そう言って、奈津美はあらかじめ用意しておいた契約書を美香に渡した。奈津美がすでに準備していたのを見て、美香の顔色は少し悪くなった。奈津美は気にせず、「お母さん、この契約書はもう私が隅々まで確認済みよ。サインするだけでいいわ。7日以内にあの真珠のピアスを私の前に差し出しなさい。7日もあれば、お母さんも真珠のピアスを見つけられるでしょう?」と言った。「もちろん......」美香はそう言ったが、心では震えが止まらなかった。16億円だ!どこでそんな大金を手に入れるんだ?長年滝川家と会社から盗んだお金でさえ、16億円もない!しかし、息子のために、美香は契約書にサインした。契約書を見て、奈津美は満足そうに笑った。美香は「奈津美、ほら、契約書にサインしたわ。あなたを騙したりしないから、早く健一を助けてちょうだい。黒川様のところで何かあったら......私、どうすればいいのよ!」と言った。美香は焦っていた。あと半日もすれば帝国ホテルでの誕生日パーティーが始まるというのに、彼女は息子の身なりを整え。パーティーで金持ちの娘を見つけて、この先の人生、安泰に暮らさせようと考えていたのだ。奈津美は「わかったわ。今すぐ黒川家に行って、社長に人を返してもらうようにお願いするわ」と言った。奈津美が立ち上がると、美香はやっと安心した。奈津美は「お母さん、早く振り込んでね。契約書もあるんだから」と言った。奈津美の言葉を聞いて、美香はまた心が痛んだ。この生意気な女!美香との話が済むと、奈津美は滝川家を出た。車に乗ってから、奈津美は黒川家に行くか黒川グループに行くか考え始めた。しばらく考えて、奈津美は田中秘書に電話をかけた。電話はすぐにつながり、奈津美は「田中さん、健一はどこにいるの?」と尋ねた。しばらく電話口は沈黙していた。「田中さん?」奈津美はもう一度尋ねた。涼の冷たい声が聞こえてきた。「わざわざ電話してきたのは、それだけか?」涼の声を聞いて、奈津美は驚いた。彼女は携帯電話を見て、間違い電話ではないことを確認してから、「涼さん?」と尋ねた。田中秘書に電話したのに、どうして涼が出るの?「弟は会社にいる。連れて帰りたければ、自分で来い」そう言って、涼は電話を切った。前の涼は、奈津美と
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