共有

第143話

著者: リンフェイ
last update 最終更新日: 2024-12-20 13:48:13
結城理仁は心の中では内海唯花が内海家の兄弟たちに対処できないのではないかと心配していたが、何も言わず電話すら彼女にかけなかった。

結婚してからもうすぐ一か月になる。彼は内海唯花のことを結婚当初よりは少し理解していた。もし本当に彼女が対処できないというのなら、必ず彼に助けを求める電話をしてくるはずだ。そんな彼女が電話してこないということは、つまり彼女だけでも問題はないということなのだ。

しかも、彼女のほうが道理にかなっているわけだから、負けることはないだろう。

このような考えを巡らせ、結城理仁は夕方仕事が終わって、車を乗り換えた後、星城高校に向かった。

会社を出る時、九条悟は彼が最近仕事の接待や付き合いにもいかないし、九条悟にまかせっきりでプレッシャーばかり彼にのしかけてくると文句を言っていた。

結城理仁は直接九条悟にひとこと述べた。「俺には妻がいるんだ。仕事が終わったら家に帰って奥さんと一緒にいるべきだろう。お互いの心を通わせなくちゃな」

九条悟「......」

言い訳だ!

明らかにただの言い訳だ!

言い訳をして逃れようとしているだけだ!

九条悟は再び心の中で上司に悪態をついた。結婚してからというもの、だんだんと怠惰になっている。本当に結城理仁らしくないじゃないか。

結城理仁はそんな九条悟の悪態など知る由もなく、星城高校に到着し、内海唯花の店に多くの高校生たちがいるのが見えた。参考書を見ているものもいれば、文房具を選んでいる者もいた。

自分にはここでは異色のオーラがあるのを考慮し、結城理仁は直接店にはいるのはやめておいた。自分が入って、生徒たちが驚き店から出て行ってしまうと内海唯花の商売の邪魔になってしまうからだ。

内海唯花は彼が教頭先生よりも厳格なのに、教師にならないのはもったいないと言っていた。

しばらくして、生徒たちは塾へ行く時間になり、次々と店から出て行った。

結城理仁はようやく車から降りて、店の中へと入っていった。

内海唯花はその時、少しごちゃごちゃしたレジを片付けているところだった。そして結城理仁が入って来るのを見て、意外そうに大股で堂々と入って来る彼を見た。この男性は本当に並外れたオーラを持っている人だとまた感心した。

まるで王者のご光臨かのようだ。これでは生徒が店に彼がいるのを見て、入ろうとしないわけだ。彼は本当にオ
ロックされたチャプター
この本をアプリで読み続ける

関連チャプター

  • 交際0日婚のツンデレ御曹司に溺愛されています   第144話

    彼は少し止まって、また言った。「明日の朝は俺が君を店まで送るよ」彼がこんなにも気を使ってくれるので、唯花は電動バイクを店に残して、理仁の車に乗った。牧野明凛は夫婦二人が帰って行くのを目線で見送り、つぶやいた。「だんだん夫婦らしくなってきたわね」結城理仁は常に冷たくて寡黙だが、しかし彼の内海唯花への優しさは細かいところに見て取れた。「もし私も結城さんみたいな人と巡り合えたら、喜んで即結婚するわ」残念なことに、彼女のお見合い相手たちは結城理仁には遠く及ばない。あれらのいわゆるハイスペック男というのは、ただ収入が高いだけで、そのように呼ばれているだけなのだ。実際、ハイスペックという言葉からは、かけ離れている。この前のカフェ・ルナカルドでお見合いしたあの相手は、内海唯花のほうを気に入っていた。私的に仲介業者を通して内海唯花のことを尋ねていて、既婚者であることを知ったのに、まだくだらない夢を見ていた。牧野明凛は直接、あのお見合い相手に電話をかけ、ひどく怒鳴りつけた。もしも奴が私的に内海唯花にコンタクトを取り、彼女の結婚生活をめちゃくちゃにしたら、地位も名誉も傷つけると。内海唯花の目の前に現れなければ、牧野明凛は彼の命を助けたのと同じことだと思った。本気で内海唯花のところに行き告白でもしてみろ。彼女が相手を完膚なきまでに痛めつけるだろう。なんといっても空手を習っていたのだから。「途中に姉の家があるから、姉の家に行って様子を見てから帰りましょう」内海唯花は一日に一回は姉のところに行かないと、どうも慣れないのだ。結城理仁は、うんと一言返事した。少しして、夫婦二人は佐々木唯月の住むマンションに到着した。この時間帯はだいたい夜ごはんを終えた時間で、食後に子供を連れて外で散歩をするのが好きなマンションの住人が出てきていた。だから、この時刻はマンション周辺がとても賑やだった。結城理仁が車を停めた後、内海唯花が先に車を降り後部座席のドアを開け車から果物の入った袋を二つ取り出した。それは理仁がどうしても義姉に贈り物をしたいと言って買ったものだ。夫婦は佐々木唯月が住んでいる棟のほうへと歩いて行った。すぐに内海唯花はどこかおかしいことに気が付いた。彼女は姉の家に三年住んでいて、マンションの住人をよく知っていた。それが今日みんなが彼女を

