「まだか?俺は午後も仕事があるんだ」男性職員は苛立っていた。奈津美は外の職員を見て、今の自分の立場がよく分かった。誰からも見下されている。彼女は医者に「分かりました。お薬をお願いします」と言った。「はい」医師はすぐに薬を処方し、注意事項を説明した。全てが終わると、奈津美は診断書を持って立ち上がった。外の職員はイライラした様子で言った。「終わったか?俺はもう帰るぞ」「山本先生、これは望月先生から預かってきた診断書です」奈津美は診断書を山本先生に渡した。山本先生は見もせずにそれを受け取り、ポケットにしまった。「さっさと行け、俺の邪魔をするな!」山本先生は先にスタスタと歩き出した。奈津美は「薬ももらわなきゃいけないのに、望月先生から、一人で薬をもらうのは大変だから、山本先生に手伝ってもらうように言われたんです。先生がいなくなったら、私はどうすればいいんですか?」と言った。「奈津美、いい加減にしろ!その程度の怪我でガタガタ言うな!薬でも塗っときゃ治る!早く来い、俺の時間を無駄遣いするな!」山本先生は面倒くさそうに言うと、振り返って歩き出そうとしたその時、誰かにぶつかった。「おい!前を見ろ!」しかし、次の瞬間、山本先生は涼の冷たい顔を見て凍りついた。目の前の人が涼だと分かると、山本先生の顔色は変わり、慌てて後ずさりして、「黒川社長!どうしてここに......」とへつらった。「田中」「はい」田中秘書はさっさと近づき、山本先生をあっという間に床に叩き伏せた。山本先生が叫び声をあげると、田中秘書はさらに彼の手を踏みつけ、山本先生は「許してください!社長!社長!」と泣き叫んだ。病院内は静かにするべき場所なのに、周囲の人々は驚いてこちらを見ていた。涼は冷たく言った。「この先生は大したことない怪我だと言ったそうだな。なら薬も必要ないだろう。どれくらいで治るのか、見てやろう」「かしこまりました、社長」田中秘書は山本先生の手から足を離し、1000円札を彼の顔に投げつけた。山本先生の手の甲は青黒く腫れ上がり、激痛で立ち上がることすらできない。涼は奈津美の目の前に歩み寄り、彼女の手の怪我をじっと見つめた。白くて美しいはずの手は、見るも無残なほど青黒く腫れ上がっていた。次の瞬間、奈津美は
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