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第9話

その後、再び明彦の話を聞いた時には、盛岡テクニックはすでに倒産寸前。残っていた顧客も次々と去っていた。

私と祐一はすぐに動き、すべてのリソースを引き継ぐことにした。

業界のライバルたちが盛岡テクニックの顧客を奪おうとする中で、私たちは早くから準備を整えていたため、大半を手中に収めることができた。

明彦は業界内での「一流社長」から一転、笑い者となった。

そして、華音はそんな彼を責め、喧嘩しながらも金をせびる毎日。しかし、明彦が今や無一文であることを知ると、彼女は子どもを堕ろして、あっさりと他の男へと乗り換えた。

怒り狂った明彦がその男に詰め寄ったが、返り討ちにあい、ついに男の「シンボル」まで折られてしまった。

私が再び彼に遭遇したのは、病院での定期健診の時だった。彼は車椅子に座り、後ろから押しているのは彼の母親だった。彼女は私を見つけるなり、目を輝かせて駆け寄ってきた。

「結花、あなた、元気でやっているのね!」

かつて私が明彦と付き合っていた頃、彼の母親は私のことを見下していた。「明彦のコネがなければ会社に入れなかっただけの女」とでも言いたげな態度で、私の能力なんて机上の空論だと信じて疑わなかった。

けれど、今は私が輝かしい経歴を背負い、彼女の息子が車椅子に座っている。その立場が逆転した瞬間、彼女はまるで手のひらを返したように私を利用しようと考え始めたのだ。

私は丁寧に微笑んで答えた。

「ええ、おかげさまで」

彼女は笑みを浮かべながら私を見つめていたが、一方で明彦は羞恥と後悔の表情で、毛布を握りしめていた。青筋の立つ手を抑え込みながら、やがて彼が低くつぶやいた。

「結花、これが俺への報いなのか......もう、子どもも望めなくなってしまった」

私は少し目を瞬かせて、静かに返した。

「でも、あなたにはかつて一人、いたじゃない」

彼が私を見上げた瞬間、その目が赤く染まる。私たちが付き合い始めた頃、一度妊娠したことがあった。その時、彼の母親は「結婚したければ、持参金を用意しろ」と冷たく告げた。

私は小さな田舎町の出身で、両親が必死に働いて私を学校に通わせてくれていた。それ以上の余裕なんてあるはずもなかった。タイミングの悪い妊娠に、私は何も言えず、堕胎費用すら明彦がネットで借金して工面したのだ。

その時、私は病院のベッドで、苦痛に耐えながら
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