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第5話

江崎博史は淡いグレーのスーツを身にまとい、堂々とした立ち姿と整った顔立ちで周囲の視線を引きつけていた。

彼は手に持ったスマートフォンで私に何度も電話をかけていたが、私の携帯は先ほど小金井珠美に壊されてしまっていた。

私は彼の名前を呼ぼうとしたが、喉に何かが詰まったようで、声がまったく出なかった。

小金井珠美は彼を見つけると、興奮した様子で小走りに近づいてきた。「やっと会えたわ、二年も待ったのよ!」

江崎博史は冷たい目で彼女を見つめ、そのまま無表情で問いかけた。

「君は誰?」

小金井珠美はすぐに答えた。「私よ、珠美!あなたの彼女よ」

江崎博史は薄く唇を開き、冷たく二言だけ言った。「頭がおかしい」

そう言うと、彼女を無視してレストランの中へ入ろうとした。

小金井珠美は彼の行く手を遮るように腕を広げた。「江崎博史、怒ってるの?あの尻軽女を殴ったから?」

彼は眉間にわずかな皺を寄せた。それは彼が不快感を示すときの仕草だった。

「俺は君なんか知らない。病院に行けよ」

小金井珠美は怒りを露わにした。「江崎博史、私たちはネットで二年間も付き合ってたのよ!あなたに何億も使ったのに、その浮気女のせいで別れるなんて言わないで!」

我慢が限界に達したのか、傲慢で放縦な彼女は手を上げて江崎博史を叩こうとした。

しかし、彼はその手を一瞬で払いのけ、「触るな!」と言い放った。

「もう一度言う。俺は君を知らない。これ以上絡むなら、容赦しないぞ」

江崎博史の冷たい眼差しと放たれる圧倒的なオーラに、小金井珠美は動きを止め、その場に立ち尽くした。

彼は店内に足を踏み入れ、荒れ果てた様子を一瞥したが、興味を示すことなく私を探していた。

でも今、私は少しでも動けず、小金井珠美の仲間に囲まれていた。

店内を一周見て、江崎博史は店員にそう聞いた、「先ほどまでここにいた、ベージュのワンピースを着た女性はどこに行きましたか?」

店員は怯えた声で尋ね返した。「その方は......お客様と何の関係ですか?」

江崎博史は、その問いに微かに笑みを浮かべて答えた。「彼女は俺の妻です。どこかにいるのを知っていますか?さっきから電話しているのに、繋がらなくて」

店員は震える手で私が倒れている方角を指さした。

彼の視線はその指の先を追って、小金井珠美の仲間たちも気まずそうにその場から
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