは我先にと会社の入り口を後にした。エレベーターに乗り、オフィスの階に到着した。ドアが開いた瞬間、目の前の光景を見た晋太郎の胸には、なぜか懐かしさがよぎった。彼は皆の驚いた表情を横目に、誰の案内も必要とせず、体が覚えているままに以前のオフィスを見つけた。その時、アシスタントオフィス。肇は資料を抱えてドアを開けて出てきた。顔を上げ、ちょうど目の前にいる人物を見た。その顔を見た瞬間、肇は目を大きく見開いた。「晋……晋様……」肇は鼻の奥がツンと痛み、唇を震わせながら呼びかけた。その声を聞くと、晋太郎は足を止め、彼の方を見た。肇の目にたまっていた涙がこぼれ落ちた。「晋様……」肇は声を詰まらせながら言った。「やっと、あなたが戻ってきてくれました……」晋太郎は不思議そうに彼を見つめた。「お前は……俺に、呼びかけてるのか?」肇は呆然とした。彼は晋太郎をじっと見つめ、その目がまったくの他人のように見えることに気づいた。彼の胸は強く締めつけらた。「晋様、あなたは……」「杉本肇さんですよね?」美月が前に出て説明した。「彼のことは後で話しましょう。彼はどのオフィスに行けばいいのでしょうか?会長のオフィスです」「上、上の階です」肇はぼそっと呟いた。なるほど、吉田会長が急に去ったのは、晋様が戻ってきたからだったのか。見たところによると、晋様は記憶を失っているようだ。それでも……帰ってきた。それが何よりだ。美月は笑いながら言った。「肇さん、案内していただけますか?」美月の美しさに圧倒されながらも、肇は慌ててうなずいた。「は、はい……」彼の反応を見て、美月は思わず唇を緩めて微笑んだ。可愛い。三人は上の階に向かおうとした。しかし、エレベーターのドアが開いた瞬間、悟が彼らの前に現れた。晋太郎を見た悟の目は一瞬鋭くなった。晋太郎も同時に目を細め、黒い瞳に一抹の陰気が浮かんだ。しかし悟はすぐに元の表情に戻り、笑みを浮かべた。彼は手

  • 会社を辞めてから始まる社長との恋   第1178話 偶然

    佳世子は少し理解できない様子で尋ねた。「吉田社長、あなたは紀美子さんのこと、好きなんですよね?私と美月があなたを利用して彼を刺激しようとしているとしても、この機会に紀美子と仲を深めたいと思わないんですか?」「俺は紀美子に好意を持っているが、恋愛感情のためではない」龍介は率直に言った。「彼女に近づいたのも、娘のためだ」佳世子は少し考えてから言った。「紀美子があなたの奥さんにふさわしいと思って、こういうことをしたってこと?」「そうだ」龍介は坦然と言った。「紀美子は良い女性だ。俺たちは夫婦にはなれなくても、友達にはなれる。友達のために、手伝えることは喜んでする」佳世子は感動した。「吉田社長、あなたは本当に、私が今まで出会った中で最高の男性だわ」「そんなことはない」龍介は笑いながら言った。「今後俺が必要なら、前もって教えてくれればいい」「約束ですよ」「うん、約束だ」……帰り道、美月は険しい表情の晋太郎を見つめて言った。「どうしたのですか?」晋太郎は怒った目で美月を見つめた。「わざとやったんだろう?」「わざとって?」美月はわざと理解できないふりをした。「何のこと?」晋太郎は彼女をじっと見つめ、彼女が本当に困惑しているのを確認すると、やっと視線を外した。彼は今夜の出会いがあまりにも不自然だと感じていたのだ。しかし、どこがおかしいのか、上手く説明できなかった。何しろ、都江宴は誰でも入れるような場所ではない。美月が評判の良いあのレストランを選んでMKの株主と会うのは、理にかなっている。今夜は本当にただの偶然だったのか?そう考えながらも、晋太郎の脳裏にはまた紀美子の顔が浮かんだ。あの顔が、最近やけに頭の中に浮かぶ。どうしても忘れられない。しかし、彼女との間のことは、まだ何も思い出せなかった。しばらく沈黙した後、晋太郎は車窓の外を見ながら言った。「俺が以前住んでいた場所を調べてくれ」「はい」「それと、これからはほとんどの時間をMKで過ごす」晋太郎はまた言った。「はい」美月は少しうんざりしたように言った。「私を秘書にしたいなら、はっきり言えばいいのに」晋太郎は冷たく笑った。「二倍の給料でも不満なのか?」美月は髪

  • 会社を辞めてから始まる社長との恋   第1177話 そんな趣味はない

    晋太郎は言った。「その顔は何だ?」「私?」紀美子は疑わしげに口を開いた。「今は私に聞くときじゃないでしょ。あなたがどうして女性用トイレにいるの?」彼は間違えて入ったんだろう、と紀美子は心の中で思った。晋太郎の視線は何度も紀美子の体をちらちらと見ていた。彼女の様子を見に行こうかどうか迷っていると、紀美子の携帯が鳴った。彼女は携帯を取り出し、龍介からの着信だとわかると、すぐに電話に出た。「龍介さん?」「大丈夫、ちょっと吐いただけ。今出るから」「わかった」そう言うと、紀美子は電話を切った。彼女は晋太郎の前に歩み寄り、怪訝そうに彼を一瞥した。「あなた、本当に女性用トイレを使うつもり?私は先に出るけど、変態扱いされないように気をつけてね」紀美子の言葉に、晋太郎の顔は真っ赤になった。「俺にそんな趣味はない!」紀美子の手がドアノブに触れた瞬間、晋太郎の言葉を聞いて彼女はまた首を傾げた。「じゃあ、ここで何してるの?」龍介がここにいることを知らない晋太郎は、どう説明すればいいかわからなかった。「君を探しに来た」とでも言えばいいのか?絶対無理だ。今の自分たちには何の関係もないし、自分に口を出す資格などない。そう考えると、晋太郎の心には後悔の念が込み上げてきた。一体何をしに来たんだ、俺は?彼が黙っているのを見て、紀美子は呆れてドアを開けた。外には龍介が待っていて、すぐに中の晋太郎の姿を目にした。彼は軽く眉をひそめた。「龍介さん、戻りましょう」龍介はふっと笑い、あえて紀美子に尋ねた。「森川社長はどうしたんだ?」紀美子が説明しようとしたが、晋太郎がなぜここにいるのか気づいた。女性用トイレと大きく書かれた看板を、彼が見逃すはずがない。彼は私たちがトイレで何かをしていると思い、その現場を押さえに来たんだろう!彼の中で、自分はそんな軽薄な人間なのか?紀美子はイライラし始め、思わず皮肉を口にした。「記憶を失うと変態になって女子トイレに入るようになるのね。龍介さん、気にしないで。個室に戻りましょう」記憶喪失と変態に何の関係がある?晋太郎は憤然としたまま紀美子の後ろ姿を見つめた。反論しようとしたその瞬間、一人の女性がトイレの入り口に現れた。中の男

Explore and read good novels for free
Free access to a vast number of good novels on GoodNovel app. Download the books you like and read anywhere & anytime.
Read books for free on the app
SCAN CODE TO READ ON APP
DMCA.com Protection Status