Semua Bab 交際0日婚のツンデレ御曹司に溺愛されています: Bab 441 - Bab 450

548 Bab

第441話

内海唯花は少し考えて言った。「陽ちゃんをかくまってもらえる場所なんてある?」彼女の住んでいるところは佐々木俊介に知られている。内海家の実家のほうには頼れる人はいない。姉があの親戚たちのところに息子を預けて安心できないのは言うまでもなく、もちろん唯花も安心できない。牧野明凛は言った。「姫華さん、彼女に頼んでみたらどう?彼女って神崎家のご令嬢でしょう。住んでいるところはどれもセキュリティーがかなりしっかりしているお宅だと思うの。それに神崎グループという巨大な後ろ盾もあるから、佐々木家のやつらがどんだけ度胸があっても、神崎家とは事を構えたくないでしょ。あいつらだって陽ちゃんが神崎家にいるなんて思ってもみないわよ。姫華さんも陽ちゃんを気に入っているし、陽ちゃんが姫華さんのところにいれば、きっとしっかり面倒を見てくれるはずよ」内海唯花はそれを聞いて両目をキラリと輝かせた。「そうだわ。姫華がいるじゃない、後でお姉ちゃんと相談して、それでいいって言われたら、姫華に陽ちゃんのお世話をお願いしてみよう」「姫華さんも言ってたじゃない。何か彼女の力が必要な時には遠慮せずに相談してくれって。唯花、時には現実に逆っても、どうしようもないことってあるよね。この不公平な世の中じゃ、お金持ちで権力がある人のほうがうちらみたいな人よりも簡単に物事を進められるわ」牧野明凛がこの時、もし何も構わずに言っていたら、こう言ったことだろう。「神崎姫華ができることなら、遠慮せずに頼んだ方が手っ取り早い」と。内海唯花は仕方がなく、親友の話を受け入れるしかなかった。電話を終えて、内海唯花はLINEを開き、神崎姫華が昨日彼女に送ってきた姫華の母親姉妹の小さい頃の写真を見た。彼女はその時、山荘で遊んでいて、ちらりとその写真を見ただけで、じっくりとは見ていなかったのだ。今もう一度その写真を見てみた。内海唯花は姫華の叔母が小さい頃は本当に純粋で可愛いと思った。スカートを穿いていて、髪は左右におさげを作り、無邪気に笑っていた。それを見つめているうちに、神崎姫華の叔母は少し陽に似ていると思った。子供が小さい時というのはみんな同じ感じなんだろうか?「プルプルプル……」電話の呼び出し音に急かされて、内海唯花はその疑問から引き戻された。それは姉からの電話だった。彼女は急いで電話
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第442話

「お姉ちゃん、効果があるかはわからないけど、とりあえず警察に通報して処理してもらいましょう」「わかったわ。今から警察に電話する」「佐々木俊介の両親たちは?」「陽を車で連れ去って行ったわ。たぶん俊介のところに行ったんじゃないかしら。あいつ昨日は一晩中帰ってこなかったから」内海唯花は少し考えてから言った。「お姉ちゃん、警察に電話して。私と理仁さんで佐々木俊介の実家のほうへ行ってみるわ。あとあいつの姉の家にも。あいつらが陽ちゃんを連れ去ったのなら、きっと彼らの実家のほうへ帰っているはずよ」姉と佐々木俊介はもうすぐ離婚する。子供の親権はまだどちらが持つのか決まっていない。佐々木家側が陽を連れ去っても、警察に通報したとして、恐らく和解を勧められるだけだろう。もしそれができなければ、裁判での離婚訴訟中に一気に解決するしかない。佐々木家側の人間は、確かに陽の家族ではあるが、陽は生まれてからというもの、ずっと唯月姉妹が面倒を見てきた。だから陽の佐々木家に対する感情は深くない。陽は初めて行く場所に行って、母親や叔母の姿が見当たらないと、絶対に怖がって泣きわめくことだろう。その時に佐々木家の人間がどのように陽を扱うかわかったものではない。「お姉ちゃん、あいつらが陽ちゃんを連れ去る時、他に誰かその様子を見ている人はいなかった?」内海唯花が結城理仁と一緒に佐々木英子の夫である柏木家に行ったとしても、陽が見つからないかもしれないと心配していた。そして、相手はどうしても自分たちが連れ去ったという事実を認めず、逆に姉がちゃんと子供を見ていなかったせいで、子供が失踪してしまったと彼女を責め始めるかもしれない。「見ている人はいたわ。義母が私に彼女をおばあちゃんなのに孫に会わせてくれないから、孫のことが恋しくなってしかたなく、このような方法を取るしかなかったとか言ってきてね。周りの人たちは他人の家庭内のことだと思って、巻き込まれたくないから私のために口を合わせてくれることなんてないと思うわ」「お姉ちゃん、焦っちゃだめよ。落ち着いて、先に警察に連絡して。私と理仁さんが今から柏木家のほうへ行ってみるわ。あなたは通報したら、佐々木俊介に電話して、彼に陽ちゃんにこんなことをするのは良くないって、陽ちゃんを驚かせちゃうって伝えて」唯月は恨むように言った。「あいつには電
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第443話

