All Chapters of 交際0日婚のツンデレ御曹司に溺愛されています: Chapter 431 - Chapter 440

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第431話

内海唯花は神崎姫華が今まで結城社長のことを好きだったので、神崎姫華を悲しませないように、あまり多く言わず、すぐ話題を変えた。二人はおしゃべりをしているうちに、神崎姫華は今やっていることを思い出し、言った。「兄さんがね、私が暇な時に結城社長のことを思い出して悲しむんじゃないかって心配して、私にあることを頼んできたの。私の叔母さんを探しなさいって」「叔母さん?」内海唯花は神崎家の事情にはあまり詳しくなかった。知っているのは神崎家が結城家に次ぐ名家だということだけだ。唯花が神崎家で唯一知っているのは神崎姫華だった。「そういえば、唯花、あなた達姉妹が経験したことは、うちの母の昔にとても似ているわ。うちのおばあさんとおじいさんも早く亡くなって、親戚たちは誰も母とその妹を引き受けたがらなかったせいで、母さん達は保護施設に入るしかなかったの。そこで暫く過ごして、母の妹、つまり私の叔母さんはね、まだ小さくて、かわいかったから、結婚してから間もなく子供に恵まれなかったお金持ちの夫婦に選ばれて、養子になったんだ。母はずっと施設にいたんだけど、妹のことを忘れたことがなかったの。大きくなって、一人前になってから、ずっと妹のことを探していたけど、当時は今みたいにネットなんかなかったでしょ。ネットで人探しの情報をアップして、その人が簡単に見つかるような時代じゃなかったから、なかなか成果がなかったの。今までずっと何も手掛かり一つなかったんだけど、ついこの間、叔母さんを引き取ってくれた夫婦が見つかったわ。これで叔母さんを見つけたと思って、私たちはとっても喜んでいたの。でも、母に付き添ってその夫婦のところに叔母さんの行方を尋ねに行ったところ、相手が知らないって答えたんだ」話を聞いた内海唯花も緊張してきた。「どうして知らないの?そのご夫婦が叔母さんを引き取ってくれたんじゃない。もしかして、あなたのお母様に会わせたくないから、わざと嘘をついたとか?」「違うの」神崎姫華は怒った様子で言った。「あの人達、叔母さんを引き取って一年後、自分の子供が生まれたから、叔母さんのことをどんどん気にいらなくなって、殴ったり怒鳴ったりしただけじゃなく、叔母さんが大きくなったら、実の子供と財産で争うことを心配して、夫婦は相談し、別の子供がいない夫婦に叔母さんを譲ったのよ」内海唯花も
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第432話

「母さんは叔母さんと離れたとき、二人で一緒に写真をとって、ぞれぞれその写真を持っていたんだ。大きくなったら、これを手掛かりとして、いつかまた会えると思ってたけど、叔母さんの持ってた写真は最初の里親に燃やされちゃったの。母さんの写真はまだ残っているけど、もう数十年経ったんだよ。どう気を使って大事に保存していても、やっぱり黄ばんでいて、はっきり見えないわ。兄さんはもうその写真をネットにアップしたけど、全く手がかりがなかったの。もし、叔母さんに子供がいて、その子が叔母さんに似ていたら、うちの母さんが見て気づく可能性もあるけど、そうじゃなかったら、たぶん叔母さんを見つけるのは難しいと思うわ」今はその方法しかないのだ。しかし、このままだと、どう考えても不可能に近い。「頑張ればなんとかなるよ。姫華、絶対見つかるわ、諦めないで」内海唯花は今、神崎姫華を応援することしかできない。神崎家はお金と権力を持っているが、何年かけても彼女の叔母を見つけることができなかった。唯花は何の権力もない一般人で、どうしようもできないのだ。「早く叔母さんが見つかるといいな。そしたら、母さんに会わせて、元気になると思うの。唯花、もし知り合いに養子だという人がいるなら、教えてね。どんな可能性も見逃したくないの」内海唯花は突然自分の母親を思い出した。彼女は試しに神崎姫華に聞いてみた。「叔母さんは今年いくつになる?」「54歳ね。母さんはもう叔母さんと五十年以上も会っていないの」暫く沈黙すると、内海唯花は口を開いた。「私の母がもし生きていたら、ちょうど今年54歳になるわ。母もおじいさんとおばあさんの子供じゃないの、どっかで拾ってそのまま引き取ったようで。母には私とお姉さんしか子供がいないわ。姫華も会ったよね」養子になる人は意外と多い。内海唯花は母親が神崎姫華の叔母だとは簡単に思わなかった。それに、神崎姫華は唯花姉妹に会ったこともあるし、姉の唯月が特に母に似ている。神崎姫華が唯月に会ってどうも思わなかったから、その可能性がないと思った。神崎姫華は内海姉妹の両親は十五年前の交通事故で亡くなったことを知っていた。自分の叔母はそんなに短命ではないだろうと思って、その可能性も頭から排除した。「唯花、お母さん以外に、養子になった知り合いが誰かいる?」「実家の田舎だと
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第433話

