私が失踪してから2時間後、直人の同僚がやっと現場に駆けつけた。彼は美穂を病院に送った後、ずっと彼女のベッドのそばにいて、心ここにあらずの状態だったため、私を助けるよう同僚に連絡することを忘れていた。彼がようやく思い出した頃には、私は既に死にかけていて、荒れた山の隠れた洞窟に捨てられたまま、静かに死を待っていた。彼の同僚である大野智也が懐中電灯を持って山中で必死に私を探していたけど、私は未練を抱えながら、既に洞窟の中で独り死んでいた。私の魂は彼の後ろにいて、彼が焦りながら直人に電話をかけるのを見ていた。「島田さん、山中を探し回ったけど、奥さんの姿が見当たらないんです。もしかしてもう……」電話の向こうからは、直人の冷たい声が聞こえた。「彼女が何だって? もしかしたら、もうとっくに解放されて、今頃どこかで俺に怒って隠れてるんじゃないのか?」智也は少し躊躇して口を開いた。「島田さん、奥さんはそんな人じゃありません。もし無事だったら、こんなに警察の手を煩わせることは絶対にしないはずです。やっぱり一度来て、一緒に探した方がいいんじゃないですか?」今の時点で私からの連絡が全くないんだから、もし本当に何かあったら、誰も責任を負えないでしょ。直人は怒りを抑えながら、冷たく言い放った。「俺が行ってどうする? 彼女が大丈夫だって言ってるんだろ。犯人は彼女をちょっと脅しただけで、美穂にはそんなに酷いことはしなかったじゃないか?もういいから、お前も早く帰って休め。どうせ数日も経てば、誰も相手にしてくれないってわかって、彼女は勝手に姿を現すだろう」智也が何か言おうとした時には、直人はもうイライラしながら電話を切っていた。私は全身が冷たくなった。10年だ。犬だって、10年飼えば情が湧くはずでしょ?だけど、彼にはなかった。私を探すための1分すら面倒だと思ってるんだ。私は自分がすでに死んでいることに心から感謝していた。もうこんな冷血な男と関わり続ける必要はないんだ。私は去りたかったけど、なぜか彼の同僚の後ろにくっついて、直人のそばまで漂っていってしまった。その時、彼は美穂のベッドのそばにいて、智也が部屋に入ってきたことに気づいていなかった。美穂は彼の腕の中で、泣きじゃくりながら震えていた。「直人、もう怖くてた
続きを読む