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第207話 行けなくなった

 弁護士はすぐに来て、契約書を書き終わり2人が署名した後、渡辺野碩は快く2億の小切手を大河光輝に渡した。

光輝はまさかこの2億がこんなにも簡単に手に入るとは思わなかった。

彼は渡辺野碩の前で携帯の中の録音を削除し、USBメモリーも渡辺野碩に渡した。

その後小切手をポケットにしまい感動しながら別荘を出た。

光輝が帰ってすぐ、野碩の顔色が一瞬で陰湿になった。

あんな下々の者が2億円をもらっていくなど許されない。

野碩は隣のボディーガードに冷たい声で命令した。「奴を消せ。きれいに片付けろ!」

ボディーガードが頷き、「はい!」と返事した。

午後。

幼稚園の下校時間になった。

入江紀美子は入り口で子供達を迎えに来た。

突然、耳元に尖り切ったブレーキをかける音がした。

音を辿って眺めると、1台のロング型のメルセデス・マイバッハが彼女の後ろに止まった。

そしてすぐ、杉本肇が運転席から降りてきて、礼儀正しく後ろの席のドアを開けた。

森川晋太郎は黒いスーツを纏い、パワフルなオーラを発しながら車から降りてきた。

目元のくまが近日の疲弊を表わしていたが、それでも彼の俊美な五官を遮りきれなかった。

紀美子は彼の前の少し離れた所に立っていたが、彼はまるで相手が見えなかったのように、紀美子の傍を素通りした。

紀美子は疑惑の目で彼を見て、これは仕事が終わって子供達の世話をしにきたわけ?

余計なことを考えずに、紀美子は視線を戻しそこに立って子供達が出てくるのを待った。

暫くして、先生が子供達を連れて学校から出てきた。

森川念江は一目で紀美子が見えて、入江佑樹と入江ゆみと一緒に彼女のところに行こうとした途端に、晋太郎の冷たい顔が目に映ってきた。

念江は一瞬止まり、何でお父さんが来た?

何でお母さんと距離を置いてるの?

念江は心の中で悪い予感がして、どちらに行くべきかを躊躇った。

となりのゆみはいきなり叫び出した。「お母さんが来た!」

佑樹は念江の腕を掴んで、「行くよ、家に帰ろう」

そう言った途端に、肇が歩いてきた。

彼は念江の前で止まり、「坊ちゃま、私たちと一緒に帰りましょう」と言った。

念江は唇をすぼめ、眼差しが幾分と暗くなった。

彼は頭を下げ、「彼達と藤河別荘に行っちゃダメなの?」と聞いた。

肇はとなりにいた呆然とした顔の佑樹とゆみを眺
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