    最終更新日 : 2024-12-20
  • 交際0日婚のツンデレ御曹司に溺愛されています   第145話

    姉妹二人はとても仲が良いとマンションの住人はよく知っていた。佐々木唯月が妹にその件を話さなかったのは、妹を心配させたくなかったからだ。「坂本さん、ありがとうございます」内海唯花は坂本おばあさんにお礼を言い、結城理仁を引っ張って、急ぎ足で姉の住むマンションへと入って行った。「昨日お姉ちゃんを送り届けたら、義兄さんがご飯を作っていなかったことで責めてきたの。その時、義兄さんの顔つきは、まさに誰がを殴りそうな感じだった。それが私に気づいた瞬間、また顔つきが変わったわ」内海唯花は結城理仁にぶつぶつ言った。「お姉ちゃん、どうして私に教えてくれなかったのよ」内海唯花は姉にとても心を痛めていた。女性が結婚するのはまるで転生するのと同じだ。彼女はひどい男のもとに転生してしまったのだ。三年の結婚生活で、義兄の姉に対する態度は180度変わってしまった。結城理仁は落ち着いた声で言った。「義姉さんも君に心配かけたくなかったんだよ。さっきあの坂本さんが言ってたじゃないか、義姉さんは包丁を持って、旦那さんを街中追いかけまわしたんだろ。つまり義姉さんは旦那さんに負けなかったわけだ。あまり心配しなくて、大丈夫さ」内海唯花が心配しないわけがない。でも、彼女は結城理仁には多くは話さず、彼を引っ張ってマンションの上の階へとあがって行った。そして姉が彼女に渡していた鍵を取り出して玄関のドアを開けた。佐々木唯月はこの時キッチンでご飯を作っていて、玄関のドアが開く音が聞こえると、佐々木俊介が戻ってきたのかと思いフライ返しを持って出てきた。もし佐々木俊介がまた暴力を振るおうものなら、もう容赦はしないと考えていた。佐々木俊介は実家に帰った後、一切彼女には連絡をよこしていなかった。しかし、彼女の義父母と義姉がひたすら彼女にメッセージを送り罵ってきた。彼ら佐々木家のLineグループでも彼女の悪口を言っていた。佐々木家の他の親戚たちに、彼女は妻としての役割を全くこなしていなかったから、夫に殴られる羽目になったのだと言って、佐々木家の他の親戚たちにも、彼女が悪いと言うように頼んだ。彼女が殴られたのは全て彼女が悪いのだ、佐々木俊介は何も間違っていない。彼女の当然の報いなんだと口から出る言葉はすべて彼女への悪口ばかりだった。ある親戚は年上の虎の威を借りて、彼女に対し

    最終更新日 : 2024-12-20
  • 交際0日婚のツンデレ御曹司に溺愛されています   第146話

    昔は姉が妹を守っていた。今その妹は大人になり力をつけ、今度は彼女が姉を守る番なのだ。「唯花」佐々木唯月は妹を引き留め、言った。「必要ないわ。お姉ちゃんも軽い怪我しただけだから。彼にも何もメリットはなかった。私が包丁持って街中を追いかけまわしたから、あの人ビビッて今後は家庭内暴力なんてする勇気はないでしょう」「お姉ちゃん、家庭内暴力は繰り返し起こるわ。あいつが手を出してきたのに、カタをつけておかないと、ちょろいと思われてまた手を出してくるはずよ」家庭内暴力など決して許してはいけない!「お姉ちゃんも分かってるから。だから絶対にあの人に負けないで殴り返してやったの。そして包丁持って街中追いかけまわしたのよ。あなたは知らないでしょうけど、彼は私の行動にすごく驚いてて、両足をガタガタ震わせてたわ。夫婦が初めて喧嘩する時は必ず勝たないといけないって言うでしょう。私のほうが勝ちよ。今後彼が私に手を上げようとするなら、彼自身どうなるかよく考えないとね」佐々木唯月は妹が佐々木俊介のところに行かないように力強く引き留めた。「彼も実家に帰っちゃったわ。あの人のところに行くってことはあの佐々木家全員を相手にしないといけないから、逆にやられちゃうかもしれない。行かないで、お姉ちゃんはもう彼に遠慮したりしない。今後彼が手を出そうが怒鳴りつけてこようが、私も相手になってやるんだから」「お姉ちゃん、どうしてすぐ私に教えてくれなかったのよ」内海唯花はとても胸が苦しくなり姉のまだ青あざが残っている顔をそっと触り、自分がその傷を受けたかのように辛そうに尋ねた。「お姉ちゃん、まだ痛む?佐々木俊介の奴!こんな力強く殴るなんて!長年培ってきた情もあるし、陽ちゃんも生んであげたってのに、お姉ちゃんにこんなひどい事するなんて」佐々木唯月は苦笑した。「私は今こんなふうになっちゃったもの。彼はもうずいぶん前から私を嫌っていたわ。結城さんも一緒に来たの?」「来てるよ。リビングで陽ちゃんと遊んでくれてる」佐々木唯月は声を抑えて、妹に念を押した。「唯花、あなたもお姉ちゃんの結婚が今ではこんなに面倒なことになったのを見たでしょ。寿退職をしてあの人の私を一生面倒見るっていう戯言を信じ込んじゃったせいね。あなたは絶対に経済的に独立していたほうがいいわ。女の人はどんな時だろうと、自分

