頼みどころ
藤田彦治との結婚生活七年目、彼の初恋の人が帰国した。
その時、私は気づいた。この家で私は最初から最後まで、ただの代役でしかなかったのだと。
離婚届を出したその日、新幹線の切符を予約した。
唯一気がかりだった息子は、むしろ嬉しそうに言った。
「これでパパは、つづみおばさんを本当のママにできるんだね!」
さすが藤田彦治の子、女性を見る目まで父親そっくりだった。
振り返ることもなく、荷物をまとめて家を出た。
三ヶ月後、娘を連れて歩いていると、偶然彼らと出くわした。
「ママ、どうしてあのお兄ちゃん、ママを見て泣いているの?」
娘が不思議そうに尋ねた。
私は娘の手を引いて、その場を立ち去った。
「知らないわ。見たことのない人よ」
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