ひやっと背筋が凍るような冷や汗が出た。智哉は彼を横目で睨みつけ、冷たい声で言った。「集中しろ。俺のことは俺が決める」「はい」「あの女の居場所は分かったか?」「今のところまだです。元々は裕子(ゆうこ)という名前でしたが、これだけ見つからないということは改名している可能性が高いかと......」「引き続き捜査を続けろ。佳奈には近づけるな」智哉は確信していた。佳奈が一年以上も行方不明になっているのは、きっとあの女に関係があるはずだ。そうでなければ、佳奈があの女をそれほど憎むはずがない。その日の夜、智哉は母親からの執拗な着信に応じて実家へ戻った。顔を合わせるなり、高橋夫人は一束の書類を彼に投げつけ、冷ややかに詰問した。「佳奈のために太陽光発電のプロジェクトを私から奪うのはまだしも、なぜ他のプロジェクトまで奪うの?独断専行するつもり?」智哉は一切の情けを見せずに答えた。「なぜそうしたのか、お母さんにはわかっているはずでしょう」「佳奈を追い詰めたからって......あの子がそんなにいいの?何がそんなにいいのか、そこまで執着して、何度も私に逆らって忘れないで。あの子の母親がどんな女だったか。高橋家にそんな女は入れられないわ」智哉は長い脚を組み、咥えたタバコを深く吸い込んでは吐き出した。その深い瞳には、明滅する火が揺らめいていた。「言いましたよね。もし佳奈や藤崎家に手を出すなら、簡単には済まないって。お母さんが私の言葉を真に受けず、独断で動いたんでしょう。来週、父さんと姉さんが帰ってくる。その時間を使って、夫婦関係を修復したほうがいい。でないと、高橋夫人の座も危うくなりますよ」「智哉、私はあなたの実の母親よ。息子がこんなことを......私たちの離婚を望んでいるの?」智哉の表情が一変した。「父さんが祖母との約束で、お母さんを見捨てないと決めていなかったら、とっくに離婚していたはずです。姉さんと私も、あなたたちの喧嘩を見て育って、自分たちの結婚生活にまで影響が出ている」高橋夫人は怒りのあまり、テーブルの上の茶碗を床に払い落とし、智哉を指差して罵った。「智哉、あなたも、あなたのお父さんも、高橋家の人間は皆同じ。私をこの家から追い出そうとしている。忘れないで。あの時、あなたの祖母がお父さんを救わなかったら、高橋家
Read more