神崎姫華は感激して言った。「唯花、ありがとう。もしおばさんを見つけたら、あなたは神崎家の一番の恩人になるわ。そのときちゃんとした礼をさせてもらうから」「私たちは友達でしょ、そんなに遠慮しないで。ただ母のことを思い出したの。もし母がまだ生きているなら、私も姉も絶対、精一杯母のために家族を探してあげると思ったから」母親がなくなってもう十数年経った。内海唯花は母親のことをあまり覚えていなかったが、幸い姉の唯月が母親に似ているので、彼女を見ると、母親のことを思い出せる。「じゃ、唯花、これ以上は家族団らんの邪魔するのはさすがに申し訳ないわ。楽しんでね。いつか正式に結婚式を挙げるなら、きっと教えてね。ブライドメイドしたいから」内海唯花にからかうように一言を残して、彼女は電話を切った。「また神崎さん?」結城理仁は何食わぬ顔をして尋ねた。「うん、もともと私たちに合流しようと思ったらしいけど、私は結城さんと一緒にいるって聞いて、来ないことにしたって」結城理仁は心の中で冷たく彼女に小言を言った。「やっと気の利いたことをしてくれたな」「神崎さんは本当にいい人だよ。お宅の社長さんは……」結城社長がもう指輪をつけていたのを思い出して、内海唯花はため息をついた。「人と人との縁って、本当に残酷だね」「何を話した?さっきお義母さんの事とか言ってなかった?」結城理仁は話題を変えた。彼自身の噂ばかり聞きたくないのだ。内海唯花は彼と肩を並べ、手を繋いで話した。「姫華は今、彼女の叔母さんを探すのに専念してるんですって。こうすれば、結城社長のことばかりを考えなくて済むからって。まさか神崎夫人も施設で育てられたなんてね。彼女の妹は誰かに引き取られて、また何回も他のところにたらい回しにされちゃったから、今になっても二人は再会できないみたい。お母さんもおじいさんとおばあさんの養子だったのよ。でも、本当の家族は全く母のことを探さなかったんだ。それに、小さい頃のこともあまり記憶になかった。覚えていたのは前の里親はよく彼女を虐待してきたから、我慢できず逃げてきたって。その時、お母さんはまだ7、8歳くらいだった。何もできなくてお腹が空きすぎて、道端で倒れてたところを、おじいさんとおばあさんに拾ってもらったんだ。それからようやく穏やかな生活ができたって。その後、お
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第434話

