All Chapters of 『輝く銀河系の彼方から来しトラベラー』ー古のタビ人―: Chapter 11 - Chapter 20

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◇混乱 第11話

11 『ごめんなさい、くだらないことを言って。 まだ私の常識が邪魔をしてあなたのことを完全に異星人だと認めることは 難しいけれど、こうして私に話しかけてくれて慰めてくれる人の存在は 理解できるし、受け入れられる。それに今の私にはあなたの存在が必要。 行かないで……居なくならないで……』『分かった。君の混乱は分かるよ』『訊いてもい~い?  もしも、家の中であなたを呼べばその……家の中にすぐに飛んで来れるの?』 『歩いたり、乗り物を使わないと距離を移動できない人間界では理解 できないだろうけど、僕たちはすぐに移動できるんだ。 だから君さえ望めば家にもすぐに行ける』『じゃあ、話を聞いてもらいたい時には、ここよりもっと近い近所の公園 から呼んでもいいかな? 家は散らかってたりすると、恥ずかし過ぎる から』 『プライベートゾーンだからね、ははっ。いいよ、公園で待ち合わせしよ う。そのあとで行きたい場所があれば一緒にそこに移動すればいいからね』 『綺羅々と一緒だと、私も瞬間移動できるんだ』 『そうさっ』『ありがと。綺羅々と出会えてなんだか心が軽くなった』『そっか、ならよかった』『次はもう少し遠くの緑の多い場所に行ければいいんじゃない?  そしたら、人の目も気にせず過ごせるだろうから』『うん、私、今日帰ったら素敵な場所探しておくわ』『じゃあ、また。次はまた2~3日後に会おう。でも会いたくなれば明日 でも構わないよ。綺羅々、って呼べば来るからね』『うん、分かった』 しばらく私たちは静かにその場にいたけれど、周りの景色を見て 隣を見ると、すでに綺羅々はいなくなっていた。そっと帰って行ったみたいだった。 『ちゃんと呼べばほんとに来てくれるのかしら。 今起きたことが全部白昼夢で現実ではなかったら、私は別の悲しみに 暮れてしまいそうで早くもう一度綺羅々に会いたいと思った』私はその後もしばらく放心状態でそのままそこにいた。そして何故か知紘との夜のライトアップされた公園でのデートを 思い出してしまった。あの日、私は知紘から手を引き寄せられ抱きしめられて『好きだ……』 と言われてキスされたんだっけ。 こんなこと思い出したくないのに何であの日のことが浮かんだり するのだ
last updateLast Updated : 2025-03-12
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◇高揚感 第12話

12       週末の華金、23:55。ルーティンのように知紘は自宅にはいない。 毎週末、いや毎夜、いや……いつもいつも、知紘と女、真知子とのことに 囚われて苦しい毎日を過ごしてきた。 そして知紘の浅はかさ思いやりのなさに失望し、無力感の波に襲われ、 涙が止まらなくなった夜もあった。 だけどこの夜の美鈴は違った。森林植物園で出会った綺羅々の心からのやさしい慰めで元気を取り戻した美鈴は、 その夜何度も彼の笑顔、やさし気な眼差し、氷のように冷え切った心に温もりを 取り戻してくれた声掛けなどを、繰り返し思い出すのだった。 そして、良い意味での高ぶった気持ち、心地よさ、そんな感情に浸った。いつもなら午前様になっても帰宅しない夫のことを思い煩いなかなか寝付けず悶々と過ごしていたのに、この夜は違った。 興奮してなかなか寝付けないのは同じだったが、それは不安や嫉妬からでは なく喜びから湧き上がる高揚感からのものだった。夫の知紘が真知子という女に溺れるようになってから、美鈴はひどく夫から 粗末に扱われていると感じるようになった。 『美鈴のことが好きなんだ。 絶対一生大切にするから俺を選んで……俺と結婚してほしい』とプロポーズしておきながらのこの仕打ち。 知紘という人間は口先だけの嘘つき野郎だったのだ。 信じて付いてきたのに。この手酷い裏切りは一体何なのか。――― 意識の変革 ―――知紘が田中真知子に心を持っていかれた日からじりじりと焦りのようなもの が美鈴の中に湧きあがり、どうにか、何とかしなくちゃと気持ちばかりが 先走り地に足のつかない日々を過ごしてきた。思った以上に自分は夫の言動にダメージを受けているようで。不意に涙が出てきたり、自身の無価値観に苛まれたり、というように 情緒不安定になってきているのが分かる。けれど……とうとう、ついに、明確に、胸の奥底から湧いてくるものが あった。それは、女磨きをして素敵な女性に変身したいという願い。 自分の見た目を変えることに合わせて自分の精神的な部分の安定を 取り戻したいという想い。それは、見た目も内面も充実させて女性らしさを内包した 素敵な女性になりたいというものだった。そして自分のことをもっと好きになってこれからの人生を 豊かなものにしたいのだ。
last updateLast Updated : 2025-03-13
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◇同じ土俵 第13話

