ついに我慢の限界に達した涼は、ドアを開けて一番奥の明かりのついた部屋へ向かった。夜に工事するなんて非常識だろう。まだ騒音を立てているなんて!「奈津美!お前......」言い終わらないうちに、涼は奈津美が脚立に座って、電動ドリルで何かをしているのを見た。部屋にはもう作業員の姿はなかった。ヘッドホンで音楽を聴いている奈津美は、涼が来たことに全く気づいていない。テーブルの上に置いてあるスマホを見つけた涼は、すぐに近づいて再生を停止させた。突然、奈津美の世界は静まり返った。「ブルートゥース、なんで切れたの?」奈津美は不思議そうにヘッドホンを外した。すると、下から涼の声が響いた。「奈津美!降りてこい!」その一言に奈津美は驚き、バランスを崩して脚立ごと後ろに倒れそうになった。それを見た涼はとっさに避けようとしたが、脚立は直撃した。さらに、そばにあったペンキの缶も涼の上に倒れた。涼は全身真っ白になった。「痛っ!」奈津美は痛みで息を呑んだ。腰を押さえて立ち上がると、真っ白になって険しい顔をしている涼が目に入った。「滝......川......奈......津......美!」涼は歯を食いしばった。奈津美が来てから、ろくなことがない。金を失い、プロジェクトを逃し、散々な目に遭っている!奈津美は呪い屋に頼んだんじゃないか?「ごめんなさい......って、勝手に入ってこられた方が悪いんじゃない?」奈津美は当然といった様子で言った。「入る前にノックするものじゃないの?」奈津美のあまりに堂々とした物言いに、涼は頭に血が上り、床を殴りつけた。「先にシャワーでも浴びてきたら?」奈津美は道をあけた。涼は頭からつま先までペンキで真っ白だ。ペンキが乾いてしまうと大変なことになる。涼はすぐに立ち上がり、行く前に奈津美を睨みつけた。奈津美は思わず肩をすくめたが、涼が行ってしまうと、ドアに向かって真ん中の指を立てた。「自業自得よ!」それは!当然の報いだ!部屋に戻ると、涼はスーツの上着を脱ぎ、シャツもズボンも、ついでにスリッパまで窓から投げ捨てた。今、彼の体からは鼻をつくようなペンキの匂いが立ち込めていた。「奈津美......奈津美......」シャワーを浴びなが
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