第3話

この時、私の頭は少しふらふらしていて、思考能力を失ったようだった。

私は心が冷えきったまま場外の休憩室に向かって走った。まるで無数の針が刺さるかのように、脚に走る鋭い痛みを感じながらも、決して止まることはなかった。

私は震える手で、脱いだ服の中からスマホを取り出し、大村先生にメッセージを送った。

しかし、彼は先週から一ヶ月間海外に研修に行って、国内にいないと告げてきた。

さらに、木村沢男は昨年から彼のカウンセリングには一度も来ていないと教えてくれた。

画面の文字を見つめながら、私は地面に崩れ落ち、目が空になって、息も忘れたようだった。

木村沢男はずっと貧乏を装って、私を欺いていたのだった。

彼は一体何を図っていたのだろう？

もし外に愛人ができたのなら、離婚すればいいのに。

なぜ私を騙すのか、なぜ自分がうつ病だと言ったのか？なぜ家財没収の芝居をしたのか？

以前の私は、甘やかされて何一つ不自由のない生活を送っていた。

彼が貧乏やうつ病を装ったその日から、私は必死に働き続け、家計を支えてきた。

昔の白に赤みが差す美しい肌は日焼けし、豪奢な指は荒れていくばかりだった。これらすべては、彼が捏造したうつ病を治療するためだった。

この辛い日々を一年間過ごした。その間、誰も私にこの全てが詐欺だと教えてくれなかった。

彼の治療のために、仕事を探していたときに受けた屈辱的な光景が今でも鮮明に思い出されるのに、彼は高みから、私が彼の病気のために必死になっている様子を見下ろしていた。

彼のやり方、私は分からないし、理解もできなかった。

私は連絡帳を開き、木村沢男に電話をかけた。

電話の向こうは二度のブザー音の後、切られてしまった。

次の瞬間、木村沢男からのメッセージが画面に表示された。

私はタップして、私を欺くための嘘をこの目で確かめた。

「ごめん、優子。大村先生のカウンセリングは高すぎて、時間を無駄にしたくなかったから電話を切った」

「終わったらすぐにかけ直すよ」

「そういえば、前に牛肉が食べたいって言ってたね。終わったらスーパーに行くよ」

「今日スーパーに寄ったとき、12％オフの放送を聞いたよ」

スマホが震え続ける中、送られてくるのは再三の嘘だった。

木村沢男、あんたは一体何を企んでいるの？

......

再び外に出ると、ちょうどマネージャーに見つかってしまった。

彼は私に向かって、容赦なく怒鳴りつけてきた。

「ここでサボっているつもりか？」

「辞めたければ辞めろ！ 誰もお前を強要していない！」

私はその突如の怒鳴り声に驚き、呆然としていた。その間に、彼に何度か押されてしまった。

ヒールを履いていた私は、足元が不安定になり、倒れそうになったところで、背中にがっちりとした胸が当たった。

反応する間もなく、頭上から重苦しい笑い声が響いた。「お嬢さん、いつまで私のところにいるつもりですか？」

夢から覚めたような私は、まるでバネのように跳ね上がり、顔が火照った。「す......すみません」

元々不機嫌そうだったマネージャーは、来た人を見て一変して媚びるような態度に変わった。

彼は私を横に引っ張り、隣に立っている男性に対して低姿勢になった。「小林社長、いつ帰国されたんですか？傷ついてませんでしたか？」

温和に微笑んだ小林銘祐は頭を振りながら、マネージャーに視線を向けた。

「彼女を押さなければ、彼女は私にぶつからなかったのでは？」

その言葉を言うとき、小林銘祐の笑顔は変わらなかったが、さっきのような柔らかさはなかった。

マネージャーはこの大物を相手にできないことを理解し、ぎこちなく笑い、責任を私に押し付けた。「手下が働かないから、ちょっと叱っただけです」

言いながら、彼は私に向かって指摘した。「ここで何をしている？早く仕事に戻れ！」