13 潜在意識の中に、夫の心を取り戻したい、振り向かせたいという気持ちが全くないかと問われれば、全くないとは言い切れないがしかし、第一の目的の意義は自分磨きをして自分の存在価値を高めることにある、と言えた。決して田中真知子という女と競うつもりなどは毛頭ない。既婚者である夫とほいほいっ、付き合えるような薄っぺらい女と 同じ土俵になんぞ、立ちたくもない。とにかく 自信をなくしたままじゃあ、いやなのだ。 女性としての生《性》を軽やかに楽しみたいと思う。 自分が自分を輝かせるのだ。 落ち込み暗い穴蔵のようなところに留まるような 可哀そうな自分にしてはいけない。 綺羅々に会ったことが切っ掛けで自分の成すべき方向性が見えてきた美鈴だった。           ◇ ◇ ◇ ◇ 翌日は土曜で、夫はやはり9時頃出かけて行った。先週までの美鈴なら、誰かと会うために出かけていく夫を恨めし気に見送る だけだったのだが、この日は自分も出かけようと思っていたため、いつもの ように夫に声を掛けることさえ忘れて、自分の部屋での化粧や衣装選びに 集中していた。             ******いつものように休日に妻を家に残し、意気揚々と真知子との待ち合わせ場所 へと出かけるため、家を出た知紘は無意識のうちに❔マークが脳内を駆け巡 った。『アッ……』そのものの正体にしばらくしてから気付いた。 美鈴の『いってらっしゃい』がなかったことに。 とうとう、あからさまに怒りを顕わに出し始めたのだろうか?  帰宅したら、確かめてみよう、そう思った。 まさかの、自分の存在が妻の中で小さくなってしまっているなどと…… スルーされたなどと思いもしない、おめでたい知紘だった。
last updateLast Updated : 2025-03-14
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◇お洒落を楽しむ 第14話

14 それから1時間後、美鈴も自宅からそう遠くはないショッピングモールへと 軽やかな足取りで向かった。 独身の頃は常時塗っていたマニュキュア。 早速ピンクパールのマニュキュアをショッピングモールに入ってる専門店で購入。 行ったついでにファンデーションも今使っているのと同じメーカーのもので 少しグレードの高いのをGet. そしてネイルに合わせて顔にもパールを少し入れようと思い、 白いパールの粉を買ってみた。 ここ数年サンダルからも遠ざかっているので、好みのサンダルを 見つけたこともあり、それも買った。知紘のことではなくて、自分磨きのための買い物をすることに集中して 過ごした時間は、美鈴の気持ちを軽やかにした。買い物から帰ると、疲れたので横になり少し寝た。どうせ夕飯時に夫は帰ってこないだろうから、という気楽さがあり 起きたら22時にもなっていた。 モールで自分用に買ってきたバーガーとサラダにコーヒーを淹れて食べ、 しばらくファッション雑誌に目を通したあと、入浴を済ませた。 その間もずっと美鈴の頭の中にあったのは、どんな夏服を 買おうかということだった。 それ《自分磨きのための検討》は部屋に戻ったあとも延々続き、日曜はたくさんの客で混みやすいため、月曜に美容院へ行き髪型を変えようという試みだった。 節約して美容院へも最近は行ってなかったのだ。 スキンケア―のクリームやシャンプー&リンスもいいものに変えて、 スベスベお肌とキューティクルのできるヘアーにするべく頑張ろうと決めた。 こんなふうに自分磨きに集中していたため、午前様になっても帰らぬ 夫のことなどは気にならず、日が変わる頃本格的な就寝の体制に入った。 まどろみつつある美鈴の頭にあったのは、一通り頑張った成果が出た頃、 綺羅々に会いに行きたいな……ということだった。
last updateLast Updated : 2025-03-15
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◇攻防戦 第15話

