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第2話

私はふと、将太が投稿したSNSの写真を開いた。

彼はもう70歳を超えているが、その姿はまだ松のようにまっすぐで、若かりし頃の面影がわずかに残っていた。

彼は文学部の教授であり、友人のひばりは文学評論家だ。

だから、彼らはしばしば一緒に文学作品について議論するチャンスがある。

普段はめったに笑わない将太が、今は笑顔を浮かべ、まるで春風に包まれたようだった。

遠くには、家で手伝いをしないうちの息子が、ひばりの家の庭にある大きな木の上で枝を剪定していた。

汗も拭かずに一生懸命に作業をしている様子を見て、私は胸の痛みがますます強くなり、背中が重く沈み込むように感じた。

涙がいきなり溢れ出し、私は自分の犠牲がどれほど滑稽なものだったかを改めて理解した。

私は毎朝、誰よりも早く起きて朝食を準備し、食事が終わったら急いで皿を洗い、キッチンを片付け、孫を学校まで送るというような生活をしている。

帰り道では買い物をし、家に戻ると掃除と洗濯をする。その後は野菜を洗い、昼食の準備に取りかかる。孫が帰ってくる時間に合わせて、昼食を作り終える必要があるから。

孫は好き嫌いが激しく、肉団子や揚げナス、蒸しエビなどを好んで食べるので、準備にも時間がかってしまう。

時には忙しすぎて、彼に孫の迎えを頼むと、嫌そうに眉をひそめて、「本を読んでいるところなんだから」と言われるだけだった。

こんな生活の中で、私はまるで独楽のように回り続けていた。疲れ切って倒れそうになることもあったが、私は不満を言わなかった。

それなのに、報われたのはこんな裏切りだったのだ。

妻として、私が「いてもいなくてもいい存在」であるばかりか、母としても「いてもいなくてもいい存在」だと気づいた。

自分の立場をはっきりと認識したことで、私は冷静になってきた。

もう、こんな人たちと一緒に生活を送るつもりはなかった。

それから私はスーパーへ行き、自分のために新しい服を買った。

帰り道、お腹が空いたので、小さなレストランで料理をいくつか注文し、のんびりと食事を楽しんだ。

これまで、節約のため、そして家族が健康でいられるように、40年も毎日自分でご飯を作ってきた。結婚式や宴会を除けば、いつもいつもキッチンに立っていた。

しかし、これからはもう、そういうことはしない。

家に戻って、しばらくテレビを見ながらくつろいだ。

やがて日が暮れて、私が水を飲もうと立ち上がると、鍵を回す音が聞こえた。

将太が帰ってきたのだ。

彼は写真のように穏やかな笑顔ではなく、いつもの無愛想な表情をしていた。金縁メガネ越しに、冷たい目で私を見ていた。

彼はいつも私にこうした態度を取るため、私は少し彼を恐れていた。結婚したばかりの頃にそのことを伝えたが、彼は「感情をあらわにするのが苦手で、心の中には君を大事にしているんだ」と言っていた。

だが、動画でひばりに優しく接していたことを知った今、彼の言葉が虚しい嘘にしか聞こえない。

彼は当然のように「水をもってきてくれ。酒を少し飲んだから、気持ち悪い」と言った。

いつものようにすぐに立ち上がって準備せずに、今日は彼を無視した。

私がまだ持ってこないことに驚いた彼は、眉をひそめて「聞かないか」と怒鳴った。

以前なら、彼のこんな不機嫌な様子を見ると、緊張してしまっていた。だが、今日は驚くほど落ち着いていた。

「忙しいから、自分でやって」

将太は信じられない様子で、私を見つめた。初めての反抗だから。

彼の顔は暗くなり、「今日はどうしたんだ。息子からの電話も出なかっただろう?」と聞いた。

「今日は外で食事をしてきたんだから、食事の準備をせずに、一日ちゃんと休めたじゃないか」

私が言い返そうとしたその時、息子と家族が帰ってきた

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