All Chapters of 義妹とその母によるNTRのエチュード: Chapter 11 - Chapter 20

42 Chapters

青春と恋のワルツ6

 俺たちは家の近くのスーパーに寄って、とんかつの材料になる豚肉を買った。  スーパーを出ると秋の空がかすかに夕暮れを集め始めていた。茉莉が買い物袋を手に提げていたので「俺が持つよ」と手を差し出す。  茉莉はその手を下げ、買い物袋を反対の手に持ち替えた。  開いた手で、俺の差し出した手をすっと握る。  それからお互いに言葉は何一つ発することはなかった。  家までの帰り道はすぐそこだった。  その角を右に曲がると俺たちの家だ。  俺はその手を引くようにまっすぐと道を進む。家から少しでも遠回りするためにでたらめな方向へ進み、夕日の差し込む見晴らしのいい公園にやって来た。  周りには誰もいない。つないだ手と手の間に汗がにじむ。  ――思いを決する。負けたってかまわない。このまま想いを押し殺すことのほうが無理だった。  最悪、冗談で言ってみただけだと言えば、お互い笑って忘れことも出来るだろう……多分。  枯れ枝の樹が茜色の夕日を浴びてその影を長く伸ばし、冷たい風が赤茶色に染まった木の葉を引きずりながらカサカサと音を立てる。  まるで寒さから身を護ろうとするみたいに小さく縮こまりながらつないだ手をぎゅっとさらに深く握る。  その手に互いに力が入る。  本当は言葉なんて必要なかった。  もう俺の気持ちは十分すぎるほどに茉莉に伝わっているという自覚はあった。  だけど、それだけではだめなのだ。  その想いを言葉にするにはあまりにも犠牲を強いられるわけだが、その犠牲なくして前には進めないことも知っている。  茉莉に、自分のことを受け入れてもらえる自信がないわけではない。だけど、その手から伝わる茉莉の手のひらの温度が、なぜか俺を一層不安に駆り立てる。  そして、勇気を振り絞る。 「なあ、俺は正直恋人のふりをするのがしんどくなってきたんだよな」  周りくどい言い方だ。だけど、今すぐ直球をぶつける勇気もまた、無い。 「うん、それはなんとなくわかってた。実はわたしだって少しはそう思うことだってある」  大丈夫、茉莉のその言い片なら脈はある。 「――だ、」  緊張しすぎたせいで上ずった声を出してしまう。一度深呼吸をしてから、もう一度言いなおす。 「だったらさ、本当の恋人になろうぜ」 「それ、本気で言ってる?」  ――冗談だよ。だなんて
last updateLast Updated : 2025-03-14
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背徳と懊悩のラプソディ

  わたしにはパパがいない。はじめからいないのだ。遺伝子的に言えばいないことはないのだろうけれど、正確に言うならだれがパパなのかもわからない。 幼いころのわたしにとってそれは普通のことで、思春期を迎えたわたしにとってそれはコンプレックスでしかなかった。 時折『父のようなもの』を確認することはあった。家に帰ると母と親しくしている男性が家にいて、わたしを見るなり優しい言葉をかけてくれた。時にはお土産を持ってきたり、お小遣いをくれたりもした。 ある時はお酒を飲んで暴れたり、ママを殴ったり、ママが仕事をして稼いできたお金を持ってギャンブルをした。 ギャンブルをしてお金が無くなると、ときどきわたしの体を触って来る。そうなるとママは激しく怒った。そうなると男の人はまたママを殴り、そしてある日突然いなくなる。 なぜうちにパパがいないのか。思春期ともなればそれがわからなくもない。 そして一度も定職に就いたこともないママが、どうやってわたしをこの年まで育ててきたのかだってわかるようになってきた。 もちろんわたしはママを愛している。 これまで育ててくれたママを尊敬している。 でも、中学生になると友達はわたしのママを馬鹿にするのだ。 バイタ、アバズレ、娼婦。 なんと言われようとわたしはママのことを嫌いになんかならなかった。嫌いになるわけがない。そんな苦労をするのは、わたしのことを愛してくれているから。わたしを育てるためにママが頑張ってきたという話なのだ。 何の苦労もしないで、パパとママの両方がいて、楽をして過ごしてきたガキにママをあざける資格などない。 わたしは友達を殴り、わたしには友達がいなくなった。 問題ない。わたしにはママがいてくれるのだから。 ママには幸せになってほしい。 発育の進んだわたしに性的な暴力をふるおうとした者もいた。その時の母は強かった。勇ましく怒りに震え、男を追い出し、町を離れたりもした。 ある日、ママが直人さんを連れてきた。今までとはまるで違う人。誠実で、まじめで、一生懸命働く人。ママの仕事のことを知って、やめるように説得した。お金がないからと言い訳するママに「僕が面倒を見る」と言ってくれた。「結婚しよう」と言ってくれた。ママは、ようやく幸せになれるのだ。わたしはママが今までどれだけつらい思いをしてわたしを養ってきたのかを知っている。だから、ママには何として
last updateLast Updated : 2025-03-18
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義妹とその母によるエチュード1

