クラブルミナスにて。広瀬雫は店員の案内でようやくロビーの片隅にひっそりといた長谷川優花を見つけだした。彼女が近づいていった時、長谷川優花はつまらなさそうに、自分の前にあるレモンジュースをシャンパンの中に入れながら、頻繁に頭を上げてそのコーナーのすぐ横にある一本の廊下のほうをチラチラと見ていた。「何を見てるのよ?」広瀬雫は彼女の向かい側にある椅子に座ると、ようやくモヤモヤとしていた頭が少しだけスッキリするのを感じた。長谷川優花は彼女が来たのを見ると、瞳がすぐにキラキラと輝きだした。彼女は広瀬雫に手招きをし、少し興奮した様子で声のトーンを抑えて尋ねた。「あなた、風間家の三男坊を知ってる?」広瀬雫は彼女のその言葉の意味をはっきりと理解した。ただ今日の彼女は体の調子が悪く、元気がなかったので淡々と彼女に注意した。「優花、元カレと別れてまだ一週間しか経っていないでしょう」「それでも別れたことに違いはないじゃない!」長谷川優花は太ももを叩き、少し広瀬雫の言った言葉に不満そうに白目で一瞥した。そして我慢できずにこう続けた。「あのね、今回は私本気なのよ!ある日、市役所のロビーで彼をひと目見た時......白シャツに黒のスーツでさ、重苦しい色なのに彼がそのスーツを着たとたんに、エレガントで高貴な雰囲気に......本当に天使が舞い降りたかのようだったのよ!絶対的な紳士!彼の一つ一つの動作が、もう私を虜にしちゃったわ......雫、私は絶対彼を追いかけて、結婚してやるんだから!」「あなたが今までに結婚すると言った男性は、ここからあなたの家まで並べるほどたくさんいるけど」広瀬雫は一口レモンジュースを飲み、長谷川優花の話を真面目に捉えて聞いてはいないようだった。長谷川優花は広瀬雫の幼馴染で、芸能界では有名な移り気な女王様で知られていた。男性をまるで服のように取っ替え引っ替えし、広瀬雫とは全く正反対の恋愛歴だ。ただ、毎回彼女がある男性を追いかける時、必ずその男性と結婚するという考えに重きを置いているのだが、今でも彼女はまだ独身のままだった......「雫、いつも私のやる気をなくさせるわよね。どうりで私の恋愛がいっつも失敗に終わるわけだわ」長谷川優花の表情は一気に曇り、撮影現場ではない演技が始まり、彼女は目を真っ赤にさせ涙をぽろぽろと流した。広瀬雫は少し
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