    最終更新日 : 2024-12-20
  • 交際0日婚のツンデレ御曹司に溺愛されています   第147話

    姉妹はお互いに支えあって長年生きてきたから、唯月は妹のことを熟知していた。妹が彼女に代わって鬱憤を晴らしてくれようと思っているのを知っていて、わざと妹を長く家にいさせていた。お酒を持ってきて、妹と一緒にそれを夜遅くまで飲み続け、深夜になって夫婦はようやく帰って行った。内海唯花はお酒が飲めるほうでも飲めないほうでもなく普通だ。姉が持って来たお酒は度数が高いものだったから、一杯飲んだ後、彼女は少し酔ってしまい、姉の家を離れる頃には頭がクラクラしていて歩くのもふらついていた。佐々木唯月はこの新婚夫婦を玄関のところで見送った。彼女は昔働いていた頃、よく上司に付き合って接待に行き、お酒に強くなっていたので、一杯の度数が高いお酒を飲んだくらいではどうということはなかった。「結城さん、唯花は酔ってるから、よろしくお願いします」佐々木唯月は妹の夫にしっかりとお願いをしておいた。妹をここまで酔わせておけば、内海唯花が佐々木俊介のところに殴り込みにいくこともできないだろう。唯月は妹が佐々木家に行って、彼らが束になって妹をいじめるのが怖かったのだ。あのクズ一家は、彼女たちの実家の親戚たちと張り合えるくらい最低な奴らだ。「義姉さん、ちゃんと唯花さんの面倒を見ますから安心してください」結城理仁は軽々と内海唯花の体を支えながら下へとおりていった。唯花が何度も転んでしまいそうになったので、理仁は彼女をお姫様抱っこするしかなかった。「君はそんなに酒に強くないのに、それでも飲むんだから。義姉さんが酒を持ってきた理由はこんなふうに君を酔わせるためだろう。それなのに、バカみたいに飲んじゃって」内海唯花は両手を結城理仁のクビに回し、おくびを出した。その酒の匂いが鼻に刺さり、結城理仁は顔を横に背けて彼女に言った。「俺のほうをむいてその息を吐き出すなよ。酒の匂いで鼻がもげてしまいそうだ」「もっと嗅がせてやるわ!」内海唯花はわざと彼の顔に近づいた。「お姉ちゃんの意図が分かっていながら、私を止めなかったわね」結城理仁は彼女がこのように近寄るのに慣れていないので、危うく彼女を地面に落としてしまいそうだった。「おまえな!」彼は怒って低く張った声で言った。「頭は冴えてるって分かってるぞ。俺の隙を狙ってふざけるのも大概にしろよ!」内海唯花はふんと鼻を

    最終更新日 : 2024-12-20
  • 交際0日婚のツンデレ御曹司に溺愛されています   第148話

    内海唯花は彼に起こされ体を起き上がらせた。まるで子供のように手で目をこすった後、彼を瞬きせずに、じっと見つめていた。突然、彼女は彼の方に手を伸ばし、瞳を輝かせてはっきりした声で言った。「お兄さん、抱っこして私を降ろして」結城理仁はイライラしながら手を伸ばし、彼女をポンと叩いて冷たい声で言った。「忠告しただろう。酔ったのをいいことに俺をからかうんじゃないって。君はほろ酔い状態だろ、頭がはっきりしていないわけじゃないはずだ。君が今自分で言ってることと、やってることは、心の中でははっきり分かってるはずだぞ」そうだ、内海唯花ははっきりと分かっている。しかし、酒が入っているので、彼女はその勢いに任せているのだ。結城理仁が彼女にふざけるなと警告すればするほど、彼女はつい彼をいじりたくなる。大の大人の男が、一人の女性にマウントを取られないか恐れるって?誰かに知られたら、笑われるだろう。結城理仁「......」内海唯花は、ひひひと笑って彼に尋ねた。「あなたもしかして結城御曹司とおんなじで、実は秘密があるとか?」彼は男女関係においては、彼女よりも純粋なのだ。内海唯花は酒の力を借りて、思わず彼をからかってしまいたくなった。「どんな秘密があるって?」「アレがダメなのか、それか女性よりも男性のほうが好きなのか」結城理仁の表情は暗くなっていった。「おばあさんはいつも私たちをくっつけようとしてるでしょう。私はずっと30歳になる男性に彼女がいないなんて、きっとブサイクなんだって思ってたの。あなたに会った後、誤解してたって気づいたわ。あなたはブサイクなんかじゃなくて絶世のイケメンなんだって。それから、また考えたの。あなたってもしかしてちょっと問題があるんじゃないかって......」内海唯花はケラケラ笑って、両手も忙しく結城理仁の顔に伸ばし自由気ままに彼の端正な顔を触った。「結城さん、あなたDVなんかしないよね?言っておくけど、私は空手を習ってたの。私にそんなことしてみなさい、完膚なきまでにあなたを叩きのめしてやるんだから。あらまあ、こんなにカッコイイんだもん。本当にちょっとキスしたいわ。なんならちょっとお姉さんにキスしてみてよ。ねえ、ねえ、記念にちょっとだけキスを......」内海唯花はやりたい放題、彼をからかい調子に乗ってい

    最終更新日 : 2024-12-20
  • 交際0日婚のツンデレ御曹司に溺愛されています   第149話

    結城理仁は別に怒ってはいなかった。ただ内海唯花に自分が笑っているところを見られたくなかっただけなのだ。彼はマンションに入ると、妻が後に続いて来ていないことに気付き、足を止めた。後ろを振り向き大きな声で彼女に尋ねた。「もしかして、今夜はずっとそこに突っ立って過ごすんじゃないだろうな?」内海唯花はハッとして、嬉しそうに彼のほうに走ってきた。「結城さん、怒ってないの?」結城理仁は冷ややかに彼女を一目見た。彼の目つきはいつも通り氷のように冷たかったが、手を伸ばして彼女のおでこをツンと突いて言った。「次はないぞ!」内海唯花はまるで間違いを犯した小学生のように、手を挙げて誓った。「次は絶対にしないと誓います!」結城理仁は何も言わず体を前に向けて歩いて行った。内海唯花は急いで彼に続いた。彼の逞しいその後ろ姿を見つめながら、内海唯花の酔いはだんだん覚めてきた。そして心の中で不満をつぶやいていた。おばあさんは彼女に彼を押し倒せと言ったが、彼のこの氷のように冷たい様子では、彼女は本当に彼を襲えるような自信はなかった。しかし、彼をからかって遊ぶのは本当に面白い。彼女もたった一杯のお酒でこのように彼をからかえるのだ。普段なら彼の顔に触れるのが限度だ。ただ顔を触っただけでも、痴漢を警戒するかのように彼女に警戒心を持っている。まるで彼の顔に触れたのではなく、彼のズボンを脱がせたかのようだ。家に帰り、結城理仁はそのままキッチンへと入って行った。内海唯花は彼が一体何をするのか分からず、一声尋ねたが、彼女に返事をしなかった。だからわざわざ返事をもらえず恥をかくような真似をしないようにベランダへ行き、ハンモックチェアに腰掛けた。体を椅子にもたれかけ、つま先で地面を蹴って椅子を軽く揺らした。その時考えていたのは姉の結婚についてだった。彼女と結城理仁はスピード結婚で、結婚する前はお互いに相手のことを知らなかった。スピード結婚をした後は、二人とも相手を尊重し合っている。たぶん、まだお互いによく相手を知らず、どちらも自分の欠点を見せていないからだろう。否定できないのは、彼女は姉よりも幸せな結婚生活を送っているということだ。少なくとも、結城理仁が彼女に対してどのような態度を取ろうとも、彼女が悲しむことはないのだ。だって愛していないんだから!しかし、

