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第208話 何があった?

 息子があんな顔をしているのを見て、入江紀美子は心が痛んだ。

この男は一体何を考えてるのだろう。

自分が機嫌悪いから子供に発散する?!

紀美子は森川晋太郎を見て、「子供の要望を聞いてあげられないの?なぜいつもそんなに独断的なの?!」と問い詰めた。

晋太郎は冷たい目線で紀美子を睨んだ。

彼女とその2人の子供を見て、晋太郎は思わず彼女が他の男とベッドで交歓するシーンを思い浮かべた!

心の中の怒りが一瞬で湧き上がってきた。

彼はしゃがんで念江を抱き上げ、振り向いて車の方に歩き出した。

紀美子は眉を寄せ、「晋太郎!」と呼び止めようとした。

男は暫く止まり、そして再び歩き始めた。

紀美子は2人の子供を連れて晋太郎に追いつき、「念江くんが落ち込んでるのが見えないの?!」

晋太郎は全く構ってやろうとせず、念江を連れて車に乗り込んだ。

そしてドアを「ドン」と閉めた。

紀美子は呆然としていて、このシーンを目にした杉本肇は無力にため息をついた。

なぜこうなったのだろう……

折角仲直りできそうになったのに……

紀美子は心の痛みを堪えながら、息子が晋太郎に連れて行かれたのを見送った。

彼女は無理に止めることができなかった。晋太郎を怒らせたら、今後は念江に会えなくなってしまう。

「お母さん……」

入江ゆみは心配そうに母を見上げ、「お母さん、泣かないで」と慰めた。

紀美子の飛んでいた思いが娘に引き戻され、呆然と手を上げて子供の頬を撫でた。

いつ泣き出したのか、彼女は自覚も無かった。

紀美子は胸の痛みを押さえながら、こぼれた涙を拭きとり、しゃがんで娘に言った。「お母さんは大丈夫だよ、ただ念江くんを惜しんでるだけなの」

ゆみは小さな手で紀美子の顔を触りながら、「お母さん泣かないで、念江お兄ちゃんはきっと戻ってくるよ」と言った。

紀美子は頷き、無理やりに笑顔を見せ、「うん、きっと戻ってくるね」

となりの佑樹は重々しい眼差しで遠く離れていく車を見つめた。

このクズ男オヤジは、一体何を考えているんだ?!

念江は漸く少し笑えるようになったのに、きっと再び自閉的になってしまう!

このクズ男オヤジが嫌いだ!お母さんを泣かせるし!お母さんを悲しませるし!

将来たとえ彼が自分を受け入れようとも、絶対相手にしないから!

車の中にて。

念江は静かに頭を垂ら
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