霧湧村公民館。「仏像はこの箱の中にあるんです」 山形誠が箱の蓋を開けて中身を見せて来た。宝来雅史と月野姫星は一緒に覗き込んだ。「…………」 中を覗き込んだ二人は固まってしまっている。「…… ひょっとして馬鹿には見えない仏像ですか?」 雅史は顔を上げて誠に尋ねた。何故なら箱の中には何も無かったからだ。「へ?」 誠は中を慌てて覗きこんで固まってしまった。「……無いっ!」 少しの間を置いて、誠が反応して慌てだした。箱の中に手を入れてまさぐったりしている。「あれ? あれっ? あれれっ? 昨日は確かに有ったのに……」 一方、姫星は安堵した。雅史が『馬鹿には見えない仏像』とか言い出すから、実際に見えなかった姫星は、馬鹿だとバレテしまうのではないかと危惧したのだ。そして、何気なく見た窓の外の光景に見慣れた物が疾走しているのが写った。「んーーーっ…… ? …… あの車…… まさにぃのじゃない?」 姫星が指差す先の道路には、雅史の車が土煙を上げながら走り去っていく所だった。 仏像を盗んだのは泥棒一味の生き残り木下だった。 木下は山道を登らずに適当なところで脇道に逸れて、遠回りして村に舞い戻っていたのだ。そして、廃農家の家に隠れて村を脱出するチャンスを伺っていた。すると農作業に行こうとしている村人たちが、仏像を公民館に隠したと話しているのを聞いていたのだ。「へ、こちとら。 お宝を頂かないと帰る事ができねぇんだよっ!」 木下はアクセルを踏み込んだ、坂道でならパワーのあるSUVが有利だからだ。このSUVは、村に若い娘とやって来たひょうひょうとした学者の持ち物だったらしい。道に落ちていた(駐車)ので頂いた(盗った)のだ。 キーロックは万能では無い、やり方さえ知っていれば、簡単に開錠出来てしまうのだ。それは元自動車整備工の木下にはお手の物だった。 この国はお人好しの連中ばかりだ。世の中には善人しかいないと思い込んでるらしく簡単に盗める。木下は一人ほくそ笑んだ。 だが、悪運も続かない。横道から出て来たパトカーに小心者の泥棒は動揺してしまい、木下は片輪を側溝に突っ込ませてしまった。「ちっ、ドジった……」 パトカーから降りて来た若い警官が近寄って来る。木下は焦ってしまった。車内検査をされると仏像が見つかってしまう。というか、仏像はジャンパーに包んで助手
ปรับปรุงล่าสุด : 2025-03-18 อ่านเพิ่มเติม