 寝室の壁に耳をあてて息をひそめると、ギイギイとベッドの軋む音が聞こえてくる。時折響く、喘ぐような声に罪悪感と共に劣等感が高まる。  この部屋の壁から、少し離れているはずの父の部屋の物音が聞こえてくることに気づいたのは最近のことだ。  父が再婚し、我が家に新しい母が来たことがきっかけだ。  これまでは父の部屋はいつも静かでこんな音に気づくことなんてなかった。  その音の正体に罪悪感を感じた俺は決して壁に耳を当てるようなことはしなかった。  それなのに今となっては、暇さえあれば壁に耳をあててティッシュを握りしめている日々だ。  俺の脳みそは所詮ちんこでできている。ちんこでできた脳はその衝動を我慢することができないのだ。  いや、我慢などする必要があるだろうか。  俺の気持ちを踏みにじって楽しそうにしているあいつらに何を遠慮することなんてあるだろうか。  茉莉は俺と『もっと早くに出会いたかった』と言った。その言葉を一瞬だけ前向きな意見として受け取った自分がいた。タイミングさえ違えば茉莉が俺のことを好きになり、ふたりは付き合うことができた。俺のことに対して好意を抱いている。などと都合のいい言葉を探し出して慰めてみたりした。  だけどそれを返せば、もう変えることのできない出会い方をしたのだから、ふたりが愛し合うことはないという〝離別〟の宣言だ。  ならば俺はどうにかして茉莉のことをあきらめなければならない。嫌いにならなければならない。だからそれを免罪符にして、自身の内に抱いた茉莉の神聖を穢す必要があった。  壁に耳をあて、薄汚い淫売の茉莉を想像し、そしてその処理が終わると同時に激しい嫌悪感が襲う。どうあがいても茉莉のことを嫌いになんてなれない。  いまだに好きで好きで、どうしようもなく好きで仕方なくて、それでも彼女から離れて暮らすことも出来なくて、いろんなことをうやむやにしようと必死で彼女を悪者にしようとしている自分のことがひたすら嫌いになる。  ――こんなんじゃだめだ。  俺はもう一度心を引き締めなおし、心の奥底で怒りの炎を燃やす。  茉莉のことを、ちゃんと嫌いになるまで憎む必要がある。  義母の芹香さんはまだ家に帰ってこない。居酒屋で夜遅くまで働いているのだから仕方がないにしても最近は特に遅くなった。  おかげであいつらはやりたい
last updateLast Updated : 2025-03-18
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義妹とその母によるエチュード2

