日が暮れ始めた。リビングのテレビからは授賞式の音声が流れていた。青柳花子は欠席するが、受賞したのは彼女だった。司会者が、代理で賞を受け取ると発表すると、会場からはざわめきが起こった。それは代理受領が何を意味するか知っているからだ。業界の人なら誰でもわかっている。青柳花子は青雲遥人の「手に入れられなかった高嶺の花」だった。学生時代から職場に至るまで、ずっと彼女は彼の心に残っていた。青雲遥人が芸能事務所を設立した際、最初に契約したのは青柳花子で、常に彼女を全力でサポートしていた。一方、私は愛のために手段を選ばず、出世のために手を汚した悪女のように見えるだろう。彼らという完璧なカップルを自ら壊したという風に。でも私が本当に気にしているのは、青雲遥人の態度だ。以前、私に「青柳花子とは上司と部下の関係に過ぎない」と約束し、彼女のことに絶対に干渉しないと言ってくれた。青柳花子なら、アシスタントに代理受領させることもできたはずだ。しかし、次の瞬間、人混みの中から立ち上がる青雲遥人の姿を見た。彼はスーツのボタンを整え、周囲の曖昧な視線をものともせずにステージに上がり、トロフィーを受け取った。「私は花子を代表して感謝の意を表します。ファンの皆さん、これまでのご支援に本当にありがとうございました。私にとって、花子は最高の存在です!」と、彼は低い声で言った。彼は、他人が私をどう揶揄するかなど全く気にしていなかった。この瞬間、彼の心には青柳花子しかいなかった。空は墨のように暗く、窓の外から僅かな灯りが差し込んでいた。まだ8月なのに、私には冬が訪れたように感じられた。雪子が突然部屋から飛び出してきた。彼女は私に一瞥もせず、スマホを掴んで外に駆け出していった。食卓に並んだ料理やケーキ用のナイフとフォークなどを一切見なかった彼女が、靴でまだ開封していないリボンをゴミ箱のそばまで引きずって、私の白い靴を思い切り踏みつけた。その靴が私の一番のお気に入りだと知っているのに、わざと私の大切なものを壊そうとした。私に対する憎悪を隠そうともしていなかった。スマホを手に取ったが、メッセージは一通も来なかった。皆、今日が私の誕生日であることを忘れてしまったのだ。ふっと昨年の誕生日を思い出した。青雲遥人は仕事が忙しいと口実を作り、雪子は部屋に閉じこも
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