15その後うっかり、いつものように夫を玄関ホールに立ち見送るということを せずに、出ていく夫を意識せず奥の部屋から『いってらっしゃい』と声掛けしてしまったことがあり、美鈴はあとでそのことに気付いた。 これまでずっと夫が出かけるときは必ず玄関ホールまで行き見送ってきた。 それは心の表れであった。大好きな夫だから、自然とそういうふるまいになっていたのだ。 最初の見送り損ねた日の翌日、夫からそのことについての非難はなかった。真知子のことで頭がいっぱいだから、妻の見送りなぞ必要ないし、 気にもしていないのだろう。……ということで、その後、夫が出掛けるときも帰宅したときも 美鈴は奥の部屋から声を掛けるようになった。そう、自分らしく無理なく本音で生きていこうと思ったのだ。しかしながら、心の片隅では『最近はお見送りがなくなって寂しいなぁ』くらい言ってくれれば、と思わなくもない自分もいた。 最近、金曜と土曜は必ずと言っていいほど知紘の帰宅が午前様になっている。なのに、今週の土曜は珍しくほろ酔い加減ではあるけれど 24時前に帰ってきた。 私はちょうどベッドに入り、掛け布団を掛けて寝るところだった。知紘が寝室に入り私のベッドに腰掛けて私の両肩に手を掛けて 『ただいまぁ~……。あっ、いい香り~だぁ~』 と言い抱きしめてこようとする気配を感じ、私は肩から彼の手を剥がし、 すぐさま声を掛けた。 「汗してるみたいだから、先にシャワーしたほうがいいわよ」「そだね、シャワー行ってくるー」 そう言い置き、彼は浴室へと向かった。 『いい香り……』分かったんだ。素敵な女性になるために行動したひとつのことはちゃんと効果があったのだ。香水ほど強烈な香りじゃないけど香りのついたボディクリーム、 効果ありだったことが確認できた。 私はベッドの上で『よっしゃぁ~』のパフォーマンスをしたあと すぐさま、頭から布団を被り眠ることにした。 うとうとしかけた頃、知紘が寝室に戻ってきた。『さっぱりしたぁ~』と言い、腰掛けたのが気配で分かる。少しして「美鈴……」と声を掛けられる。 そして掛け布団が捲られた。やばいっ、貞操の危機が《危機じゃんっ》……。 真知子とあんたを共有する趣味はないんだよっ。「う~ん、チ―ちゃん、私インフルエンザにかかってるかもしれ
last updateLast Updated : 2025-03-16
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◇貞操の危機 第16話

16以前、職場にいる30代の既婚者に聞いた話では、酔っぱらって帰り、 寝ている奥さんの……寝込みを襲ったことがあると聞いたことがあるのだ が、知紘がそこまでの鬼畜じゃなくてよかった。ひとまず私の貞操は守られた。土曜日深夜のとっさのインフル発言。 本来なら夫の目を気にして日曜日はベッドから抜け出せないところだが……。知紘は相も変わらずトットコと、誰かさんとの逢瀬のために出掛けて行ったので、美鈴は大手を振って? いつも通り自由に自宅警備員を堪能することができた。自宅警備員と言っても家事のみの生活ではない。知紘の怪しい動きに振り回されて心乱され、ここのところはそれどころでは なかったのだが美鈴は元々芸大に進学して、就職活動でイラストレーターが 集まる会社に入り、結婚を機に退職し、現在ではフリーでクリエイターが 登録しているサイトで仕事を受けている。フリーなので月収はマチマチである。 フリーで10万円以上稼いだことは今のところない。そう、仕事のことをぼちぼち考えないとなぁ~と切実に思うのだった。今はいいけど、もしもシングルで生きていくとするなら イラストだけでは食べていけない。自分自身を輝かせたあとは、今後の生活設計も考えていかなければならない。知紘に離婚を言い出されてはいないが、この調子だと早晩 言い出してくると考えるのが妥当だろうから。
last updateLast Updated : 2025-03-17
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◇知紘と美鈴の日常 第17話