結城理仁と内海唯花は急いで家を出て行った。理仁は歩きながら結城辰巳に電話をかけた。朝早い時間で、結城辰巳はまだ夢の中だった。電話がしばらく鳴り響き、結城辰巳はようやく電話に出た。「兄さん、何か用?」結城辰巳は目を開けて着信表示を見て電話に出ると、また目を閉じた。週末は何もないから、彼は昼まで寝てからようやく起きてくるのだ。「辰巳、一番下の奴以外、全員に連絡しろ。みんな……内海さん、お姉さんの夫の家のほうへは高速に乗る必要があるかな?どこから乗ったらいい?」「ええ、乗るわ。高速で四十分くらいの道のりよ。XXインターチェンジから乗って」結城理仁はまた電話の向こうの弟に言った。「お前ら全員XXインターの入り口で俺と内海さんが来るのを待っていてくれ。ちょっと厄介なことが起きた。お前たちの助けが必要なんだ」兄弟、従兄弟九人が必要だと聞いて、いや、一番年下の奴は未成年だから、その中には含まれないな。結城辰巳は心配して尋ねた。「兄さん、何があったんだよ?」兄弟、従兄弟たちが勢揃いする必要があるなんて一体どういうことだ。「内海さんの甥っ子が連れ去られた。内海さんの姉さんは旦那と離婚途中で、まだ成立していない。夫側が離婚前に子供を連れ去ったんだ。この状況だから、警察に通報してもほとんど意味がないだろう。俺らは自分で陽君を取り返すしかない」結城家と唯月一家三人は家で集まり一緒に食事をしたことがある。結城辰巳は陽への印象が深かった。その陽が連れ去られたと聞いて、彼の眠きは一気に吹き飛び、ベッドから起き上がると、下りながら言った。「兄さん、奥さんに心配しないでって伝えてくれよ。俺、すぐにあいつらに連絡するからさ」「あいつらに急いでXXインターに来るように伝えてくれ。一緒に佐々木俊介の実家に行くぞ。陽君はきっと奴の実家のほうに連れて行かれているはずだ」「わかったよ」通話を終えた後、結城辰巳は家族のグループチャットで弟たちに連絡しようと思ったが、この時間はまだ朝早く、みんながグループチャットには気づかないと思ったので、直接一人一人に電話をすることにした。週末だから、結城家の坊ちゃんたちは、みんな星城にいた。兄嫁の甥が連れ去られたと聞いて、電話で連絡を受けた彼は全くためらわず、どれも急いで家を出て、XXインターの入り口に走り
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第444話

