ようやく金曜日になった。気が遠くなるほど長かった1週間が終わる。会社にいる間はとにかく仕事に没頭して、余計なことに惑わされないように心がけた。宣人や留奈とは冷戦状態を保っている。 居心地が悪いのはたしかだけれど、非があるのは向こうだ。 わたしが卑屈になる必要はまったくないと、必死で踏ん張っていた。そして、いまだに浅野くんのところに滞在していた。家探しは難航、というか、まだ、ちゃんと取り掛かれていなかった。毎日、宣人や留奈に神経をすり減らしてへとへとになってしまい、会社帰りに不動産屋巡りをする元気がでなかった。ネットで検索しているけれど、これといった物件は見つかっていない。彼はいつまでいてもかまわない、と言ってくれているけれど、今週末には動かなければ。で、今晩、これまでのお礼の気持ちをこめて、ちょっと豪勢な夕食を作ってごちそうしようと思っていた。昼食調達にコンビニに行った帰り、外回りに出かけるところの浅野くんとばったり会った。「あ、浅野くん、ちょうど良かった」 「なんですか」わたしはきょろきょろと辺りを見回し、誰もいないことを確認してから話しはじめた。「今夜って、なにか予定入ってる?」 「いえ、特には」「夕飯作ってごちそうしたいんだけど。何かリクエストある?」「うーん、そうですね。梶原さんの得意なもんでいいですよ。何を作れるのかわかんないし」 「それもそうだね。じゃ、そのつもりで。でも急な予定が入ったら遠慮なくキャンセルしてね」
Last Updated : 2025-04-12 Read more