    最終更新日 : 2024-12-20
  • 交際0日婚のツンデレ御曹司に溺愛されています   第150話

    数分経ってから、内海唯花はつぶやいた。「私があなたの部屋に入りたいとでも思ってるの?いつか、懇願されても絶対に入ってやらないんだから」自分も部屋に入ると鍵をかけることを思い出し、内海唯花はつぶやくのを止めた。つまるところ、これはスピード結婚の後遺症のようなものだ。結城理仁自ら作ってくれたあさりの味噌汁を飲み終えて、内海唯花は部屋に戻って休んだ。この夜はもう二人に会話はなかった。次の日、内海唯花が目を覚ますと、太陽はすでに昇っていた。彼女がベットサイドテーブルにある携帯を見ると、すでに七時過ぎだった。早起きに慣れている彼女はこの時間に起きることはあまりない。彼女は普段明け方六時くらいに起きているのだ。昨晩お酒を飲んだせいだ。幸いなことに、起きても二日酔いにはなっていなかった。しかし、お腹がとても空いていた。昨夜は姉に心を痛め、姉の家で夕食を食べる時に彼女はあまり食べていなかったので今お腹ぺこぺこだったのだ。素早く服を着替え、洗面を終えると部屋を出た。キッチンに行って朝食を用意しようと思っていた時、食卓の上にすでに並べられた朝食が目に入ってきた。それは彼女の好きなイングリッシュ・ブレックファーストで、美味しそうな食べ物が食卓に並んでいた。結城理仁はスクランブルエッグを二皿持ってキッチンから出てきた。内海唯花が起きて来たのを見て、淡々と言った。「俺が起きた時、君はまだ起きてなかったから、外でいろいろ買って来たんだ。それからスクランブルエッグは今作った」「全部あなたが作ったのかと思ったわ」危うく彼の料理の腕が高級レストランのシェフみたいだと褒めるところだった。外で買って来たものだったのか。内海唯花はお腹が空いていたので、夫に遠慮せず食卓に座り箸を持ってまずはソーセージを挟んで食べた。「これとっても美味しいわね。コンビニで買ったんじゃないでしょ?」イングリッシュ・ブレックファーストを作るなら、確かにコンビニでもその材料は揃っているが、そこまで美味しくはないだろう。やはりホテルで食べる朝食には負ける。「車でスカイロイヤルホテルまで行って買ってきたんだ。あそこの朝食はいろいろあるし、味もとても良いって有名だしな。食べないなら食べないで済むけど、食べるならやっぱり一番美味しいものを食べないとと思って」実際は、彼

    最終更新日 : 2024-12-20
  • 交際0日婚のツンデレ御曹司に溺愛されています   第1話  

    十月の東京は残暑でまだ汗ばむほど暑く、朝夕だけ秋の気配があり涼しさを感じられた。 内海唯花は朝早く起きると姉家族三人に朝食を作り、戸籍謄本を持ってこっそりと家を出た。 「今日から俺たちは生活費にしろ、家や車のローンにしろ、全部半々で負担することにしよう。出費の全部だからな!お前の妹は俺たちの家に住んでるんだから、彼女にも半分出させろよ。一ヵ月四万なんて雀の涙程度の金じゃ、タダで住んで飲み食いしてるのと同じじゃないか」 これは昨夜姉と義兄が喧嘩している時に、内海唯花が聞こえた義兄の放った言葉だった。 彼女は、姉の家から出ていかなければならなかった。 しかし、姉を安心させるためには結婚するのがただ一つの方法だった。 短期間で結婚しようとしても、男友達すらいない彼女は結城おばあさんの申し出に応えることにした。彼女がなんとなく助けたおばあさんが、なかなか結婚できない自分の孫の結城理仁と結婚してほしいと言ってきたのだった。 二十分後、内海唯花は役所の前で車を降りた。 「内海唯花さん」 車から降りるとすぐ、内海唯花は聞きなれた声が自分を呼ぶのが聞こえた。結城おばあさんだ。 「結城おばあさん」 内海唯花は速足で近づいていき、結城おばあさんのすぐ横に立っている背の高い冷たい雰囲気の男の姿が目に入った。おそらく彼が結婚相手である結城理仁なのだろう。 もっと近づき、内海唯花が結城理仁をよく見てみると、思わず驚いてしまった。 結城おばあさんが言うには孫の結城理仁は、もう三十歳なのに、彼女すら作らないから心配しているらしかった。 だから内海唯花は彼がとても不細工な人なのだと勝手に思い込んでいたのだ。 しかも、聞いたところによると、彼はある大企業の幹部役員で、高給取りらしいのだ。 この時初めて彼に会って、自分が誤解していたことに気づいた。 結城理仁は少し冷たい印象を人に与えたが、とてもハンサムだった。結城おばあさんのそばに立ち、浮かない顔をしていたが、それがかえってクールに見えて、人を近づけない雰囲気を醸し出していた。 目線を少しずらしてみると、近くに駐車してある黒い車はホンダの車で、決して何百万もするような高級車ではなかった。それが内海唯花に結城理仁との距離を近づけされてくれた。 彼女は同級生の友人と一緒に公立星城