17   知紘はなんとなくだけど、近頃美鈴の纏う空気感が変わったように 思うのだった。何気に感じた違和感……なんだぁ?  真知子にばかり気を取られていたのですぐには分からずにいた。だが、いつもと何かが違っているような気がするのだ。そして、鈍感な自分はその違和感の正体である『いってらっしゃい』との 見送りが無くなったことに、何かがおかしいと感じた日から2日過ぎて 気が付いた。 美鈴は俺が会社に行くとき、これまでなら必ず玄関ホールまで出てきて 『いってらっしゃい』と言って見送くってくれていた。改めて翌日、意識して確認してみた。リビングから聞こえる『いってらっしゃい』の声掛けに、3日目の朝、 今度こそ違和感の正体にはっきりと気付いた。妻が見送りに出てこなくなったことに。 今朝の『いってらっしゃい』の声は明るいものだったが、今まで 自分に掛けられていたような愛の籠ったものではなかった。それとともに、よくよく振り返ってみれば昨夜の夕飯の献立も 今朝の朝食の中身も、心が籠ってないように感じられるものだった。いつもの手作りだったはずのサバの味噌煮は、シンクに缶詰の缶が 転がっていて……なんとサバ味噌煮の缶だった。なんだかいつもと少し旨味がちがうなぁ~などと思っていたらこ のザマだった。昨夜の味噌汁ももしかするとインスタントだったかもしれない。 朝、今まで目にしたことのないインスタントみそ汁の袋が置いてあったから。 知紘がそういったことに気付いた日から以後、昔のように手作りされた献立は ほぼほぼ食卓に上がることはなくなってしまった。
last updateLast Updated : 2025-03-17
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◇絵里の婚活 第18話

18  美鈴より5才ほど若い田中真知子に夢中で何も見えてなかった知紘が、 ここにきてようやく妻の言動に変化がみられることに気付いた頃…… 美鈴は1年前に会ったきりの高校時代の友人、原口絵里に会っていた。現在美鈴も絵里も29才。絵里は今も独身で、26才~28才までの2年間一つ年下の男性と 付き合っていた。 相手の男性は頭のよい穏やかな人だと話してくれたことがある。28才になってから絵里は、その彼に何度か30才になるまでには子供が ほしいなどと、結婚を促すような話をほのめかしてたりしていたのだが、 彼からはその都度結婚話をはぐらかされ、結婚話は頓挫しているのだと…… 昨年会った時に、美鈴はここまでの話を聞いていた。 自分は絵里が苦悩していた頃、結婚してからずっとラブラブの知紘との 幸せな生活に浸っていて、今一つ気の毒だとは思うものの、彼女の件 《不幸話》に対して他人事でしかなかった。 その後、絵里の婚活はどうなっているのだろう。恋人と破局したとは聞いていないので、おそらく結婚の話をひとまず 先延ばしにして付き合っているのだろう。 絵里の恋人との結婚について、そんなふうに考えつつ、あぁ~私は前回絵里と  会った時からなんて自分の生活が180度変わってしまったのだろうと思うに  つけ、去年の12月に戻りたいと思ってしまうのだった。 今日は絵里の恋人との話を聞いたあとで、少しは自分の痛い話も聞いて もらおうかな、などと思いながら美鈴は待ち合わせ場所に向かった。 絵里とは行きつけのカフェで15時から待ち合わせをした。 私のほうが先に着き、席を取り待っていた。 スマホでYoutubeの画面の中の文字を追いながら時々、入り口方向に 目を向けまだ絵里が来てないことを確認。 そのあとも何度か入り口方向を見てYoutubeの文字に目を落とす。そしてまた入り口に……と顔を上げると、目の前に笑顔の絵里の姿があった。
last updateLast Updated : 2025-03-18
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◇舐められている 第19話

