娘が亡くなった時、夫は初恋の犬の誕生日を祝ってた
純愛寺 門主
娘の五歳の誕生日、私はケーキを抱え、家路を急いだ。
家にたどり着くと、一面に煙が立ち込め、別荘全体が炎に包まれていた。
田舎から孫の誕生日を祝おうと駆けつけた両親は、私たち家族が火の中に取り残されていると思い、救出しようと中へ突入したが、瓦礫の下敷きになり重傷を負った。
本来、娘と一緒に家で過ごすはずの夫の姿は、どこにも見当たらなかった。
消防士が娘を救出した時、彼女は有毒な煙にむせ、ほとんど話せなくなっていた。それでも途切れ途切れに、「ママ、パパは私を……私を嫌いなの……?」と私に尋ねた。
葉を言い終える前に、彼女の目は完全に光を失い、二度と目を覚まさなかった。
娘の亡骸を抱きしめ、地面に崩れ落ちながら、狂ったように隆也に電話をかけた。
十回目の電話でようやく繋がったが、出たのは美咲で、甘えた声でこう言った。「智美姉さん、私たち今ルーシーちゃんの誕生日を祝っているの。一緒にどう?」
そのルーシーは彼女が飼っている犬だ。
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