    最終更新日 : 2024-09-04

最新チャプター

  • 交際0日婚のツンデレ御曹司に溺愛されています   第150話

    数分経ってから、内海唯花はつぶやいた。「私があなたの部屋に入りたいとでも思ってるの?いつか、懇願されても絶対に入ってやらないんだから」自分も部屋に入ると鍵をかけることを思い出し、内海唯花はつぶやくのを止めた。つまるところ、これはスピード結婚の後遺症のようなものだ。結城理仁自ら作ってくれたあさりの味噌汁を飲み終えて、内海唯花は部屋に戻って休んだ。この夜はもう二人に会話はなかった。次の日、内海唯花が目を覚ますと、太陽はすでに昇っていた。彼女がベットサイドテーブルにある携帯を見ると、すでに七時過ぎだった。早起きに慣れている彼女はこの時間に起きることはあまりない。彼女は普段明け方六時くらいに起きているのだ。昨晩お酒を飲んだせいだ。幸いなことに、起きても二日酔いにはなっていなかった。しかし、お腹がとても空いていた。昨夜は姉に心を痛め、姉の家で夕食を食べる時に彼女はあまり食べていなかったので今お腹ぺこぺこだったのだ。素早く服を着替え、洗面を終えると部屋を出た。キッチンに行って朝食を用意しようと思っていた時、食卓の上にすでに並べられた朝食が目に入ってきた。それは彼女の好きなイングリッシュ・ブレックファーストで、美味しそうな食べ物が食卓に並んでいた。結城理仁はスクランブルエッグを二皿持ってキッチンから出てきた。内海唯花が起きて来たのを見て、淡々と言った。「俺が起きた時、君はまだ起きてなかったから、外でいろいろ買って来たんだ。それからスクランブルエッグは今作った」「全部あなたが作ったのかと思ったわ」危うく彼の料理の腕が高級レストランのシェフみたいだと褒めるところだった。外で買って来たものだったのか。内海唯花はお腹が空いていたので、夫に遠慮せず食卓に座り箸を持ってまずはソーセージを挟んで食べた。「これとっても美味しいわね。コンビニで買ったんじゃないでしょ?」イングリッシュ・ブレックファーストを作るなら、確かにコンビニでもその材料は揃っているが、そこまで美味しくはないだろう。やはりホテルで食べる朝食には負ける。「車でスカイロイヤルホテルまで行って買ってきたんだ。あそこの朝食はいろいろあるし、味もとても良いって有名だしな。食べないなら食べないで済むけど、食べるならやっぱり一番美味しいものを食べないとと思って」実際は、彼

  • 交際0日婚のツンデレ御曹司に溺愛されています   第149話

    結城理仁は別に怒ってはいなかった。ただ内海唯花に自分が笑っているところを見られたくなかっただけなのだ。彼はマンションに入ると、妻が後に続いて来ていないことに気付き、足を止めた。後ろを振り向き大きな声で彼女に尋ねた。「もしかして、今夜はずっとそこに突っ立って過ごすんじゃないだろうな?」内海唯花はハッとして、嬉しそうに彼のほうに走ってきた。「結城さん、怒ってないの?」結城理仁は冷ややかに彼女を一目見た。彼の目つきはいつも通り氷のように冷たかったが、手を伸ばして彼女のおでこをツンと突いて言った。「次はないぞ!」内海唯花はまるで間違いを犯した小学生のように、手を挙げて誓った。「次は絶対にしないと誓います!」結城理仁は何も言わず体を前に向けて歩いて行った。内海唯花は急いで彼に続いた。彼の逞しいその後ろ姿を見つめながら、内海唯花の酔いはだんだん覚めてきた。そして心の中で不満をつぶやいていた。おばあさんは彼女に彼を押し倒せと言ったが、彼のこの氷のように冷たい様子では、彼女は本当に彼を襲えるような自信はなかった。しかし、彼をからかって遊ぶのは本当に面白い。彼女もたった一杯のお酒でこのように彼をからかえるのだ。普段なら彼の顔に触れるのが限度だ。ただ顔を触っただけでも、痴漢を警戒するかのように彼女に警戒心を持っている。まるで彼の顔に触れたのではなく、彼のズボンを脱がせたかのようだ。家に帰り、結城理仁はそのままキッチンへと入って行った。内海唯花は彼が一体何をするのか分からず、一声尋ねたが、彼女に返事をしなかった。だからわざわざ返事をもらえず恥をかくような真似をしないようにベランダへ行き、ハンモックチェアに腰掛けた。体を椅子にもたれかけ、つま先で地面を蹴って椅子を軽く揺らした。その時考えていたのは姉の結婚についてだった。彼女と結城理仁はスピード結婚で、結婚する前はお互いに相手のことを知らなかった。スピード結婚をした後は、二人とも相手を尊重し合っている。たぶん、まだお互いによく相手を知らず、どちらも自分の欠点を見せていないからだろう。否定できないのは、彼女は姉よりも幸せな結婚生活を送っているということだ。少なくとも、結城理仁が彼女に対してどのような態度を取ろうとも、彼女が悲しむことはないのだ。だって愛していないんだから!しかし、

