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第190話 もう一度チャンスをください

 「朔也、子供達を連れてリビングで遊んできて」入江紀美子は言った。

露間朔也は頷こうとすると、横目に森川晋太郎の後ろに立っていた小さな姿を見た。

「そっちのちびちゃんは?」朔也は聞いた。

紀美子は朔也の視線を辿ってみたら、晋太郎の後ろに立っていた森川念江が見えた。

紀美子は唇をきつくすぼめていた子供に声をかけた。「念江君?」

念江は大人しく前に出て、「うん」と返事した。

紀美子は可憐に念江を抱き上げて、「一緒に中に行こう」と言った。

そう言って、彼女は晋太郎の方を見て、「うちは狭いけど、もしよかったら、あなたも入ってきて」と言った。

晋太郎は冷たい目線を戻して、何も言わずに別荘に入った。

晋太郎が朔也の前を通った時、その眼底の冷たく発していた敵意が朔也を思わず震わせた。

朔也は自信なさそうに唾を飲み、晋太郎の後に、入江ゆみを抱き佑樹の手を繋いで入っていった。

晋太郎はソファに腰を掛け、視線を回してから、「初江さんはいないのか?」と尋ねた。

紀美子は念江を置いてから、「初江さんは病院にいる」と答えた。

晋太郎は眉を寄せ、「病院?」と聞いた。

「うん」紀美子は胸の痛みを堪えながら説明した。「子供達が拉致された日、初江さんは誰かに襲われて意識不明の重体となったわ」

晋太郎は眉を寄せ、「なぜそのことを教えてくれなかった?」

「教えたら何ができるの?」紀美子は彼を見て、「初江さんの意識を回復させられるの?塚原先生でさえ何も出来なかったのに、あなたに教えて何ができる?」

晋太郎は視線を戻し、携帯を取り出して杉本肇にメッセージを送った。「初江さんのカルテを入手して、最速で東恒病院に移れ」

携帯を閉じてから、晋太郎は立ち上がり、「子供達を預けておく、明日迎えにくる」

紀美子の返事を待たずに、晋太郎はそのまま別荘を出た。

ドアが閉まった後、朔也は疑問の目で紀美子を見た。「一言聞くだけで帰った?どこに行った?」

紀美子は窓越しに発進した車を眺めて、「私もわからないわ」と呟いた。

翌日の朝。

紀美子は子供達を幼稚園に送った。

そして朔也と工場を回り、特に問題がないことを確認してから会社に向かった。

事務所に入ると、秘書の安藤が入ってきて、「社長」と声をかけてきた。

紀美子は上着を脱ぎながら聞いた「何?」

安藤は恐る恐ると報告した。「社長
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