佐々木父が陽のほうを味方したということを唯花たちは知らなかった。陽の顔は氷を当てて暫く冷やしていたので、少し腫れがおさまっていた。しかし、陽は家に帰りたいとずっと泣きわめいていた。それで唯花は家に帰っていいかどうか医者に聞きに行った。医者は退院してもいいが、子供は大きなショックを受けているので、もしかすると熱が出るかもしれないから注意するように伝えた。夕方、みんなは唯月親子を家に送った。唯花は陽のことが心配で、理仁を引っ張ってベランダへと出て行き、彼に向って言った。「今日はお姉ちゃんの家に泊まって、陽ちゃんの傍にいてもいい?」理仁は心の内では彼女と離れたくないと思った。彼は今唯花に対して感情が高まっている時で、一日二十四時間、ずっと彼女の傍にいたかった。しかし、陽のあの様子と、叔母である彼女のことを考えると、陽に付き添いたいという気持ちは十分に理解できた。「結城さん?」唯花は彼がじいっと自分を見つめる瞳と、唇をきつく結び何も言わないのを見て、恐る恐る尋ねた。「だめ?お医者さんが陽ちゃんは熱を出す可能性があるって言ってた。お姉ちゃん一人でお世話をするのは、ちょっと心配で」すると大きな手が自分のほうに伸びてきて、彼女の顔に触れた。理仁のその手はとても温かく、彼女の顔に軽く触れていた。その温かさはまるで春風が顔を優しく撫でているかのようで、唯花は目を閉じていつもの彼からはあまり感じることのできないその心地よさをゆっくりと味わっていたかった。「陽君のお世話もいいけど、自分のことも大事にしてくれよ」彼はそう言葉を残した。声は相変わらず低かったが、いつものあの冷たさはなく、温かさを感じられた。「わかったわ」「何かあったら、すぐに俺に連絡して。また他人みたいに遠慮なんかしないでね」理仁は彼女が以前、内海陸たち不良どもと喧嘩する時に、とても勇ましく全部自分一人で奴らを片付けてしまい、彼に女性の窮地を助けるヒーローにさせてくれなかったことをずっと根に持っているのだった。唯花は微笑んで、ササっとリビングのほうを確認し、義弟たちがこちらを見ていないのがわかると、手を伸ばし理仁のがっちりとした腰に手を回して抱きしめた。そして顔を彼の胸元にぴたりとくっつけた。妻のほうから抱きしめられに来たのをいいことに、理仁は遠慮な
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