  • 交際0日婚のツンデレ御曹司に溺愛されています   第148話

    内海唯花は彼に起こされ体を起き上がらせた。まるで子供のように手で目をこすった後、彼を瞬きせずに、じっと見つめていた。突然、彼女は彼の方に手を伸ばし、瞳を輝かせてはっきりした声で言った。「お兄さん、抱っこして私を降ろして」結城理仁はイライラしながら手を伸ばし、彼女をポンと叩いて冷たい声で言った。「忠告しただろう。酔ったのをいいことに俺をからかうんじゃないって。君はほろ酔い状態だろ、頭がはっきりしていないわけじゃないはずだ。君が今自分で言ってることと、やってることは、心の中でははっきり分かってるはずだぞ」そうだ、内海唯花ははっきりと分かっている。しかし、酒が入っているので、彼女はその勢いに任せているのだ。結城理仁が彼女にふざけるなと警告すればするほど、彼女はつい彼をいじりたくなる。大の大人の男が、一人の女性にマウントを取られないか恐れるって?誰かに知られたら、笑われるだろう。結城理仁「......」内海唯花は、ひひひと笑って彼に尋ねた。「あなたもしかして結城御曹司とおんなじで、実は秘密があるとか?」彼は男女関係においては、彼女よりも純粋なのだ。内海唯花は酒の力を借りて、思わず彼をからかってしまいたくなった。「どんな秘密があるって?」「アレがダメなのか、それか女性よりも男性のほうが好きなのか」結城理仁の表情は暗くなっていった。「おばあさんはいつも私たちをくっつけようとしてるでしょう。私はずっと30歳になる男性に彼女がいないなんて、きっとブサイクなんだって思ってたの。あなたに会った後、誤解してたって気づいたわ。あなたはブサイクなんかじゃなくて絶世のイケメンなんだって。それから、また考えたの。あなたってもしかしてちょっと問題があるんじゃないかって......」内海唯花はケラケラ笑って、両手も忙しく結城理仁の顔に伸ばし自由気ままに彼の端正な顔を触った。「結城さん、あなたDVなんかしないよね?言っておくけど、私は空手を習ってたの。私にそんなことしてみなさい、完膚なきまでにあなたを叩きのめしてやるんだから。あらまあ、こんなにカッコイイんだもん。本当にちょっとキスしたいわ。なんならちょっとお姉さんにキスしてみてよ。ねえ、ねえ、記念にちょっとだけキスを......」内海唯花はやりたい放題、彼をからかい調子に乗ってい

  • 交際0日婚のツンデレ御曹司に溺愛されています   第147話

    姉妹はお互いに支えあって長年生きてきたから、唯月は妹のことを熟知していた。妹が彼女に代わって鬱憤を晴らしてくれようと思っているのを知っていて、わざと妹を長く家にいさせていた。お酒を持ってきて、妹と一緒にそれを夜遅くまで飲み続け、深夜になって夫婦はようやく帰って行った。内海唯花はお酒が飲めるほうでも飲めないほうでもなく普通だ。姉が持って来たお酒は度数が高いものだったから、一杯飲んだ後、彼女は少し酔ってしまい、姉の家を離れる頃には頭がクラクラしていて歩くのもふらついていた。佐々木唯月はこの新婚夫婦を玄関のところで見送った。彼女は昔働いていた頃、よく上司に付き合って接待に行き、お酒に強くなっていたので、一杯の度数が高いお酒を飲んだくらいではどうということはなかった。「結城さん、唯花は酔ってるから、よろしくお願いします」佐々木唯月は妹の夫にしっかりとお願いをしておいた。妹をここまで酔わせておけば、内海唯花が佐々木俊介のところに殴り込みにいくこともできないだろう。唯月は妹が佐々木家に行って、彼らが束になって妹をいじめるのが怖かったのだ。あのクズ一家は、彼女たちの実家の親戚たちと張り合えるくらい最低な奴らだ。「義姉さん、ちゃんと唯花さんの面倒を見ますから安心してください」結城理仁は軽々と内海唯花の体を支えながら下へとおりていった。唯花が何度も転んでしまいそうになったので、理仁は彼女をお姫様抱っこするしかなかった。「君はそんなに酒に強くないのに、それでも飲むんだから。義姉さんが酒を持ってきた理由はこんなふうに君を酔わせるためだろう。それなのに、バカみたいに飲んじゃって」内海唯花は両手を結城理仁のクビに回し、おくびを出した。その酒の匂いが鼻に刺さり、結城理仁は顔を横に背けて彼女に言った。「俺のほうをむいてその息を吐き出すなよ。酒の匂いで鼻がもげてしまいそうだ」「もっと嗅がせてやるわ!」内海唯花はわざと彼の顔に近づいた。「お姉ちゃんの意図が分かっていながら、私を止めなかったわね」結城理仁は彼女がこのように近寄るのに慣れていないので、危うく彼女を地面に落としてしまいそうだった。「おまえな!」彼は怒って低く張った声で言った。「頭は冴えてるって分かってるぞ。俺の隙を狙ってふざけるのも大概にしろよ!」内海唯花はふんと鼻を

