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第6話

実は私は嘘をついていた。

これが離婚を促すための口実に過ぎない。しかし、誰かと約束があるのは本当だった。

昨晩部屋に戻った後、しばらくして見知らぬ人からラインが追加された。

彼は私に直接渡したいものがあると言い、午後1時に市中心のレストランで待っているようにとお願いしてきた。

最初は一顧だに値しないと思ったが、彼がある録音を送ってきた後、約束を受け入れることにした。

木村沢男は少し身をかがめて、両手を私の体の両側に置き、なんと陰鬱な目をしていた。「誰だ?」

私は微笑んで答えた。「お教えできません」

「彼のために、離婚したいのか?」

私は首を振り、口元の笑みが一瞬で消えた。

「父は破産危機の処理のため、三日三晩徹夜で働き続け、最終的に脳出血で亡くなったんだ」

「結局、あなたが父を殺した元凶なのよ」

その言葉が終わった途端、彼のスマホが鳴った。

彼は電話を取ると、陰鬱な瞳に驚きが広がり、まるで電話の向こう側で何か不測の事態が起きたかのようだった。

急いで椅子の背にかけていたコートを掴み、振り返って出て行った。

私は壁に掛けられた時計を見つめ、部屋に戻って服を着替えた後、外に出た。

私は相手が指定したレストランに1時間早く到着した。椅子に座って、スマホを開いてアプリをいじり始めた。

何という運命か、再びその女が最近投稿した記事を見かけた。

今度の表紙は膝の傷の画像で、タップすると次の写真に進んだ。

案の定、木村沢男の姿がその写真に映っていた。

写真の中の木村沢男はうつむき、綿棒と水薬を手に持ち、彼女の傷の手当てを丁寧にしていた。

キャプションには「少し傷がついただけでこんなに緊張するなんて、また木村さんに温かさを感じた日です」と書かれていた。

私は皮肉を感じずにはいられなかった。少しのかすり傷でそんなに心配するなんて、彼は本当に彼女に夢中なのだろう。

私はそのことに興味がなく、今はただ離婚したいことだけを考えていた。閉じようとしたとき、間違って「いいね」を押してしまった。

私が悩乱しながら3杯目のコーヒーを飲み終えたとき、対面の椅子がようやく引かれた。

私は顔を上げ、浅い茶色の目と合った。

彼の顔には初対面のときと同じような温和な笑みが浮かんでいて、手を差し出した。「優子さん、初めまして。小林銘祐です」

私は慌てて立ち上
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