奈津美だけだ!奈津美だけが、こんなに大胆なことができる。「社長......」田中秘書が入ってきて、「滝川さんが......帰る時に玄関の観葉植物を壊していきました」と言った。「好きにさせておけ」「え?」田中秘書は驚いた。好きにさせておく?涼は口元の血を拭いて、「滝川家へ行って、奈津美を連れて来い。俺の命令だと言って、俺の許可なく、どこへも行くなと言え」と言った。「社長......それはまずいのでは?滝川さんがまた出て行ったら、社長の面目が立ちません」奈津美が出て行った時、社長は滝川さんの荷物を全部捨てた。今度はわざわざ滝川さんを連れ戻しに行くなんて、体裁が悪い。白石さんに知られたら、大変なことになる。「行くと言ったら行け!俺の言葉が聞こえないのか?」「申し訳ありません」田中秘書は慌てて頭を下げた。涼は言った。「奈津美は俺の婚約者だ。俺は婚約者に一緒に住もうと言っているだけだ。何が悪い?」「......何も」「早く行け!三回も言わせるな!」「かしこまりました、社長」田中秘書はすぐにオフィスから出て行った。涼は眉間を揉んだ。その時、口元に痛みを感じた。唇に触れると、奈津美に噛まれたことに気づいた。あの女、犬なのか?すぐ噛みつくなんて。しかし、涼は自分の行動は間違っていないと思った。婚約者にキスをするのは当然だろう?奈津美がこんなことをするのは、彼の気を引くためだ。彼女自分が好きだから、わざわざ怒らせようとしているのだ。きっとそうだ。キスされた奈津美は、きっと喜んでいるだろう。涼はそう考えながら、オフィスの中を歩き回っていた。しばらくして、田中秘書がオフィスに戻ってきた。社長がオフィスの中を歩き回っているのを見て、「社長、滝川家にはもう連絡しました。それで......」と言った。「謝るなら、バラとユリ、どっちがいいと思う?」「え?」田中秘書は理解できなかった。涼は冷淡な顔で、「奈津美にしたことは婚約者としての権利だが、女性の意思に反することは良くない。花束を奈津美に送って、これは......償いだと言え」と言った。「社長、滝川さんはきっと受け取らないと思います......」たかが花束一つで済ませようとするなんて、あまりにも失礼だ!
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