  • 交際0日婚のツンデレ御曹司に溺愛されています   第146話

    昔は姉が妹を守っていた。今その妹は大人になり力をつけ、今度は彼女が姉を守る番なのだ。「唯花」佐々木唯月は妹を引き留め、言った。「必要ないわ。お姉ちゃんも軽い怪我しただけだから。彼にも何もメリットはなかった。私が包丁持って街中を追いかけまわしたから、あの人ビビッて今後は家庭内暴力なんてする勇気はないでしょう」「お姉ちゃん、家庭内暴力は繰り返し起こるわ。あいつが手を出してきたのに、カタをつけておかないと、ちょろいと思われてまた手を出してくるはずよ」家庭内暴力など決して許してはいけない!「お姉ちゃんも分かってるから。だから絶対にあの人に負けないで殴り返してやったの。そして包丁持って街中追いかけまわしたのよ。あなたは知らないでしょうけど、彼は私の行動にすごく驚いてて、両足をガタガタ震わせてたわ。夫婦が初めて喧嘩する時は必ず勝たないといけないって言うでしょう。私のほうが勝ちよ。今後彼が私に手を上げようとするなら、彼自身どうなるかよく考えないとね」佐々木唯月は妹が佐々木俊介のところに行かないように力強く引き留めた。「彼も実家に帰っちゃったわ。あの人のところに行くってことはあの佐々木家全員を相手にしないといけないから、逆にやられちゃうかもしれない。行かないで、お姉ちゃんはもう彼に遠慮したりしない。今後彼が手を出そうが怒鳴りつけてこようが、私も相手になってやるんだから」「お姉ちゃん、どうしてすぐ私に教えてくれなかったのよ」内海唯花はとても胸が苦しくなり姉のまだ青あざが残っている顔をそっと触り、自分がその傷を受けたかのように辛そうに尋ねた。「お姉ちゃん、まだ痛む?佐々木俊介の奴!こんな力強く殴るなんて!長年培ってきた情もあるし、陽ちゃんも生んであげたってのに、お姉ちゃんにこんなひどい事するなんて」佐々木唯月は苦笑した。「私は今こんなふうになっちゃったもの。彼はもうずいぶん前から私を嫌っていたわ。結城さんも一緒に来たの?」「来てるよ。リビングで陽ちゃんと遊んでくれてる」佐々木唯月は声を抑えて、妹に念を押した。「唯花、あなたもお姉ちゃんの結婚が今ではこんなに面倒なことになったのを見たでしょ。寿退職をしてあの人の私を一生面倒見るっていう戯言を信じ込んじゃったせいね。あなたは絶対に経済的に独立していたほうがいいわ。女の人はどんな時だろうと、自分

  • 交際0日婚のツンデレ御曹司に溺愛されています   第145話

    姉妹二人はとても仲が良いとマンションの住人はよく知っていた。佐々木唯月が妹にその件を話さなかったのは、妹を心配させたくなかったからだ。「坂本さん、ありがとうございます」内海唯花は坂本おばあさんにお礼を言い、結城理仁を引っ張って、急ぎ足で姉の住むマンションへと入って行った。「昨日お姉ちゃんを送り届けたら、義兄さんがご飯を作っていなかったことで責めてきたの。その時、義兄さんの顔つきは、まさに誰がを殴りそうな感じだった。それが私に気づいた瞬間、また顔つきが変わったわ」内海唯花は結城理仁にぶつぶつ言った。「お姉ちゃん、どうして私に教えてくれなかったのよ」内海唯花は姉にとても心を痛めていた。女性が結婚するのはまるで転生するのと同じだ。彼女はひどい男のもとに転生してしまったのだ。三年の結婚生活で、義兄の姉に対する態度は180度変わってしまった。結城理仁は落ち着いた声で言った。「義姉さんも君に心配かけたくなかったんだよ。さっきあの坂本さんが言ってたじゃないか、義姉さんは包丁を持って、旦那さんを街中追いかけまわしたんだろ。つまり義姉さんは旦那さんに負けなかったわけだ。あまり心配しなくて、大丈夫さ」内海唯花が心配しないわけがない。でも、彼女は結城理仁には多くは話さず、彼を引っ張ってマンションの上の階へとあがって行った。そして姉が彼女に渡していた鍵を取り出して玄関のドアを開けた。佐々木唯月はこの時キッチンでご飯を作っていて、玄関のドアが開く音が聞こえると、佐々木俊介が戻ってきたのかと思いフライ返しを持って出てきた。もし佐々木俊介がまた暴力を振るおうものなら、もう容赦はしないと考えていた。佐々木俊介は実家に帰った後、一切彼女には連絡をよこしていなかった。しかし、彼女の義父母と義姉がひたすら彼女にメッセージを送り罵ってきた。彼ら佐々木家のLineグループでも彼女の悪口を言っていた。佐々木家の他の親戚たちに、彼女は妻としての役割を全くこなしていなかったから、夫に殴られる羽目になったのだと言って、佐々木家の他の親戚たちにも、彼女が悪いと言うように頼んだ。彼女が殴られたのは全て彼女が悪いのだ、佐々木俊介は何も間違っていない。彼女の当然の報いなんだと口から出る言葉はすべて彼女への悪口ばかりだった。ある親戚は年上の虎の威を借りて、彼女に対し

  • 交際0日婚のツンデレ御曹司に溺愛されています   第144話

    彼は少し止まって、また言った。「明日の朝は俺が君を店まで送るよ」彼がこんなにも気を使ってくれるので、唯花は電動バイクを店に残して、理仁の車に乗った。牧野明凛は夫婦二人が帰って行くのを目線で見送り、つぶやいた。「だんだん夫婦らしくなってきたわね」結城理仁は常に冷たくて寡黙だが、しかし彼の内海唯花への優しさは細かいところに見て取れた。「もし私も結城さんみたいな人と巡り合えたら、喜んで即結婚するわ」残念なことに、彼女のお見合い相手たちは結城理仁には遠く及ばない。あれらのいわゆるハイスペック男というのは、ただ収入が高いだけで、そのように呼ばれているだけなのだ。実際、ハイスペックという言葉からは、かけ離れている。この前のカフェ・ルナカルドでお見合いしたあの相手は、内海唯花のほうを気に入っていた。私的に仲介業者を通して内海唯花のことを尋ねていて、既婚者であることを知ったのに、まだくだらない夢を見ていた。牧野明凛は直接、あのお見合い相手に電話をかけ、ひどく怒鳴りつけた。もしも奴が私的に内海唯花にコンタクトを取り、彼女の結婚生活をめちゃくちゃにしたら、地位も名誉も傷つけると。内海唯花の目の前に現れなければ、牧野明凛は彼の命を助けたのと同じことだと思った。本気で内海唯花のところに行き告白でもしてみろ。彼女が相手を完膚なきまでに痛めつけるだろう。なんといっても空手を習っていたのだから。「途中に姉の家があるから、姉の家に行って様子を見てから帰りましょう」内海唯花は一日に一回は姉のところに行かないと、どうも慣れないのだ。結城理仁は、うんと一言返事した。少しして、夫婦二人は佐々木唯月の住むマンションに到着した。この時間帯はだいたい夜ごはんを終えた時間で、食後に子供を連れて外で散歩をするのが好きなマンションの住人が出てきていた。だから、この時刻はマンション周辺がとても賑やだった。結城理仁が車を停めた後、内海唯花が先に車を降り後部座席のドアを開け車から果物の入った袋を二つ取り出した。それは理仁がどうしても義姉に贈り物をしたいと言って買ったものだ。夫婦は佐々木唯月が住んでいる棟のほうへと歩いて行った。すぐに内海唯花はどこかおかしいことに気が付いた。彼女は姉の家に三年住んでいて、マンションの住人をよく知っていた。それが今日みんなが彼女を

