第1話

「親愛なる君、七夕には必ず一緒にいるって約束したじゃないか！」

放課後の帰り道、私は突然義姉が見知らぬ男と手を繋いでホテルに入っていくのを目にした。

「ベイビー、三日ぶりに会ったね。君に会いたくてたまらなかったよ…」

私は驚きのあまり、声を出そうとしたが、何も言えなかった。

私は先天性自閉症を抱えているからだ。

私は両親が兄と旅行中に生まれた。

その日、高速道路で母の羊水が突然破裂し、父はアクセルを踏み込み、必死に病院へ急いだ。

しかし、思いもよらずその途中で事故に遭い、父はその場で亡くなった。

母はなんとか私を生み落としたものの、父の死の知らせを受けて精神的に耐えられず、大出血で命を落とした。

兄は私にとって、この世界で唯一の家族だ。

だが、彼は私をひどく憎んでいた。

私も自分自身が嫌いだった。

もし私が生まれていなければ、父と母は事故に遭うこともなかっただろうし…。

兄もこんなに早く家業を背負うことはなかった。

もちろん、私も兄の負担になってしまった。

そのため、兄は昨年やっと婚約したのだ。

私はまさか、普段は兄に優しい義姉が浮気をしているとは思いもしなかった。

二人の会話には、兄の財産を狙った計画が満ちていた。

私はこの真実を暴露する力もなく、急いで家に帰り、兄に知らせることにした。

家に入ると、兄は少し沈んだ表情で携帯電話を置いた。

「冉鈴、今日は七夕だよ。私たちの初めての記念日なのに、本当に帰るつもりはないのか？」

電話の向こうから義姉の声が聞こえた。

「今日は友達の誕生日だから、邪魔しないで。」

そう言うと、電話は一方的に切られた。

兄は私に一瞥をくれたが、何も言わなかった。

彼はいつも私と話すのが嫌いだった。

私にとって、彼はただの無言の人だった。

私は急いで前に進み、紙とペンを取り出し、こう書いた。

「兄さん、さっき義姉がホテルに行くのを見た！」

兄はその白い紙を見つめ、しばらく呆然としていたが、次の瞬間、彼の顔に険しい表情が浮かんだ。

そして、彼は私に一発の平手打ちを食らわせた。

私の左頬は焼けるように痛んだ。

兄は怒りをぶつけて言った。

「月穗、どうかしてるのか？お前は俺が幸せな時を見たくないのか？電話を聞いたからって、すぐに来て義姉を貶めるなんて！」

私は泣きそうになりながら、再び紙に書こうとした。

しかし、兄は机をひっくり返した。

「書くな！お前は彼女が嫌いかもしれないが、彼女はお前の義姉だ！俺はお前を育ててきた。お前のせいで一生結婚できないなんて、そんなこと望んでいるのか？月穗、お前の気持ちをしまい込め！選べるなら、俺はお前の兄になりたくない！」

最後の言葉を聞いた瞬間、私はその場で立ち尽くし、涙が止まらなかった。

まさか、兄が私をこんなに嫌っているとは思わなかった。

以前は兄が私に冷たい態度を取っていたが、血は水より濃いと思っていたから、兄が私を愛していないなんて考えられなかった。

でも今思うと、私は生まれた時から間違いだったのだ。

「泣いてばかりいるんじゃない！」

兄の感情が再び爆発した。

「俺に何か借りがあると思ってるのか？月穗、そんなに可哀想な振りが好きなのか？今すぐ謝れ、家庭を故意に壊そうとしてはいけなかったって言え！」

私も泣きたくはなかった。

けれど、言葉にするのが難しく、涙だけが感情を発散する手段だった。

私は首を振り、事実がそうではないと伝えようとした。

しかし、兄は私の意思を誤解した。

「謝るのがそんなに難しいのか？だったら、外に出て行け！」

兄は私を押し出し、冷たく言った。

「冉鈴は俺の人生で、母の次に大切な女性だ。もし彼女に対して攻撃を続けるなら、二度と帰ってくるな！」