「もちろんよ。絶対裁判で両親の家を取り戻すわ!」「そんなに自信があるなら、もう落ち込んだ顔なんかしないで。今日は遊びに来たんだ。だから、ちゃんと笑うんだよ。以前のまだ解決できていないことは、帰ったら一つずつ解決したらいい。いつか全部片付くから」彼は内海唯花を胸にきつく抱きしめて、優しい声で言った。「それに、俺がいるだろう。何かあっても、ちゃんと君を支えているから」内海唯花は彼の懐から逃れようとはしなかった。静かに彼に抱きしめられて、暫くしてからようやく離れた。この時、顔はほんのり赤く染まっていた「こんなに人がいるのに」結城理仁は何食わぬ顔をしてまた彼女の手を取り、そのまま前に歩き出した。「俺たち夫婦だろう。愛人が逢引してるわけじゃないんだから、人が多くいても問題ないだろう」内海唯花「……」「どうりでお姉ちゃんがいつも結城さんに優しくしなさいってうるさく言うわけね」彼はとっくに行動で唯月から認められているのだ。二人はスピード婚し、一緒に生活し始めてから、内海唯花はこの男には欠点があるのを知っていた。しかし、その欠点より、美点の方が多かった。それに、欠点がない人なんてこの世のどこにいる?内海唯花自身にもそれはたくさんある。きちんとした重要な場面では、結城理仁は佐々木俊介のクズ男より何万倍ちゃんとしている。内海唯花のただでさえ落ち着くことのできない心が、結城理仁のせいで、またドキドキしてきた。彼女は絶対にチャンスをうかがい、こっそり彼の契約書を取って燃そうと思った。そうしたら、彼女は何の恐れもなく彼をからかうことができるのだ。もし、いつか二人の心が一つになり、彼と本当の夫婦になったら、彼はあの半年の契約のことなど口に出さなくなるだろう。顔を傾けて、彼のいつもムスッとしているような顔を見つめた。内海唯花は密かにため息をついた。やはりもっと度胸をつけよう。じゃないと、彼の服を剥ぎ取っても、その氷山のような冷たい顔を目の前にしたら、どれほど熱い衝動もすぐ消えるだろう。「なら、もっと俺に優しくしてくれよ」「まだ足りないの?」結城理仁は口元を引き締め、また黙った。二人はお互いに助け合ってきたのだ。内海唯花は一方的に他人に助けられてばかりということをよしとするタイプではない。彼が彼女を少し助けてくれたら、彼女
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第435話

内海唯花もそれがわからないほど馬鹿じゃない。おばあさんと清水が先に行ってしまったのは夫婦に二人きりの時間を作るためだ。せっかく今日の結城理仁は、その誰もを凍らせるような冷たい雰囲気を纏わっていないので、内海唯花はこの珍しいデートを楽しむことにした。お互いの手を繋ぎながら日本風庭園を散歩した。内海唯花はこういう昔の雰囲気の建物が特に好きだった。「結城さん」「何」結城理仁の意識は周りの景色に向いていなかった。常にチラチラと隣にいる女性を覗いていた。内海唯花の呼び声を聞き、彼は何でもないような顔で足を止め、彼女の方に視線を向けた。その様子はまるでさっきからずっと目の前の風景しか見ておらず、一回も内海唯花を見ていなかったようだった。「結城グループで働いているなら、傘下にあるビジネスには何があるかわかるでしょ?こういう場所に、結城社長はいくつ投資してるの?」結城理仁は少し考えてから答えた。「うちは各大都市に支店を持っていて、さまざまな業種に投資しているけど、このようなリゾートみたいな山荘は二軒しか投資していないんだ。適した場所がそんなに多くないからな。素晴らしいリゾートを建てるために、それだけの資金が必要なんだ。ここはうちの会社が単独投資で経営していて、柏浜にあるリゾートはそこの富豪と合資して建てたものだ。距離が結構遠いから、管理は相手に任せて、うちは少し株を持つだけだね」内海唯花は視線を遠くへと向けた。リゾート全体はおろか、この日本風庭園だけでも、彼女はその全体を隈なく見渡すことはできなかった。結城理仁は今日は適当に見て回るだけで、じっくり観光するのは無理だと言っていた。確かになんと広いのだろう。「おたくの社長様はさすが星城のトップ大富豪なのね。本当にお金持ちだわ、どこへ行っても結城家のビジネスばかりじゃない」結城理仁は何も言わなかった。結城家は何代にもわたって星城でビジネスをやっていた。その富は代々の人々によって少しずつ貯められてきたのだ。それに、結城家になんでも際限なく贅沢するようなドラ息子がいなかったため、その富がますます増えていった。具体的にどのくらいあるのか、結城理仁にもわからない。とりあえず二兆はあるだろう。内海唯花は何の前振りもなく、彼の肩を叩いた。彼は不思議そうに彼女を見つめた。「結城さ
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第436話