 翌朝。いつもの通りに時間ギリギリに起きてリビングに降りる。茉莉たちが来てからというもの随分と朝の生活がだらしなくなった。 「ごめんアオ。今日はお弁当作れてないの。ちょっと熱あるみたい」  朝、パジャマ姿のままで俺のトーストとコーヒーを用意しながら茉莉は言った。  顔全体が少し赤らんでいるのがわかる。 「だいじょうぶか? いいよそんなこと。朝食くらい自分で作れるから。ちゃんと休んでおけよ」 「うん、ありがと。まかせた」  ふらつく足取りで二階へと上がる途中で一度振り返り、「あ、今日は学校休むから」とつぶやいた。 「ああ、わかった。担任には俺から伝えておく」  担任の須藤は俺たちが兄妹になり一緒に住んでいることも知っているし、そのことをクラスの皆には秘密にしていることも把握している。  そう言えば、父も食卓にはいない。もしかすると父もまた熱を出して寝込んでいるのかもしれないな。どっちがどっちに風邪をうつしたのかは知らないが、きっとそういうことだろう。  学校に行き、昼休みの時間。茉莉の弁当はないからコンビニで安い菓子パンを買ってきた。  鞄から取り出して食べようとしたときに斎藤さんが話しかけてきた。 「ねえ、折田君。お昼、一緒しようよ」 「え?」 「だってさ、今日茉莉いないし。あたしひとりぼっちなんだよ」 「そりゃあそうだろうけど、だからって」 「君、茉莉の彼氏でしょ。茉莉が風邪で寝込んでいるんならあんたが代わりにフォローしなさいよ」 「どう言う理屈だよ」 「つべこべいわないの」  斎藤さんは俺の腕を引っ張り半ば強引に連れ去る。新校舎と旧校舎をつなぐ渡り廊下の下のひとけのないところに連れてくる。おそらく茉莉たちはいつもここで食事をとっているんだろう。  当然ながら会話は弾まない。斎藤さんは華やかな弁当をつつきながら、その横で無言のまま菓子パンにかじりつく俺を斎藤さんが見つめる。 「なんか、わびしいもん食ってるね」 「今日は茉莉がいないからな。でも、茉莉と付き合う前はいつもこんな飯しか食ってなかったし、別に大した問題じゃないよ」 「ふーん、そーなんだ。あたし、茉莉と付き合う前の折田君なんて全然気にしていなかったから知らなかったよ」 「ああ、いや……まあそれはわかる話なんだけどさ。俺なんてクラスで目立つような奴じゃないわ
last updateLast Updated : 2025-04-09
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義妹とその母によるエチュード3

 放課後にバイトに行き、終わらせて店を出たのは夕方過ぎだ。今年になって初めての寒波がやってきているらしく、突き刺すような冷気が油断していた薄手のナイロンパーカの隙間から入り込み、思わずぶるっと震えてしまう。  シンとした空気の中で靄のかかった満月が煌々と街灯の少ない夜道を照らしている。  こんなに寒い夜だというのにもかかわらず、店を出た少し先に、コートも羽織らず薄手のニット一枚にミニスカートという俺よりもはるかに寒そうな服装の女性の姿が見えた。俺の存在に気づき迷うふうでもなく近づいてくる姿はまるで寒空の下ずっと俺のことを待ち伏せしていた風でもある。  事実そうなのかもしれない。彼女は俺に近づくなり「あ、蒼君だ。偶然」と白々しく言った。芹香さんにはあらかじめ、俺がここでバイトをしていることを伝えてあったはずだ。 「芹香さん。今から仕事ですか?」  彼女は居酒屋で働いているらしくて、いつも出勤は夜になってからだ。最近は特に遅く明け方まで帰ってこないので俺はあまり会う機会がない。 「ううん。今日はお仕事はお休みなの。今から帰ろうかと思ったんだけど、今日は茉莉が寝込んでいるから夕ご飯がないでしょ。それで……」  ――なるほど、それで今日は外食でもしようと誘いに来たのか。父もどこかにいるのだろうかとあたりを見渡す。 「あれ、芹香さん一人ですか?」 「うん、そうよ。蒼君は夕食、どうするつもりなの?」  ――あれ? もしかしてこの流れ、俺は芹香さんと二人に食事に行くという話なのか? 「いや、俺は帰りにカップ麺でも買って帰ろうかと思っていて……」 「ああ、いいわねカップ麺。あたしもそうしよっかな」  芹香さんは無邪気な表情でそういった。やはりせいぜい二十台としか見えない。 「ところで蒼君。もう茉莉には今から帰るって連絡は入れたの?」 「いや、入れてないです。今日は食事の用意もないので特に入れる必要もないかなって。ゆっくり寝かしておいた方がいいかなと思いまして」 「あら、それはダメよ。たとえ食事の準備がなくても、帰る前には事前に連絡しておかないと、ふたりが絡み合っている最中に遭遇しちゃうかもしれないでしょ」 「――え?」  頭の中が真っ白になった。この人は何を言っているのだろうか。それではまるで…… 「あら、もしかしてあたしが知らないとでも思
last updateLast Updated : 2025-04-09
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義妹とその母によるエチュード4

