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ワンマン社長の夫は嘘ばかり もう付き合っていらない
ワンマン社長の夫は嘘ばかり もう付き合っていらない
著者: 熊さん必ず輝く

第1話

私はオークション会場の入口に立ち、目の前に広がる豪華な装飾が施されたホールを見上げ、心の中で思わず微かな感慨が湧き上がった。

かつて栄光に満ちていた頃、私はこの場の常連客だった。

いつもここに来ると、座る前にウェイターが水や軽食を提供してくれる特別なお客様だった。

今や行き変わり、お茶を出す側になってしまった。

やりたくはなかったが、このオークションの時給は非常に高く、まるでお金が私を呼んでいるように感じた。

利害を考慮し、私はこの仕事を引き受けた。

木村沢男の治療には、毎週の心理カウンセリングが数千円かかり、月々も色々な薬をたくさん飲まなければならなかった。

ざっと計算すると、この病気だけで月に六万から八万円はかかるが、高額な借金の返済は言うまでもなかった。

もし昔の私だったら、このくらいの金額は、バッグやネックレス一つ買うのにも足りなかった。

しかし、今は違った。彼とのすべての出費は、厳密に計算しなければならず、日常品をスーパーで買う時も割引の日を選ぶ必要があった。

出発前、彼にメッセージを送った。「どう?少しは良くなった?」

すぐに返事が来たが、その中には謝罪が詰まっていた。「相変わらずだ......ごめん、俺の巻き添えを食った」

私は急いで彼を慰めるメッセージを打った。「大丈夫、時間はたっぷりあるから、ゆっくり行こう!」

メッセージを送ってから、再び返信はなかった。

私は今からウェイティングスタッフの仕事に行くことを彼に知らせる勇気はなかった。

何せよ、大型のオークション会場には、多かれ少なかれ上流階級のやんちゃがいた。

かつては、私の隣でお茶を出していた純真な女の子が、瞬時に権勢者の二代目たちに誘拐されるのを目撃したこともあった。

木村沢男はプライドが高いので、私が彼の治療費を稼ぐためにこのようなバイトをしていることを知ったら、きっと烈火のごとく怒るだろう。

彼の状態は本来良くないのだから、私がその感情を刺激することは避けたかった。

仕事着に着替えると、会場にはすでに多くの人が座っていた。

恐らく服を着替える時間が少し長かったため、ゲストはほぼ入場しており、マネージャーは不機嫌そうに私を会場内に配置した。

階段状のオークションホールは広大で、最後の列に立つと、台の上に置かれた商品がほとんど見えなかった。

その時、オークションが正式に始まる前、技術者たちが照明や音響の調整をしていた。

マネージャーはあごを高く上げ、軽蔑の笑みを浮かべ、言葉の調子も少し嫌味に聞こえた。

「優子さん、今や昔とは違う。君はもう雲の上にいる社長夫人じゃない」

「ここでバイトするなら、そんなプライドを持つべきじゃない」

そう言うと、彼はテーブルの上のお茶を指さした。「前のVIPにお茶を追加しに行ってこい」

私は従順に頷き、重いトレーを持って前の方へと向かった。

トレーの空のティーポットを補給テーブルに置いて、新しいお茶を入れ替えようとした時、目の端に見覚えのある後ろ姿が映った。

心臓がドキリとして、急いでティーポットを下ろした。

さっきの視線を追ったが、その後ろ姿はすでに混雑した人々の中に消えていた。

私は頭を振り、自分の疑念が滑稽に思えた。

ありえないだろう?木村沢男がここにいるはずがなかった。

今日が彼の再診の日であることはさておき、普段の日でも彼がここに現れることは絶対にありえなかった。

......

後列の客にお茶を配ってから間もなく、オークションが始まった。

私は後列の陰に立ち、VIPエリアの富豪たちが次々と高額の品を落札していく一擲千金の様子を見ていた。

オークション台の司会者が高らかな声を上げた。「この商品は、本オークションの最後の目玉商品です」

司会者が少し止まると、後ろの大型スクリーンに目玉商品の全方位画像と現場で撮影された写真が映し出された。

後列に立っている私は、スクリーンに映し出された薔薇の宝石ネックレスとセットのイヤリングを見た瞬間、雷に打たれたような衝撃を受けた。

一目で、それは祖母のネックレスだとわかった。

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