刑務所の門が背後で重く閉まると、鈍い音が響き渡った。私は全身が震え、ようやくぼんやりとした状態から我に返った。黒い雲が垂れ込めた空、人っ子一人いない通り。寂しい風景だったが、それでも刑務所に入ったあの日に比べればずっと良かった。私はむせるような湿った空気を貪るように吸い込んだ。自由の味を久しく感じていなかった。小さな布バッグを手に取り、そこに詰まった少しの衣類を抱えて、市内中心部へと続く道をゆっくりと歩き始めた。バスが私の横を通り過ぎて行った。だが、持ち合わせが一銭もない私は、ただ自分の足でゆっくりと歩くしかなかった。空気は次第に重くなり、まるで嵐が近づいているかのような気配が漂ってきた。そして、数滴の雨が乾いた地面にポツリと落ちると、間もなくして土砂降りの雨が降り始めた。私は傘を持っていなかった。郊外の道には雨をしのげるような場所もなかった。仕方なく路肩にしゃがみ込んで体を縮め、小さな布バッグを胸に抱え、少しでも雨に濡れないように努めた。雨が降り続く中、一台の車が目の前を通り過ぎ、そのヘッドライトが目を眩しくした。車は通り過ぎた後、ゆっくりとバックして戻ってきた。車の窓が降り、試すように声がかけられた。「夕子?」私は顔を上げた。心が凍りついていたような感覚が一瞬で激しく波打った。それは、中川怜司だった。私の元恋人で、私をこの地獄に送り込んだ本人だ。車内の雰囲気は不気味なほど静かだった。耳に残るのは豪雨の音とエアコンの風音だけだった。怜司の表情には苛立ちが浮かんでおり、タバコを一本取り出した。イライラした様子で数回吸ったが、私が咳をするとすぐにタバコを消した。「ごめん、君がタバコの匂いを嫌がるのを忘れていたよ」私は冷静に答えた。「別に気にしてない」またしても沈黙が流れ、しばらくすると怜司が言葉を探し始めた。「遅れてごめん。早川琴美の方で少し用事があって、遅くなってしまったんだ」「フッ」私は極めて冷たい笑いを漏らした。「構わないよ」これには、怜司もそれ以上何も言わなかった。夏の豪雨は来るのも早ければ、去るのも早い。ほどなくして、雨は小降りになり、空気中には土の香りだけが漂っていた。車はゆっくりと市内に入っていったが、進む方向が違うことに気づき、私はようやく口を開いた。「どこ
最終更新日 : 2024-10-10 続きを読む