19「ごめんね、お待たせ~」「大丈夫よんっ」「わっ、美鈴痩せたね~。幸せ細りなんて羨ましい限り」「そんなこともないけど……」「何年振り?」「1年振りになるのかな」 久しぶりに会う絵里の表情は殊の外明るいものだった。「それにしても暑いよね」 そう言って椅子に座った絵里は私の飲み物に視線を向けると……。「あっ、私も美鈴と同《おんな》じのにしよう」 そう言うとアイスオーレを注文した。 「絵里、雰囲気変わったね」「でしょ?」否定しないんだ。彼とはその後上手くいってるんだ? と訊いてみたい ところだけど、ひとまず私は堪えた。「うん、明るくなっていい感じよ」「去年会った時はかなり落ち込んでたからね。 早速っていうか、あの彼との話の続きなんだけど……」 「何か進展あった?」「それが……」 そう言うと絵里は息を大きく吸ってゆっくりと吐いた。 「2~3回だったかな、それとなく結婚のことを考えてくれないかな、 みたいな話を持ち出したのは。あぁ、ここまでの話は前回もしてたよね」 「うん、はぐらかされてばかりって聞いてたね」「彼の態度はどういうところから来てるんだろうってずっと考えてたの。 結婚の話題が出るたびに有耶無耶にする態度……って。 いろいろな理由が絡みあってるんだとしても、一番根っこにあるのは私なら、待たせておけるっていう彼の中にある自信っていうのかな。 それか最悪、彼の結婚適齢期ギリギリまで私を待たせている間にもっと良い 女性が現れたら乗り換えるっていう可能性を潜在的に持っているかもしれないって……いうことなのかな、とか。 まぁあれから、いろいろ分析してみたんだけど」「……」「言い方は悪いけど、私の存在なんてその程度で、ある意味舐められてるんだなっていうところに辿り着き……そしたらあんなに彼に対して結婚しようよって思ってた気持ちがス―っと引いていったのよね」 「そうね、話し合いの土俵にも乗ってこないというのは酷いよね。 誠意がないかな」「それでね、彼に期待するのは止めて婚活でも始めてみようかなんて考えて、真剣にどこかの結婚相談所に申し込みしてみようかといろいろ探してた時に……」 「……」
last updateLast Updated : 2025-03-18
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◇こちらから振ったわ 第20話

20  「その頃、ちょうど会社が推奨する勉強会に参加してたんだけど、同じように参加してきた男性と話す機会があって意気投合したのよね。それで食事を何度か一緒にするようになって、仕事に対してすごく熱心な人でね、話してると私も刺激受けたり、趣味の話や雑談なんかも話が合ってどんどん惹かれていったの」「きゃあ~、絵里ちゃん、まさかのまさかの恋バナになってくの?」「食事して3度目に交際を申し込まれたの」絵里はその彼から……ちゃんと結婚のことを考えてのことだから真剣に考えてくれないだろうかと、熱烈なアプローチを受けることになったそうな。友人の恋バナだというのに、聞いてるだけで私もテンション上がってウキウキ気分になる。自分のことでもないのに、ほんとっ、ドキドキから始まる恋バナっていつ聞いてもテンションあがるぅ~。「それで、そのあとどうなったの?」「その男性《ひと》川上さんっていうんだけど、川上さんには少し待っててもらって、付き合ってる彼と別れてから返事したの」「私なんて、そういうシチュエーション経験したことないから、どうなったのかすごく気になるー」「私だって振られたことはあっても断るなんて初めてのことでどうしようかと思ったわ。電話でとも思ったけど彼の私物がまだ私の部屋にあったしね。それも返さなきゃだし、話し合いで切れるような男性《ひと》でもないので会って話したの」「結婚についての話はしたの?」「もう少し先で考えてたって言ってた。でも私が話を向けた時には何も言ってくれなかったのだから、本当かどうかなんて分かんないわ」「そうだよね。それで別れ話はスムーズにいった?」「うん、私たちの出会いの時の話とか、一緒に旅行した時の話なんかして穏やかに別れたの。縁がなかったよねって」「縁がなかったって、よく言うわよね。自分が縁をぶち壊しといてさ」
last updateLast Updated : 2025-03-19
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