31 美鈴は真知子や知紘から、証拠さえ掴めば慰謝料が取れるということはインターネットなどの情報から知ってはいた。弁護士を探し相談、そして調査会社に依頼して証拠集め、もしくは自分で証拠を 集めるなどして慰謝料を請求する、更に離婚となると財産分与、年金分割なども 請求できる……そのようなアドバイスが大半だったが、はっきり言って面倒くさいことが嫌いな性格の上のこともあるのと、そこまでいろいろと行動する憎悪のエネルギーが美鈴にはなさ過ぎた。だからといって、これまでほとんど専業主婦の体で暮らしてきた自分が知紘と離れて暮らすというのを第一目標にした場合、どうすれば自分にとって最善か、それはちゃんと考えた。それは今もこの先も結婚はもうしないだろうということが前提になっていて、最後まで離婚を伸ばせるだけ引き伸ばし、尚且つ知紘とは別居するという形だった。保険や年金のことを考えると夫の扶養に入っているほうが断然助かるので、少なくとも生活の基盤が整うまでは、自分からは離婚の話を持ち出すのは止めようと決めていた。古民家暮らしでは畑と広い庭があり、野菜が作れて、BBQ《バーベキュー》だってできる。レンガを積み上げてピザ窯を作ればピザだって焼ける。この古民家への移住を考えるようになってから、美鈴はよけいに知紘や真知子への復讐などどうでもよくなった。今や、ワクワク感が堪らない。離婚不受理届けを市役所の窓口に出し、固定資産税の支払いに関する連絡先の住所を変更し、後は、『しばらく1人になりたい』と置手紙を残し、保険証や年金手帳、クレジットカードなどの貴重品は鞄に詰め、自分の居場所を探せるようなもの(母親からのハガキなど)の痕跡を消し去り、知紘の前から去るのみ。一種の卒婚のようなものだ。困窮したら、生活費も頼んでみるつもりでいる。ちゃっかりできるところは遠慮しない。とにかく、どうなるか分からないがやってみなければ始まらない。知紘が姑息にも筧に真知子を押し付けて別れた翌月の末に、1か月間準備を進めていた美鈴は知紘には置手紙ひとつで家を出た。母親には手紙で知らせておいた。『知紘が私のことを探して、どこに行ったか知りませんか、という問い合わせが 万が一あった場合、知らないと話ておいてください。困った時は必ず連絡をするので、私のことは心
Terakhir Diperbarui : 2025-03-27 Baca selengkapnya