おばあさんと清水の二人は久光崎に着くと、すぐに唯月の家へと向かった。エレベーターを降りた瞬間、喧嘩している怒声が聞こえてきた。それに驚いた隣近所の多くの人たちが家の玄関前に来て野次馬になっていた。「俊介、このクソ野郎、息子を返しなさい。佐々木家一家はみんなクズ揃いね!普段は陽のことをおもちゃの人形かなにかと思ってるくせに、自分らが陽と遊びたい時だけちょっと遊んで、いつも陽を泣かせたら、さっさと立ち去るくせに。陽はもう2歳5か月よ。あんたら祖父母として彼に洋服を買ってくれたことがある?おもちゃすら買ってくれたことないでしょ?それなのに、今になって陽のことが恋しくなったって?陽のことを思っているなら、今まであんたらが陽に会うのを私が邪魔したことなんかあった?」唯月は佐々木俊介の両親と姉に、彼女が俊介に殴りかからないようしっかりと掴まれていた。彼女はまるで狂ったかのように、力いっぱいもがき、泣きながら罵声を上げていた。おそらくおばあさん達が到着する前に、彼女は彼らとひと悶着あったようで、彼女はこの時、髪の毛が乱れ、声は枯れていた。それでもまだ懸命に彼らの制止を振り切ろうともがいていた。「パンパンッ――」佐々木英子は手を大きく振り上げ、唯月に二発のビンタを食らわせた。そして彼女は罵った。「陽ちゃんはうち佐々木家の孫なのよ。あんたと弟はもうすぐ離婚するだろ。離婚したら陽ちゃんは当然うちら佐々木家のものよ。うちらが佐々木家の孫を連れて行くのはうちらの勝手だろうが。それ以上泣き叫ぶってんなら、あんたの舌を切り落としてやろうか」唯月は義姉に二回ビンタをされて、さらに激しさを増し、必死に彼らの制止を振り切ろうともがいた。それで佐々木家の父と母は彼女を押さえ込むことができなくなった。佐々木英子はそれに気づいて急いで両親を加勢した。おばあさんと清水は人込みをかき分け、玄関先へとやって来た時、ちょうどこのシーンを目撃してしまった。おばあさんの血圧は最高潮に達して血が噴き出るほどだった。そして、おばあさんは何も考えずに突っ込んで行き、清水はその後に続いた。神崎怜凰の言葉を借りて言えば、結城家のおばあさんは若かりし頃、かなりの情報通で、彼女に知らないことなどないくらい、とてもすごい人だったらしい。退職してからは誰かに手を出したことはなかったが
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第445話

佐々木父と母も娘を手助けすることができなかった。彼らが助けに行こうとしたが、おばあさんにまた蹴りを入れられてしまったのだ。佐々木家の面々は驚き呆然としていた。80近いおばあさんだというのに、まさかこんなに勇ましいなんて。おばあさんが勇敢に立ち向かってくれている中、唯月と佐々木英子の二人は激しく殴り合いの喧嘩を繰り広げていた。佐々木英子は普段口は悪いが、本気で喧嘩しようとしたら、彼女はまったく唯月の足元にも及ばなかった。唯月のあの体重は有利になるし、彼女に覆いかぶさられてしまえば、英子はまったく身動きが取れなかった。唯月が手を休めた時、佐々木英子はまるで獣から逃げ惑う小さな野ネズミのように相当に狼狽えていた。「俊介、こんなクソ女とまだ一緒にいてどうするのよ。さっさと離婚よ、離婚して追い出してしまいな。これはあなたの家だから、こんな女、さっさと追い出すのよ、出て行け!」佐々木英子は今までにこのような侮辱を受けたことがなかった。こんなに多くの人が見ている中、彼女は唯月に殴られ、同じように髪は乱れ顔には青あざもでき、鼻は腫れていた。唯月に力いっぱい押さえ込まれ、全身が死にそうなほど痛んだ。「英子」佐々木父と母は急いで娘を助け起こしに行き、彼女の有り様を見てとても心を痛めた。おばあさんは清水に言いつけた。「清水さん、あなた周りのご近所の方たちにこの佐々木家の悪行を話してちょうだい。私たちのほうがいじめていると思われないようにね。私たちはまだ劣勢だわ。彼らは男二人、女二人、私たちはか弱い三人の女性だし、私に関しては年寄りのおばあさんよ。歩くのも杖をつかないといけないくらいなのに、彼らのほうこそ、私たちをいじめているのよ」野次馬「……」おばあさん、あなたは一人で一家四人をやっつけていましたよね。自分がお年寄りであることを利用して、自分でわざと地面に倒れ込み、佐々木家を陥れ、責任を持ってもらうぞと佐々木俊介をさっき脅していたではないか。清水は内海唯花の傍で数日過ごし、唯月夫婦の件に関してはよく知っていた。唯月が浮気現場を押さえに行く時は、彼女が唯月に代わって陽の面倒を見たのだ。それで、彼女は知っていることを全て話した。佐々木俊介の家庭内暴力に関して、この付近に住む人はみんな知っていた。佐々木俊介が唯月に暴力を振るった時
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第446話