「蒼君はさあ。茉莉たちの関係にはもう気づいたんでしょ?」  素直に答えていいものか迷うところもあった。しかし、これまでの口ぶりから芹香さん自身、何もかも知っていて、そのうえで俺をこんなところに呼び出したのだろうし、知らないふりも出来ない。 「つまりそれは、俺の父が不倫をしているっていうことですか?」  そんな言葉に、芹香さんは少し意外な返事をした。 「不倫、不倫かあ。そういう言い方はあまり好きじゃないかな。それに、蒼君は今、『直人君が不倫』をしたと言ったでしょう? どのみち不倫は一人でするものじゃあないのに、まるで直人さんだけが悪くて、茉莉には非がないっていう言い方」 「いや、それはその……」 「言いたいことはわかるわ。茉莉の悪に対して、母親であるあたしにそれを突きつけるべきではないって思ったんでしょ? でもね、直人君はあたしの旦那さんでさ、あたしが自分の意志で好きだと選んだ人なの。それに比べて茉莉は自分で選んで生まれてきた子じゃあないわ。もちろん、自分の行為が招いた結果で生まれてきた子ではあるのだけれど」 「そんな言い方は……」 「もちろん、あたしだって茉莉のことが嫌いなわけではないわ。自分の娘なんだし、大切に思っている。あたしが言いたいのはそういうことではなくて、蒼君にとっての『身内』という対象が直人さんだけなのはあまり喜べないわね。茉莉だってあたしだって、今は全員身内なのよ。家族なんだから」 「すいません」 「でも嬉しいわ。それだけ直人君が茉莉のことを大切に思ってくれているからなんだから。  でもね、直人君のことだって、大切な家族なんだからさ、そんなに悪く言うのはやめてあげてね」 「そうは言いますが、その……芹香さんは、ふたりの不倫を認めているんですか?」 「そう、それね。不倫。あたしはさ、不倫という言葉があまり好きじゃないのね。だって不倫って、『倫理に反する』っていう意味でしょ? その点で言えば、直人さんたちの考えは、倫理に反していないもの」 「どういう意味ですか? それはその……芹香さんと父がまだ正式に入籍していないから、法的には不倫に該当しない、自由恋愛だ。という意味でしょうか?」 「あはあ、なるほどね。そういやまだ入籍していないからそうともとれるわけだ。でもさ、あたしが言っているのはそういう意味ではないわ」 「と、い
last updateLast Updated : 2025-04-09
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義妹とその母によるエチュード5

「俺に、できますかね」  そんな言葉の裏には、当然君ならできるというような励ましの言葉を期待していたし、当然もらえると思っていた。だけど…… 「たぶん、今の蒼君には無理ね」  芹香さんは厳しい言葉を言い放つ。 「あ、ええっと」 「じゃああえて聞くわね。蒼君は直人君に何だったら勝てるの? 包容力だって経済力だって足元にも及ばないわ。強いて言えば若さかしらね。でも若さっていうのは強みかな? 経験の低さを物語っているだけじゃないの? それに茉莉はそれなりに経験を積んでいるわ。蒼君はどうかしら? 茉莉を寝取ろうとしたところで、蒼君のテクニックで満足できるかしら? ふふふ、厳しいことを言ってごめんなさいんね。でも、寝取るということはそういうことなのよ。蒼君、そういう経験はあるの?」  立て続けに浴びせられる辛辣な言葉に心はすでに折れそうになっていた。俺に勝てる要素なんてない。それに俺は童貞だ。壁に耳をあてて遠くの茉莉の声に一人自慰をすることが関の山の情けない人間だ。 「俺には……」  自信を無くしかけてうつむく俺を芹香さんは優しく抱きしめてくれた。 「だいじょうぶよ。だいじょうぶ。誰だって初めから上手にできるわけじゃないわ。安心して、あたしがちゃんと教えてあげるから」  言っている意味が解らなかった。いや、それは嘘だ。言っている意味が解らないことにした。わからないから、不可抗力としてそうなってしまったのだと自分自身に言い訳をするためだ。俺の頭の中を占めているちんこがそうささやいたのだ。  だから俺は、自分のパンツの中に滑り込んでくる芹香さんの手を振り払おうとはしなかった。『騙された』『そんなつもりはなかった』を言い訳にできるようにあえて遠くを見つめ、されるがままにその手を受け入れた。  芹香さんは下着の中で俺のものを握り軽く上下に動かす。ものの数分もしないうちに我慢の限界を迎えた俺は下着の中に、芹香さんの手の上に精液を勢いよく放出してしまった。 「あらあら、さすがにこんなじゃあ、茉莉を満足させてあげることはできないわよ」 「す、すいません……」 「いいのよ。誰だって初めからうまくできるわけじゃないんだから」  芹香さんは俺をベッドの上に押し倒し、精液でべとべとになってしまった下着をずり降ろした。そして枕元のティッシュを数枚抜き取り俺の下半身
last updateLast Updated : 2025-04-09
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義妹とその母によるエチュード6

