夏目さん、死なないで! 社長のアプローチが始まった!
夏目凛(なつめ りん)は病気で、余命いくばくもなかった。
その日から、凛は悟った――生死の前では、すべてが幻のようなもので、今までこだわってきたことが全てバカバカしく思えてきた。
自分勝手な、タカるだけの家族なんて、いらない!
プロポーズしたくせに、すぐに他の女とイチャつく婚約者なんて、いらない!
全てを失った凛は、やっと自由になれた......
それからしばらくして、凛の噂で持ちきりになった。
夏目さんが金持ちを捕まえたって。
夏目さんが若い男と旅行してるって。
夏目さん、超金持ちになって、お金使いまくってるって。
夏目さんは......
後で、凛に捨てられた人たちは真実を知って、泣きながら土下座して許しを乞うことになるんだ。
金づる扱いをしてくる両親はこう言った。「お前はいつまでも私たちの可愛い娘だ。一緒に家に帰ろう」
クズの元彼は言った。「俺が愛しているのは凛だけだ。もう一度だけチャンスをくれ」と言った。
しかし、もう遅い!
男は凛の前に立ちはだかり、険しい顔で言った。「これ以上凛に近づいたら、足を折る」
そして、あの高位にある男は、凛の前にひざまずいて、こう言った。「生きていようが、死んでいようが、お前は俺のものだ」
霧島聖天(きりしま せいてん)は、自分が善人ではないことを自覚している。
名門霧島家の当主である聖天は、冷酷で、誰よりも早く決断し、行動し、恐れられていた。
誰が想像できただろうか。あんなに近寄りがたい聖天が、一人の女の子を8年間も想い続けていたなんて。
彼の数少ない優しさは、全部彼女に捧げられていた。