佐々木英子は体が自由になり、おばあさんに対して相当な恨みを持っていた。もしこのクソばあさんが突然ここに現れなければ、唯月に殴られることはなかったというのに。おばあさんは唯月の手を引いて、ソファに座り、上から目線で相手を見下すように佐々木英子をちらりと見て、冷ややかに言った。「まったくこの世にあんたみたいなクズがいるなんて、この年になって新たに気づかされたわ。私に話しかけないでくれるかしら、誰かが見たら、私が豚とでも喧嘩してると勘違いされちゃうわ」佐々木英子は怒りでまた喧嘩を始めたい衝動に駆られた。「姉ちゃん」佐々木俊介は姉を引き留めた。さっきおばあさんが言っていた言葉は姉の耳に入っていないのかもしれない。「姉ちゃん、この人はあの結城理仁の祖母だぞ」佐々木俊介はそれを聞いた瞬間、すぐに結城理仁のあのいつも氷のように冷たく、まるで獲物を狙う鷹のような鋭い目つきを思い出し、萎縮してしまい、怒りが少し収まった。「結城おばあさん……」佐々木母は言った。「これはうちの俊介と唯月二人の問題です。私たちは手を出さないことにするというのはどうですか?」「私はまだ手を出していませんよ。私が手を出すところなんか見ましたか?」おばあさんはそう聞き返した。おばあさんはここに来てから、ただ足を出しただけで、実際に手は出していない。佐々木母はおばあさんからこう言い返されて、何も言えなかった。「義母であるあなたは、余計なことに首を突っ込みすぎだと思うわよ。それからあんたのあの娘もね。もうお嫁に行って実家を出てるっているのに、弟夫婦のことにまで口を出すだなんて。普段から裏でこそこそと悪口を言ってるんじゃないの?あのね、佐々木家のご夫人、あなたはどう娘に教育をしてきたわけ?あなた、娘が結婚して新しく親戚関係になった相手に恨みでもあったんじゃない?だからこんな娘を彼らのもとに嫁がせたんでしょ」佐々木母「……」「私たちは陽ちゃんの祖父母です。私たちは陽ちゃんと一緒にいたくて、彼を迎えに行ってしばらく一緒に暮らそうと思っただけですよ。それなのに唯月ときたら、まるで私たちが人攫いかなにかのように騒ぎ立てて、警察に通報までしたんですよ」佐々木父は口を開いた。唯月が通報した後、警察がやって来て事情を尋ねた。彼らは家庭内のいざこざだとわかり、少しア
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第447話

唯月は車を持っていない。妹と電話をした後、妹夫婦は陽を探しに行き、彼女のほうは佐々木俊介と決着をつけに来たのだ。ただ彼女はたった一人で、佐々木俊介のほうは一家総出で来ていたので、彼女のほうが劣勢だった。幸いにもおばあさんと清水が駆けつけてくれて、彼女の危機をなんとか回避できた。佐々木俊介はタイミングを見計らい、彼が昨晩作成した離婚協議書を取り出して、唯月に言った。「唯月、俺がお前にやっちゃいけないことをしたってのは認める。お前が許してくれるとは思ってねえよ。俺ら二人はお互いに何の感情もなくなってしまったんだ。この結婚生活もこれ以上続けていくことはできない、スッキリ別れようじゃないか。これは俺が作った離婚協議書だ。見てくれ、問題がなければ、そこにサインをしよう。来週の月曜日、市役所に行って離婚手続きをするんだ」唯月は冷たい顔でその離婚協議書を手に取った。一目見て、彼女はまた佐々木俊介を殺したいほど怒りが込み上げてきた。おばあさんも佐々木俊介が作ったその離婚協議書を手に取り目を通した後、彼女は何度も深呼吸をして自分の怒りを抑えようとした。佐々木家は本当に一家揃ってクズばかりだ!佐々木俊介は唯月が怒りに満ちた顔になっているのを見て、図々しく言った。「この家は俺が結婚前に個人で買った財産だし、不動産権利書には俺一人の名前しか記載されていない。だから、家は俺のものだ。車も俺が買ったもんだから、当然俺のもんだろ。お前は今働いているが、働き始めてまだ数日しか経っていない。試用期間ですらまで終わっていないから、お前の収入が安定してるって証明はできない。だから、俺がちょっと損してもいいぜ。陽の親権は俺がもらうから、お前は離婚した後は毎月四万の養育費を出すだけで勘弁してやる。陽はまだ2歳ちょっとだから、まだミルクを飲まないといけないし、夜寝る時だって、まだオムツが必要だ。3歳になって幼稚園に通い出したら、幼稚園の費用はだんだん負担が増えてるし、小学校、中学校は授業料はタダだけど、高校、大学に上がったら金がかかるだろ。大人になったら、結婚して家を買ったりするだろうし、俺が一部分は負担してやらないといけないから、一生金がかかるんだよな。俺は陽の親権をもらうから、お前には毎月四万の養育費だけでいいって言ってるんだ。もうかなりお前には譲歩してやってる
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第448話

