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第7話

明彦のその言葉に、吐き気がするほど嫌悪感を覚えた。彼を無視してさっさと階段を上がろうとすると、なんと彼はしつこく追いかけてきた。

「結花、逃げても無駄だよ。俺、君の家の向かいに部屋を買ったんだ」

「......あんた、頭おかしいんじゃない?」

思わず振り返り、彼を睨みつけた。

「桐谷さん、もう私たちは別れたの。いい加減にして、離れてくれない?」

「結花、わかってるさ。俺たちの8年間は、君にとっても俺にとっても忘れられない思い出だろ?君がいなくなって初めて、交渉の大変さが身に染みたよ

西園寺なんて、ただの飾りだ。彼女は人目を引くためだけの存在なんだよ。君がそんなことで気を悪くするなんて......」

彼の必死の言葉が続く中、私は言い返さずにただ見ていた。

「結花、俺が本当に求めているのは君なんだ。けど、君も知っている通り、祐一の下で働いても成果は出ない。もし仕事がうまくいってるように見えたとしても、それは彼が君に花を持たせているだけさ。

だから......結花、戻ってきてくれ。俺が外で稼いで、君が内を守ってくれる。もう二度と君を離さないから、な?」

彼の言葉に、私はただ呆れて笑ってしまった。

「桐谷さん、女性は家で主婦をするのが当たり前だと思ってるわけ?彼女たちはキャリアも持たず、人と関わることもなく、ただ家にいればいいと?」

「君を養っていける。だからそんなもの必要ないだろ?君が苦労するのは、早く引退して自由を手に入れるためなんだろ?だったら、俺が20年早く叶えてあげる」

私は皮肉っぽく笑いながら言い返した。

「でも、西園寺さん、もう妊娠してるでしょ。私が戻ったら、彼女はどうするの?」

その言葉に、明彦は一瞬絶句した。まさか私がその事実まで知っているとは思わなかったのだろう。華音がSNSで幸せアピールをしてくれたおかげで、私は彼らの「恋愛の進展」を逐一把握していたのだ。最初は辟易していたけれど、最近では面白い気分で見物していたくらいだ。

明彦が何か言おうとして唇を動かすが、私は構わず続けた。

「どうせ、また俺が必要だとか思い始めて、自己満足のために声をかけたんでしょ。

私が盛岡テクニックで契約をまとめていた頃は、あなたは私の真似をしていただけ。人からは『女の力を借りた男』って思われるのが嫌で、私を蹴り出した。

それで証明したくて
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