そして、その翌日の月曜日。いきなり、宣人や留奈と鉢合わせになるのは避けたかったので、わたしは定時よりかなり早く出社した。さすがに始業1時間以上前のオフィスはがらんとしている。 わたしは深呼吸をひとつして、掃除をするため、給湯室に向かった。定時を過ぎても、宣人は来なかった。 風邪をひいたらしい。あの水浴びが原因だったりして。一方、留奈は定時5分すぎに、悪びれない様子で出社してきた。この子のメンタル、鋼(はがね)でできてるのだろうか。 当たり前か。同じ部署内なのに、恋人を寝取るような子だし。 顔を見たら取り乱すかと思ったけれど、意外にも冷静でいられた。「梶原さん、おはようございまーす」 「おはよう」硬い声で応じるわたしに、彼女は囁き声でアピールしてくる。「宣人さん、熱出ちゃったみたい。真冬に水浴びしたからかな?」 つかみかかりたくなる衝動に頭がかっと熱くなる。でも、ここで騒ぎを起こしたら、みじめになるのはわたしのほう。 わかって挑発してるのだろう。その手には乗らない。なんとか衝動を抑えこもうと、わたしは手のひらを握りしめた。留奈はまだは自席に戻らない。「何? まだ何か用があるわけ」 不機嫌さがあらわになっていく。「宣人さん、言ってましたよ。留奈のおかげで常務と繋がりが出来て、これで出世間違いなしで嬉しいって」暗に自分のほうが宣人にとって役に立つ女だと言いたいらしい。さすがに切れて、声を荒げそうになったとき……
Last Updated : 2025-04-10 Read more