翔太とは何年も前から別居していて今や他人同然の関係だ。それなのに彼の実家から電話がかかってくるとは思いもしなかった。「桜子ちゃん、お母さんが亡くなったの。翔太と連絡がつかないから早く戻って葬儀の準備をするように伝えてくれないか?」義母が亡くなったと聞いた瞬間、心の中で一瞬時が止まったような感覚がした。悲しみではなく、心に張り詰めていた糸が突然支えを失って崩れ落ちるような感覚だった。3年前、翔太とはすでに別居していた。別居して以来彼はまるで自分のことなんて最初からなかったかのように、毎日ビジネスパーティーやバーに出入りするだけで私のメッセージには一切返信をせず電話もない。私は眉をひそめた。翔太はどこまでも勝手なやつだ。自分の母親が亡くなったというのに連絡がつかないなんて。私はしばらくその電話を見つめていたが、結局次の会議をキャンセルして彼の実家に行くことにした。助手は何も言わず、10人のボディガードを連れて私に同行させた。道中、翔太に何度か電話したがつながらなかった。彼が何をしているのかさえ分からない。彼のSNSを開くと、1時間前に新しく買ったスポーツカーの写真が投稿されていた。親戚からは、義母が生前自分専用のカスタム骨壷を指定していたと聞かされた。それは2億円近くもする代物で、その件で家族と何度も揉めていたらしい。親戚たちは皆義母の死を嘆いている顔をしていたが、いざ支払いの段になると誰もがそそくさと逃げ出した。私は少し考えて、翔太のカードを使った。いつまでたっても電話に出なかった翔太は、カードでの支払いがあった瞬間、すぐに電話をかけてきた。「何にそんな大金を使ったんだ?今すぐキャンセルしろ」私はお金のことで彼と口論する気はなかった。ただ、「早く実家に戻って。家で大変なことが起きたんだから」とだけ伝えた。翔太はようやく電話越しに聞こえる葬儀の音楽に気づいたようで、口調が一瞬止まった。「誰が?」私は淡々と答えた。「身内が亡くなった」翔太は何も言わず、そのまま電話を切った。私はふと考えた。もし義母のことを言わなかったら、彼は私の家族が亡くなったと勘違いして、来ないかもしれない。すべてが片付いた後、私は携帯を開いて仕事をしようとしたが、掲示板に一つの通知が表示された。「彼氏のカードでいき
Last Updated : 2024-09-24 Read more