それに、名門家のおばあ様といったら、大体厳しいと聞いたことがあるが、結城おばあさんは気軽におしゃべりできる人で、一般人のおばあさんと何の変わりもないのだ。身につけている服も素朴なもので、どう見ても名家の出身ではないだろう。結城理仁はじっと彼女を見つめて、彼女の頭を撫で、落ち着いた声で言った。「内海さんは現実的な人だな。あまり夢を見るようなタイプじゃないみたいだ」「私はしっかり現実を楽しむ人間なのよ。夢を見るにしても、もっと現実的に実現できるようなものしか見ないわ。現実離れなことを考えても時間の無駄でしょ」結城理仁は口を引き締め、これ以上何も言わなかった。暫く歩いてから、夫婦はようやくおばあさんたちと合流した。お昼はレストランで済ませた。ここのレストランの内装も結構拘りがあり、レトロなスタイルだった。もし現代的な施設がなかったら、内海唯花は自分がタイムスリップして、昔に戻ったんじゃないかと錯覚しそうだ。陽は特に上機嫌だった。彼はおばあさんと清水を連れて魚の餌やりに行ったのだ。好きなだけ魚の餌を買い、思う存分に楽しんでいた。ずっとワイワイと、はしゃいでいたので、ご飯も食べ終わらず疲れた陽は内海唯花の腕の中で眠りに落ちた。「理仁、おばあちゃんはもう疲れたから、そんなに遠くまで歩けないわ。午後は、唯花ちゃんを連れて二人で遊びに行ってちょうだい。私は清水さんと陽ちゃんと一緒に、この辺りで休むわ。二人で楽しんできて、それから一緒に帰りましょう。こういうところは、やっぱり止まってゆっくり見た方が楽しめるわよ」結城理仁は「うん」と返事した。内海唯花は言い出した。「じゃ、今帰りましょう?」おばあさんは首を横に振った。「せっかく来たんだし、思う存分に楽しんでちょうだい。チケットを買ったのに、半分しか回らないなら、もったいないじゃない。唯花ちゃん、大丈夫だから。理仁とヨーロッパ風庭園のほうまで、もっと遊んできて。おばあちゃんは何回も来たから、遊び回らないでも平気なのよ。陽ちゃんのことも心配しないで、清水さんとしっかり世話をするからね」おばあさんにそう言われて、内海唯花もこのまま帰ったら確かにもったいないと思い、ご飯を食べ終わって、暫く休んでから、また結城理仁と一緒に出発した。結城理仁は当たり前のように内海唯花の手を取った。手を繋
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第437話

楽しい時間はあっという間に過ぎていった。気がつくと、太陽はもう西へ沈んでいた。内海唯花は一日中ずっと歩いていたので、家に着き、お風呂に入って、ベッドに横になるとすぐに夢の世界へ入っていった。おばあさんは彼女が部屋に入ると、昨日のようにまた同じようなことを仕掛けようと思っていたが、部屋に入った時、内海唯花がもうぐっすりと眠っているのを見て、今夜は一芝居のできる舞台を失ってしまった。内海唯花の部屋を出て、孫が心ここにあらずという様子でリビングのソファに座ってテレビを眺めているを見て、おばあさんは少し腹が立ってきた。彼女は近づくと、結城理仁の手からリモコンを奪い取り、不満をこぼした。「家に帰ってから何も言わなかったし、やるべきこともやってないんじゃない?」結城理仁はおばあさんを見ながら、不思議そうに言った。「自分の家にいるんだ。言わなきゃいけない言葉と、やらなきゃいけない事とは一体何なんだ?」今日、彼の収穫はなかなかなものだった。内海唯花と手を繋ぐことができた。しかも、一日中ずっとだ。内海唯花も何かあったら彼に言うようになり、彼への信頼がどんどん高まってきている。おばあさん「……」「ばあちゃん、一日ずっと歩いてたから、もう疲れただろう。清水さんに客室を片付けるように頼もうか?」おばあさんは仕方がなく「うん」と返事した。実は、結城理仁の指示がなくても、清水はとっくに客室を片付けていた。「理仁、あなたも早く休んでちょうだいね」おばあさんは彼に一言を残し、客室へ行った。結城理仁はしばらくリビングに座ってから、テレビを消し、自分の部屋に戻った。部屋に入ると、すぐ九条悟に電話をかけた。「ちょうど今電話できるかと君にメールで確認するところだったんだよ。気が合うじゃないか」結城理仁は部屋のソファに座り、淡々と尋ねた。「電話って何か用か?」「明日午前十時に、カフェ・ルナカルドで牧野さんを待ってるって奥さんに伝えて。奥さんに頼んで、それを牧野さんにも伝えてもらってくれよな」結城理仁は笑った。「結構積極的じゃないか?今回のお見合い」「せっかく君が紹介してくれた人だろう。理仁の面子を考えても、ちゃんとしないとな」「わかった。あとで妻に伝える。牧野さんにも伝えるよう頼んでやるよ。ちゃんとしろよ、牧野さんのお目
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第438話

