純伶は微笑んでうなずいた。「いいわ、忙しいなら気にしないで」雅子に別れを告げると、彼女は北条家を後にし、車に乗り込んだ。 道中、24時間営業の薬局の前を通ったとき、彼女は運転手に車を止めるよう指示し、店に入って緊急避妊薬を一箱買った。 昨夜、彼女は弦と共に過ごした。今は排卵期であり、彼も避妊対策を取らなかった。 こんな時に、子供を持つべきではない。 弦の気持ちは定まっておらず、いつ離婚するか分からない。 彼女自身、生まれてから父の愛を感じたことがなかった。その愛の欠如がどんなものかを痛いほど理解しているからこそ、自分の子供に同じ道を歩ませたくなかった。 家に戻ると、純伶は説明書に従い、一粒を取り出してぬるま湯で服用した。 もう一粒は12時間後に服用する必要があるため、彼女は薬の箱をウォーターサーバー横のキャビネットの上に置いた。 その後、二階へ上がり、さっとシャワーを浴びた。ベッドに横になったものの、眠れなかった。心の中は千々に乱れた。 夜十二時近くになって、ようやく弦が帰宅した。彼は客に付き合って少し酒を飲んだ。 スリッパに履き替え、片手でスーツのボタンを外し、脱いでハンガーにかけた。 グラスを手に取り、ウォーターサーバーへ向かったとき、不意に目が鋭くなった。キャビネットの上に置かれた避妊薬が視界に入った。 彼はそれを手に取り、じっと見つめた。 間違いない、避妊薬だった。 残っているのは一粒だけだった。もう一粒はすでに純伶が服用していた。 彼女は、弦の子供を産む気がないのだった。 弦の目つきが次第に冷たくなり、スマホを手に取ると、逸真の番号を押した。 しばらくすると、電話からだらけたような男の声が聞こえてきた。「兄貴、こんな夜中に何の用?」 弦は感情を抑えた声で尋ねた。「女が夫の子供を産みたがらないのは、どういう意味だ?」 半分寝ぼけていた逸真は、反応が一拍遅れ、適当に答えた。「そりゃあ…その女は旦那を愛してないってことだろ」 弦の心が一瞬強く揺さぶられた。そして淡々と答えた。「分かった」 電話を切ると、彼の表情は異様なほど静かだった。だが、手は次第に強く握り締められ、スマホが歪みそうなほどだった。 しばらくして、唇の端から冷たい
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