唯月は冷ややかに笑った。「私が出したリフォーム代を返してもらえば、私のほうから勝手に出て行くわ。別にあんたらに追い出していただく必要はないわよ」「リフォーム代は一円たりとも返さないよ!」佐々木英子は大声で叫んだ。そうすると顔にもっと痛みが走った。唯月は顔を氷で冷やしているが、彼女の分はないので、余計に痛かった。彼女の両頬はヒリヒリと火照って痛かった。鏡を見るまでもなく、この時の彼女の顔がまるで豚のようにぶくぶくと腫れあがっているのがわかった。唯月の奴!絶対に一生幸せな生活など送らせないからな!「法廷で会いましょう」おばあさんが口を開いた。「あんたたち佐々木家は人を苦しめるにもほどがあるわ。話し合いで決着がつかないというなら、もうこれ以上続ける必要はないわ。唯月さん、離婚訴訟を起こして、裁判で決着をつけましょう」佐々木俊介は唯月を脅して言った。「唯月、本気で裁判沙汰にしようっても、お前には全くメリットはねえぞ。てめえの妹もこいつらもお前の助けにはならねえよ。ここまでの騒ぎにもってきやがって、今後、陽に会えるとは思わないことだな」もし唯月が離婚訴訟を起こして、財産分与を求めるなら、彼は陽をどこかに隠して、彼女には一生息子と会えないようにするつもりだ。唯月は冷たく彼を睨みつけた。彼のその威嚇にはまったく関心を向けていないようだ。彼女が訴訟を起こすなら、財産の分与、息子の親権、全てにおいて彼女が得られるものはすべて奪うつもりだ。絶対に佐々木俊介と成瀬莉奈に美味しい思いをさせてはいけない。唯月と佐々木俊介の離婚話がなかなかまとまらない中、内海唯花のほうは結城理仁と彼の兄弟、従兄弟たちを連れて英子の夫の家である柏木家に到着していた。陽は柏木家が連れて帰っていた。内海唯花は彼らが陽を佐々木家のほうではなくて、柏木家の実家のほうに連れて行くと読んでいたのだ。柏木家は三階建ての一軒家で、外も内側もかなり豪華な造りだった。村の中では一際目を引く建物だ。佐々木英子の夫が陽を連れ去って帰ってきてから、そう長くは経っていなかった。彼は唯月姉妹が陽はここにいるとわかっていても、ここまで陽を取り返しにくるはずがないと考えていた。佐々木家が唯月姉妹の邪魔をするはずだからだ。だから、彼は陽を連れて帰ってきた後、陽を自分の息子と遊ばせ
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第449話

