光莉は冷笑を浮かべた。 「その女の本性を知って、ようやく私を愛してることに気付いたの?じゃあ、それまでの何年もの間、なんで私を愛せなかったの?」曜は申し訳なさそうに答える。 「光莉、俺が鈍感で、本当にバカだったんだ。自分の過ちをやっと認めたよ。だから、どうにかして埋め合わせをしたいんだ。お前は俺の唯一の妻なんだ」光莉は冷ややかに返す。 「私は今もあなたの妻よ。それに、私たちはずっと関係を保っているじゃない。それ以上何を望むの?」「俺は......」 彼はそれ以上何を言えばいいのかわからなかった。言い過ぎれば光莉をイライラさせるだけだろう。 確かに二人はまだ夫婦で、頻繁に一緒に夜を過ごしている。だが、曜にとってその関係は、ただ互いの欲求を満たすためだけの都合の良い関係に過ぎないように感じられていた。必要な時だけ寄り添い、用が済めばまた離れる―まるで赤の他人のように。こんな夫婦関係が世の中にあるのだろうか?曜は話題を変えることにした。これ以上話せば、光莉とのわずかな繋がりさえも失ってしまいそうだった。「そうだ、光莉。さっき電話がかかってきたぞ。何か公務の用事だと言ってた」「私の携帯に出たの?」光莉の声が冷たくなる。曜はすぐに頭を下げるような口調で答えた。 「シャワーを浴びてたから、重要な電話を逃したらいけないと思って、代わりに出たんだ。本当にすまない」光莉はスマホを手に取り、通話履歴を確認する。 そこには高峯からの着信が記録されていた。―あの男が。 以前、訳の分からないことを言われた後、彼の電話はずっと繋がらなかった。そして今また何か企んでいるのか。 若子と西也の結婚だって、あの男が何か手を回した結果に違いない。彼も彼の息子も信用できる人間ではない。「曜、もう帰って」曜はため息をつきながらベッドから立ち上がった。 「わかったよ。帰る。でも、また次に呼んでくれよな」曜のこの言葉に、夫婦らしさは微塵も感じられない。それどころか、普通の恋人同士にすら見えなかった。曜が荷物をまとめて出て行くと、光莉はその背を見送り、ドアを閉める。 そしてベッドに腰を下ろし、携帯を手に取ると、高峯に折り返し電話をかけた。通話はすぐに繋がった。 「もしもし」「高峯、一体何の用よ?また何を企んでいるの?」 本当は彼と話したくなかった
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