「人間は不安を感じたときに、自分が見えてたものを、自分の恐怖の記憶に置き換えるのさ。 その幻覚を勝手に解釈して霊現象だとしたがるんだ」 雅史は姫星の手を引いて本堂を出ようとしている。今はアプリのおかげで抑えているが、根本的に解決している訳では無いからだ。「…… じゃあ、幽霊なんかいないの?」 姫星は尋ねた。心霊体験をしたという友人を何人も知っているし、自分でも見た……と、思っているからだ。「そういう訳ではないよ。 本人が見たというのなら、きっとそうなんだろうと思うよ? でもね、確証の無い話を、むやみ信じては駄目だということだ」 雅史は合理的に考える人間だが、他人の信仰まで否定するつもりも小馬鹿にするつもりも無い。 自分に影響が無ければ、勝手にすれば良い考えているタイプだ。だが、他人に自分の信仰を強要する奴は大嫌いだった。「今は防止されているんで見えなくなったのさ」 雅史は姫星に説明しながら周りを見渡した。何も異常が無いが姫星をここに留めておくのは、危険なのかもしれないと思い始めたのだ。そして残念なことに、ここでも美良の痕跡は無かった。「さあ、寺から移動しよう。どうやらここいら一体に妙な音が出ているようなんだ」 雅史は姫星の手を取り先を促した。本堂から出ても若干の異常周波数が計測できている。だが、雅史は根本的な疑問があった。「しかし…… どうして、こんな高周波や低周波が発生しているんだ?」 雅史と姫星は本堂を出て来た。雅史は手元のタブレットのアプリを見てみた。するとさっきまでメーターを振り切る勢いだった、レベルメーターが平常値に戻っていた。本堂の中だけで謎の周波が発生していたらしいのだ。 原因を探るのに興味を惹かれたが、今は姫星の安全と美良の移動した痕跡の確認が優先した。「ほぉ、謎の異常音ですか……」「恐らく低周波音にやられたんだ。 この村には通常では有り得ない特殊な音が発生しているらしい。 なんだか、異常な高周波音と低周波音に包まれている感じだ」 雅史はタブレットを見ながら言った。「低周波音の影響を受けた脳が、幽霊を創り出していたんだよ」 力丸爺さんは話の途中から付いて行けなくなったが、どうやら姫星は大丈夫だとわかると、手に構えていた杖を元に戻した。「そこでアプリを使って逆送波を送り出して打ち消すようにしたのさ」 手にしたタ
Last Updated : 2025-03-08 Read more