口づけを繰り返しながら、彼の手はゆっくりと身体の脇を下がってゆき、やがて、わたしの一番密やかな場所に到達した。 「あ……」淫らな声が漏れそうになり、わたしは唇を噛む。「もっと……声が聞きたい」欲を孕んだかすれ声でそういうと、彼の指がわたしの狭間に分け入ってきた。敏感な部分を余さず責められて、彼の思惑どおり声が抑えられなくなった。 「あん、っや、かず……だ……め、ああん」 そんな繊細な、それでいて容赦のない彼の愛撫に、わたしは身も心も溺れた。身体の奥から欲望がとどめなくあふれ出してくるのが、自分でもわかった。 「ねえ……もう」と淫らに腰をうごめかせてしまうわたしにキスの雨を降らせながら、彼も切羽詰まった声を漏らす。 「今すぐ……あげるから」彼は一度身体を離し、そして、自身に覆いを被せ、一気にわたしを貫き……想像以上の快楽に、わたしは背をしならせて応えつづけた。 *** 嵐のようなひとときが過ぎ去り、彼の胸に寄り添い、髪を撫でられながら、わたしはぼんやりと天井を眺めていた。「怒ってる?」一樹は甘やかな、でも少し不安をにじませた声でわたしに話しかけてきた。 「ずるいよね、俺。親切|面《づら》して、茉衣さんを家に住まわせて……今日だって酒に酔わせてさ」わたしは起き上がり、上から彼の顔を覗き込む。「ううん、ずるいのはわたしのほう。浅野くんの善意につけこんでいたんだから」彼はくすっと笑う。「浅野くん?」「もうわかったでしょう。善意じゃなくて、純然たる下心だって」「純然たるって……」 いいようもなく幸せだった。でも同時に、一抹の不安が水に落とされた墨汁の一滴みたいに、わたしの中で急速に広がった。
Last Updated : 2025-04-14 Read more