「この子ったら、純粋で色気があって、いじめがいのある顔してるわね。お婆ちゃん、お姉ちゃんとして存在感出しに行かないと」立ち上がろうとした彼女を、お婆さまが手で制した。「弟の邪魔をしちゃだめよ。まずは彼の行動を見守りましょう」佳奈と智哉が入場した瞬間から、すべての視線が二人に集まった。今までも様々なパーティーに二人で出席したことはあったが、今日ほど華やかな雰囲気はなかった。ドレスもお揃いだった。智哉の佳奈を見つめる眼差しにも、深い愛情が溢れていた。下座の人々が噂し始めた。「高橋社長がこんな重要な場で藤崎秘書を連れてくるなんて、ただのパートナー以上の意味があるんじゃないかしら」「もしかしたら、この小鳥が鳳凰になる日も近いかもね」美桜はその言葉を聞いて、拳を強く握り締めた。智哉の意図が分からないはずがなかった。こんなに大勢の前で佳奈の立場を認めようとしている。絶対に許せない。すぐにスマートフォンを取り出し、メッセージを送信した。智哉は佳奈を連れて市の要人や重要なゲストに挨拶を済ませ、高橋お婆さまの元へ案内した。「お婆様、いじめられないように見ていてやってください」高橋お婆さまは笑顔で佳奈の手を取り「安心しなさい。お婆ちゃんが宝物のように見守ってあげるわ」麗美も冗談めかして「大切な宝物を小箱に入れて隠しておきましょうか」智哉は「宝物」という言葉が気に入ったようで、佳奈の耳元に顔を寄せた。湿った唇が意図的に彼女の熱くなった耳先に触れ、低い声で囁いた「ここで大人しく待っていなさい。サプライズがあるから」佳奈は近くにカメラが何台も向けられているのに気付き、後ずさりしようとした。細い腰を智哉の大きな手が止めた。耳元で低い笑い声が聞こえた「もうビビってるの?これからどうするんだ」「智哉」佳奈は小声で呼びかけた「一体何をするつもり?」大胆な予想が頭をよぎったが、すぐに否定した。でも智哉の普段と違う態度に、不安な気持ちが募った。智哉は彼女の戸惑った表情を見て、額にキスをした「オープニングダンスで頑張れよ。上手くできたら、ご褒美をあげる」意味深な笑みを浮かべた。長く白い指で軽く彼女の鼻先を撫で、麗美に二言三言言い残してから、主席台へ向かった。グループの社長として、智哉が最初に
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