 アルバイトが終わる時間が近づき、気持ちがそわそわとしてくる。いつもよりもいくぶん機敏に片付けの作業をこなし、終業時間と同時に職場を離れる。  外の空気は冷たく気持ちが引き締まる。同時に股間のそれも小さく縮こまっていることに愉快さを覚える。  芹香さんからのメールで『カップ麺が食べたい』というメッセージに従いコンビニに立ち寄る。芹香さんはカップ麺が好きだ。それは俺だって同じ。  家に帰れば茉莉が手の込んだ美味しい料理を作って待ってくれているのだが、決してそれを不服に思っているわけではない。しかし、茉莉がせっかく手間暇をかけて造っている料理があるにもかかわらず、二人でこっそりと食べるカップ麺には背徳的な美味しさがある。  地図アプリを片手に芹香さんから指示されたマンションの一室に向かう。エレベータで四階の部屋に向かい、ドアチャイムを鳴らす。  ドアは内側から開けられ、中から伸びてきた芹香さんの手が夜風で冷たくなっている俺の手首をぐっとつかみ、部屋の中へと引き込む。  ドアがバタンと閉じられ、それと同時に彼女は俺の背中をドアへと押し付ける。すぐさま唇を重ね舌を絡める。芹香さんは両手で俺の頭部を左右から挟み込むように固定する。冷たくなっていた耳に彼女の手のひらの温かさがとけあう。  彼女の唇が俺の耳の裏側へと回り込む。這う舌先にくすぐったさを感じながらも玄関先で立ったままの俺の下着の中に芹香さんの指先が忍び込む。  さっきまであんなに小さく縮こまっていたはずの性器がいつのまにか驚くほどに熱をおびていて、彼女の手の動きに連動するように痙攣した。  コンビニで買ってきたカップ麺を玄関先の三和土に置き、靴を脱ぎながら今度は俺が芹香さんを玄関先の廊下に押し倒す。  理性ならとっくに失われてしまっている。今更ブレーキなんて聞くはずもなく、玄関先の冷たい廊下の上で二人は全裸になって体を重ねた。  その日の一回戦目を玄関先で終え、少しの間そのままになっていたというのにどちらからともなく急に笑いが起き、恥ずかしくなりながら簡単に服を着た。薄着のままで芹香さんがお湯を沸かし、俺は暖房の効いたワンルームの部屋で大きなベッドの横にあるにしてはアンバランスなこたつに入って待つ。  二人でカップ麺にお湯を注ぎ、互いに三分すら待つこともなく食べ始めた。  俺たちの会話の
last updateLast Updated : 2025-04-09
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後悔と失楽のハーモニー1