内海唯花は彼らのところまで駆け寄って行き、両手で柏木智哉の手から陽を奪い返した。そして、片手をあげて、その手を大きく振りかぶり彼の顔を力強くビンタした。柏木智哉は10歳くらいだが、背が高めなので、見た感じは14、5歳の少年と同じ感じだった。突然内海唯花にビンタを食らって、怯えるどころか逆に頭に血を上らせて、まるで狂ったかのように唯花のほうへと飛びかかってきた。しかし、彼は内海唯花に触れることすらできず、飛びかかっていった途中で、突然両足が地面につかなくなり持ち上げられた。まったく反応することができず、彼は壁に完全に押し付けられてしまった。顔は壁と向かい合う形で、両手は後ろに押さえ付けられてしまい、彼がもがこうとしても、ガッチリと身動きが取れないくらいに体を固められてしまった。押さえ付けられた両手は、だんだん痛みを増していった。「放せ!」智哉は、わあわあと大声を上げた。「よくもこんなことする度胸があるな。俺をさっさと放せ、勝負してやる!」弟の智哉が壁に押さえ付けられたのを見て、彼の姉が何も考えずに弟を助けに行こうとしたが、そこへやってきた数人に壁を作られて行く手を阻まれてしまった。彼女がはっとして見てみると、いつの間にか、彼女の家には背の高い男たちが集まってきていた。その男たちは全員イケメンだった。彼女はまだ12歳だが、カッコイイ男には目がなかった。普段同級生たちとどの男性アイドルがカッコイイかをよく話し合っているのだ。彼女は目の前にいるイケメンたちを見て、ぼうっとしてしまった。これは、テレビの中の芸能人たちがここに現れたのか?本当に、イケメン揃いだ!「あ、あなた達は誰ですか?」さっき、陽のことをほったらかしていた柏木家の父親と母親が現れて、家に多くの人がやって来たのを見て、驚いていた。内海唯花は彼らのことは無視し、陽のほうへ顔を下へと向けた。陽の両頬は智哉に叩かれて赤く腫れあがり、赤いくっきりとした手の痕が残っていた。しかも口を切ったらしく血まで出ていた。いつもキラキラと輝かせている無邪気な瞳はこの時、恐怖に怯えていた。陽は口を開いて泣きたい様子だったが、かなりのショックを受けているようで、呆然としてしまい、泣くことすらできなかった。その瞬間、内海唯花の瞳からは涙が溢れ出した。彼女は顔を
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第450話

「辰巳、ここはお前たちに任せた。あいつらが陽君をどう扱ったか、同じことを倍にして返してやれ!」結城理仁は柏木智哉を引っ張り、床に押し倒した。彼は床からまだ起き上がる前に、なんと結城理仁に向って蹴りを一発入れた。結城理仁は彼のほうを見ることもなく、自分の感覚を頼りに蹴りをお返しし、さっき智哉が蹴りを入れてきたほうの足を力強く踏みつけた。智哉はあまりの痛さで叫び声を上げた。理仁は冷ややかな目で智哉を睨みつけ、ここにいる人間のことは無視し、急いで内海唯花の後を追った。彼女はすでに陽を車の座席に横たわらせ、車を出そうとしているところだった。「内海さん、俺が運転する」結城理仁は急いで内海唯花を運転席から引っ張り降ろし、後部座席に座らせると、彼が車を運転した。内海唯花も大人しくそれに従い、殴られて気を失ったのか、あまりのショックで気を失ったのかわからない陽を再び抱き上げた。そして結城理仁に「一番近くの病院を探して」と頼んだ。彼女に言われるまでもなく、結城理仁も一番近くの病院を探すつもりだった。車はすぐに走りだした。内海唯花はぎゅっと陽をしっかり抱きしめ、心を痛めて涙をぽろぽろ流していた。陽はこんなに可愛いのに、どうしてこのような目に遭わなければならないのか。病院までの道のり、夫婦はどちらも話をしなかった。内海唯花のほうはそのような心の余裕がなかったのだ。彼女は陽になにかあったらどうしようとずっと心配していた。陽にもしものことがあったのなら、彼女は絶対にあの柏木家を生かしておけない!そしてすぐに病院に到着した。結城理仁が車を止めると、内海唯花は陽を抱いたまま車を飛び出していった。「先生、先生!」彼女はかなり焦って病院に駆け込み、医者を呼び続けていたので、病院にいた多くの人の目を引いた。彼女がこのように叫び続けるので、医者と看護師たちも驚いていた。彼女はどの医者が何の専門なのかも確かめることもせず、ある一人の医者を掴まえて、急いで「先生、甥を助けてください。虐待を受けて気を失ってしまったんです」と助けを求めた。医者は急いで陽を抱きかかえ、急ぎ足で手術室へと向かい、他の医師と看護師もそれに続いた。そして一人の看護師が内海唯花に注意を促した。「子供が虐待を受けたのであれば、すぐに警察に通報してください」そう
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