  • 交際0日婚のツンデレ御曹司に溺愛されています   第143話

    結城理仁は心の中では内海唯花が内海家の兄弟たちに対処できないのではないかと心配していたが、何も言わず電話すら彼女にかけなかった。結婚してからもうすぐ一か月になる。彼は内海唯花のことを結婚当初よりは少し理解していた。もし本当に彼女が対処できないというのなら、必ず彼に助けを求める電話をしてくるはずだ。そんな彼女が電話してこないということは、つまり彼女だけでも問題はないということなのだ。しかも、彼女のほうが道理にかなっているわけだから、負けることはないだろう。このような考えを巡らせ、結城理仁は夕方仕事が終わって、車を乗り換えた後、星城高校に向かった。会社を出る時、九条悟は彼が最近仕事の接待や付き合いにもいかないし、九条悟にまかせっきりでプレッシャーばかり彼にのしかけてくると文句を言っていた。結城理仁は直接九条悟にひとこと述べた。「俺には妻がいるんだ。仕事が終わったら家に帰って奥さんと一緒にいるべきだろう。お互いの心を通わせなくちゃな」九条悟「......」言い訳だ!明らかにただの言い訳だ!言い訳をして逃れようとしているだけだ!九条悟は再び心の中で上司に悪態をついた。結婚してからというもの、だんだんと怠惰になっている。本当に結城理仁らしくないじゃないか。結城理仁はそんな九条悟の悪態など知る由もなく、星城高校に到着し、内海唯花の店に多くの高校生たちがいるのが見えた。参考書を見ているものもいれば、文房具を選んでいる者もいた。自分にはここでは異色のオーラがあるのを考慮し、結城理仁は直接店にはいるのはやめておいた。自分が入って、生徒たちが驚き店から出て行ってしまうと内海唯花の商売の邪魔になってしまうからだ。内海唯花は彼が教頭先生よりも厳格なのに、教師にならないのはもったいないと言っていた。しばらくして、生徒たちは塾へ行く時間になり、次々と店から出て行った。結城理仁はようやく車から降りて、店の中へと入っていった。内海唯花はその時、少しごちゃごちゃしたレジを片付けているところだった。そして結城理仁が入って来るのを見て、意外そうに大股で堂々と入って来る彼を見た。この男性は本当に並外れたオーラを持っている人だとまた感心した。まるで王者のご光臨かのようだ。これでは生徒が店に彼がいるのを見て、入ろうとしないわけだ。彼は本当にオ

  • 交際0日婚のツンデレ御曹司に溺愛されています   第142話

    金城琉生も唯花の親戚たちは最先端をゆくクズ中のクズだと思っていた。面の皮が辞書よりも厚く、恥知らずだ。「唯花、さっきのあなたたちの会話は全部録音しといたからね」牧野明凛は言った。「録音はあなたに送るわ。あいつらがまたネット上でデタラメ言ったり、ありもしないことを言い出したりしたら、使うといいわ」それを聞いて内海唯花は親指を立ててグーサインを作った。彼女はあまりの怒りでこっそり録音しておくのを忘れていたのだ。「琉生、まだ仕事に行かないの?」牧野明凛はその録音を親友に送信した後、従弟がまだ店にいることに気づき、彼に仕事に行くよう催促した。金城琉生はもうすこし唯花と一緒にいたかったので、口では「実家の会社で働くんだし、少しくらい遅れたって問題ないよ」と言った。「実家の会社で働くからこそ、もっと頑張らなきゃダメなんじゃないの。きちんと会社の規則を守ってみんなのお手本にならないと、後ろ指さされることになるわよ。さあ、早く仕事に行って。もしおばさんが、あなたがまだ会社に来ないことを知ったら、雷が落ちるわよ」金城琉生は金城家の長男の息子という立場で、彼女のおばとおじの金城琉生に対する期待はかなりのもので、彼が金城家の後継者になることを期待しているのだ。内海唯花も「琉生くん、早く仕事に行ったほうがいいわよ。これ以上ここにいたら、あっという間に退勤時間になっちゃう」と言った。金城琉生はもたもたしていたが、結局は車の鍵を取り出して外へと向かって歩いて行った。そして内海唯花に念を押した。「唯花姉さん、絶対にご馳走してくださいよね」「分かってるよ。お姉さんがあなたとの約束を破ったことがある?」金城琉生はしぶしぶ店を離れた。金城琉生が去ってから、店の中はいつも通り静かになった。牧野明凛はまた小説を読み始め、内海唯花のほうはハンドメイドを始めた。正午近くになって、忙しい時間帯になるので彼女は道具を直した。同時刻の結城グループにて。社長オフィスで仕事の話を終えた後、九条悟が何げなく言った。「結城社長、今連絡が来て、奥さんの親族たちが十数人、何台もの車ですごい勢いで彼女のお店に押し寄せてきたみたいだぞ」それを聞くと、結城理仁の瞳が少し揺れたが、相変わらず無表情で頭すら上げずに淡々と言った。「内海唯花は自立した人間だ。彼女のほう

DMCA.com Protection Status