 どうやら直人君は娘の茉莉に寝取られてしまったらしい。  しかし、考えてもみればそれは必然だったと言えるかもしれない。  何しろアタシのことをずっと好きだったとか甘いことを考えている男と、あたしの遺伝子を引いた紛れもないアバズレの娘だ。そうならない保証なんてどこにもなかったし、そもそもあたしの方に原因があったことくらい気づいていないわけでもない。  今までの男の中にも、茉莉に手を出そうとした男は何人もいた。アタシはそれに気づくたびに烈火のごとく怒り、男を遠ざけた。誰よりも大切な茉莉を護りたかったからだ。  そんな茉莉ももう十六歳で、自分のすることは自分自身で責任を持てる歳だ。  それに、今回ばかりは茉莉の方から手を出したのだと考えられなくもない。ずっと気になっていたのだ。わが娘ながら、直人君を見る時の眼がメスの眼になっていることを。  だけど、あたしはそれを不快には思っていなかった。むしろ、ようやく一人前の女になってくれたのだと安心する部分もあったのだ。  だからと言って、直人君を娘にとられたままでいいと思っていたわけでもない。  娘であると同時に、ライバルでもあるというこの状況に、少しだけ昂る自分があった。  直人君と出会ったのは高校生のころ。ちょうど、今の茉莉と蒼君の年のころだ。当時あたしは直人君のことが好きで、いつも遠くからじっと眺めてばかりいた。ある日親友が直人君のことが好きだと言った。 「応援するよ」 それが、あたしにとって精いっぱいの言葉だった。 友人と直人君はとてもお似合いの二人だった。ふたりとも学校の成績も優秀で、社交的で誰からも愛される人種の人たちだった。 友人があたしに対して仲良くしてくれたのは今になっても不思議だ。誰にでも分け隔てのない彼女が、クラスでひとり浮いていたあたしにも声を掛けてくれただけなのかもしれない。彼女にはたくさんの友達の一人。でも、わたしにとってはたった一人の友達だったから親友だと思っている。 だけど、クラスでも成績がトップの二人の会話にはうまく入れないことが多かった。進学もあたしなんかじゃどう足掻いたって入れないような大学を志望している。そうなれば自然と離れ離れになるわけだし、あたしが直人君をあきらめない理由なんてどこにもなかったのだ。 友人と直人君は恋人同士になり、あたしは直人君の恋人の親
last updateLast Updated : 2025-04-09
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後悔と失楽のハーモニー2

呼び出しを受けて、部屋を探す。 あたしが仕事を受ける職場のシステムでは、最近ホテルを使わなくなった。ワンルームの賃貸アパートを会社が所有していて、会社の管理システムで空いている部屋をさがす。ホテル代がかからないだけで料金も安くなるから不況でもお客さんを確保しやすいというわけだ。  待ち合わせ場所にいたのは見覚えのある顔。 「なーおーと君。ひさしぶり!」  驚かしやろうと声を掛け、一方直人君のほうは「も、もしかして芹香?」と不安そうに言った。 「久しぶりだねー。なんか、ずいぶんと雰囲気変わったよね」 「そりゃあ、変りもするよ。もう僕だって四十を過ぎているんだ」 「あら、偶然。実はあたしももう四十過ぎなのよ」 「当たり前だよ。僕たちは同級生なんだ。いつまでたっても年は変わらないよ。でも……芹香は昔からあまり変わっていないな。同級生とは思えないよ」 「そりゃあまあ、それなりに努力はしているけどね」  他愛もない会話をしながらも、どこか直人君は落ち着かない様子。 「ねえ、もしかして誰かと待ち合わせ?」 「え、えっと……そうなんだ。ごめん。せっかく積もる話もあるんだけど……」 「そうやって悪くもないのにすぐ謝る癖、相変わらずよね」 「ご、ごめん……」 「ほら、また……。ねえ、待ち合わせの相手ってデリヘル?」 「え、あ、いや……」 「相変わらず分かりやすい。残念だけど、待ち合わせならもう到着しているわよ」 「え?」  直人君はキョロキョロと挙動不審にあたりを見渡す。 「んもう、そうじゃなくて」  両手で直人君の頬を挟み、固定して自分に向ける。 「え、もしかして……」 「今ならまだキャンセルできるよ……直人君。あたしとできる?」  直人君は逡巡した。少しだけうろたえながらに言う。 「でも、そうしたら芹香の収入がなくなるんじゃないか?」 「なによそれ。少し頭に来るんだけど? あたしがほかに仕事なんてもらえないみたいなやつみたいな?」 「ごめん。そういう意味で言ったんじゃないんだ。その……せっかくだし、積もる話でもしないか? こうして再会したわけだしね。その……支払いのことなら気にしなくてもいいよ。話をするだけでも、ちゃんと正規の支払いはするつもりだ」 「わお、気前がいいのね。もしかして今や一流企業のエリートサラリーマン?」
last updateLast Updated : 2025-04-09
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