リシュティナには、いつ朝が来たか分からない。 眠りから目覚めて瞼を開けても、ただ一面暗闇が広がっているだけだからだ。 今も脳が覚醒し始め、そっと瞳を開けても、目の前は闇一色だ。 身体から、ヴィクタールの温もりが消えていた。「……ヴィル?」 上半身を起こし、小さな声でヴィクタールに呼び掛ける。 しかし、返事は無い。暫く待ってみても、返ってこない。 リシュティナは、真っ暗闇の中、急に独り取り残されたような疎外感に襲われた。「ヴィル……ヴィル、どこ? どこにいるの……?」 震える声でヴィルを呼びながら、カタカタと小刻みに揺れる手を前に伸ばす。「ヴィル――」 泣きそうになった、その時。「――リィナ」 待ち望んでいた声が聞こえたと同時に、伸ばされたリシュティナの小さな手を、大きく温かな手がギュッと握り締めてきた。 そのまま引っ張られ、いつもの温もりがリシュティナの身体全体を包み込む。 その温もりに、無意識にホッとしている自分がいた。「悪ぃ、手洗いと顔を洗いに行ってた。グッスリ寝てたからまだ起きないと思ったんだ。大丈夫だ、オレはお前に黙って遠くへなんて絶対行かない。死んでもお前の隣にいるって言ったろ?」 ヴィクタールは、リシュティナの震える身体を労るように更に深く抱きしめ、自分の額を彼女の額にコツンと当てた。「怖がらせちまって悪かった。けど、オレを求めてくれてすっげぇ嬉しかった。もう無いようにするが、万が一またこんな事があったらすぐ声を出してオレを呼んでくれ。すっ飛んで来るから」「…………うん、ありがとう」「ん。もっとオレを求めていいからな?」 ヴィクタールは嬉しそうな声音を出すと、リシュティナを抱きしめたまま、その首筋に自分の顔を埋めた。 滑らかなリシュティナの首筋に、ヴィクタールは甘えるように頬を擦り寄せている。(あぁ……どうしよう。私もヴィルに依存しちゃってる……?) リシュティナの心の中で、ヴィクタールを“魅了”から解放してあげたい気持ちと、ずっとこのまま彼と一緒にいたい気持ちがせめぎ合い、心揺らぐ自分が嫌になるのであった……。◆◇◆◇◆◇◆◇◆ “魅了”を解除する方法を探そうと決意したリシュティナだったが、一つ大きな難関があった。 それは、ヴィクタールが文字通りリシュティナから離れない事だ。 朝の件があってか
ปรับปรุงล่าสุด : 2025-04-15 อ่านเพิ่มเติม