「さぁ、温かい内にどうぞ」 トレイに乗せ、湯気の出た具沢山のスープと焼いた丸パンを持ってきたリシュティナは、ベッドの隣にある小さなテーブルの上にそれを置いた。 その美味しそうな匂いに、ヴィクタールは朝から何も食べていない事にようやく気付き、同時に腹の虫がグゥと鳴った。「…………」「ふふっ、遠慮無くどうぞ? 勿論毒は入っていないので大丈夫ですよ。毒味をしましょうか?」「いや……大丈夫だ」 微笑むリシュティナに促され、ヴィクタールは羞恥を隠す為ブスリとした面持ちで上半身を起こすと、スープの器を手に取った。 スプーンで掬い、それを口に入れると、ミルク風味の温かく優しい味わいが口の中一杯に広がり、ヴィクタールは思わず、「うまっ」 と口に出して言ってしまった。「お口に合ったようで良かったです」 リシュティナはそれを聞き、嬉しそうに微笑む。「……今まで温かい飯なんて食べた事無かった……。毒味をした後だったから、毎回冷めてて……。こんなに……こんなに美味いんだな……。温かいだけじゃなく、味付けもすげー美味い……。こんなに美味い飯がこの世には存在していたのか……」「え、えぇっ……? いえ、そ……そんな、そこまででは……。ほ、褒め過ぎですよっ?」 両手を激しく左右に揺らし、アタフタとするリシュティナの姿に、ヴィクタールは思わずフッと笑ってしまった。 その後がっつくようにスープとパンを食べ、スープを二杯おかわりをしてお腹を満足させたヴィクタールは、再び毛布に包まり、ベッドに横になった。 良い匂いのする毛布に、また何とも言えない気持ちになってくる。 気を紛らわす為に窓を見てみると、外は真っ暗だった。もう夜も深いのだろう。 天井をボーッとしながら眺めているヴィクタールの近くに、ご飯の後片付けを終えたリシュティナがやってきた。「夜も遅いので、宜しければ一晩泊まっていって下さい。ベッド、そのまま使って構いませんよ。母と一緒に眠っていたベッドなので、広くて快適でしょう? ゆっくりと休んで下さいね」 微笑みながら言うリシュティナに、ヴィクタールは疑問に浮かんだ事を訊いてみた。「……なぁ。何でお前はオレにこんなに良くしてくれるんだ。お前はオレが王族だって気付いてるんだろ? 世話して金をせびる為か? やっぱり金の為なのか?」「えっ!? そんな――馬鹿にしな
Last Updated : 2025-03-16 Read more