九条悟はこころよく返事した。「いつ必要だ?」「早ければ早いほどいい」「じゃ、明日かな、間に合う?」「間に合う」明日はちょうど離婚話をする日だ。佐々木俊介の財産についての証拠が手に入れば、心強くなる。「君はお義姉さんの離婚の件のために、本当に全力尽くしてるね。自分の会社の仕事でさえこれほど関心を持ったことがないくせに」結城理仁は少し黙ってから、また口を開けた。「妻は俺にとても感謝しているしな」「感謝してるだけで、それは愛じゃないだろう。もっと君に惚れさせるようなことをしないと。でも、まあ、実の姉の問題を解決してあげたなら、君に対する評価も高くなるだろう。そうすれば、どんどん君に頼って、いつの間に恋が生まれる可能性もあるだろうね」九条悟には彼女はいないが、状況の整理ならちゃんとできるのだ。状況を分析してから、彼はまた結城理仁に尋ねた。「逆に聞くけど、ちゃんと奥さんのことを愛しているのか?もし奥さんを君にめちゃくちゃ惚れさせといて、結局お前自身が全くその気がないなら、奥さんの感情を弄ぶクズになるぞ」結城理仁は気まずくなった。「……じゃ、誰かを好きなったらどんな反応が出てくる?手を繋ぐだけで緊張してドキドキするのは恋をしていることか?彼女が笑うと、自分もうれしくなって、彼女にキスしたくなることも?」「わお、理仁、すごいじゃないか。もうそこまでいってんのかよ。君は誰かを凍らせる冷たい顔をしたり、人を睨んだり、無視したりしかできない人だと思ってたぞ」結城理仁は今すぐに電話を切りたい衝動が湧いてきた。何も構わず彼をからかうことができるのは九条悟しかいない。これはしょうがないことだ。すぐに正確な情報を集めることができるのは九条悟の右に出るものはいないから。「結構前から言ってただろう。スピード婚の相手を絶対に気にかけてるって。その時は、死んでも認めなかったな。奥さんがただ金城琉生とご飯を食べただけで、勝手にキレて、ヤキモチを焼きながらも、そんなもんは焼いてないとか言ってただろ。もう、お前さ、ヤキモチ焼いた時本当に怖いぞ、知ってるか?」結城理仁は暗い顔をした。「ヤキモチなぞ知らん!」「そんなん信じるもんか!まあ、とりあえず、先に電話して人に頼んで、佐々木俊介の財産を調べるわ。それに、彼の家族の名目のもとに、大金の貯金が
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第439話

しかし、結城理仁はただ頭でいろいろな策を立てるだけで、実行はしなかった。あの無駄に高いプライドが彼にこそこそするような真似をするのを妨げていた。すると、彼は寝返りを打っているうちに、うとうとし始め、いつの間にか夢の世界に落ちた。一方、あるマンションにて。佐々木俊介がベッドヘッドのタンスから煙草を取り出し、火をつけようとした時、隣の女は手を伸ばして言った。「私にもちょうだい」佐々木俊介は取り出した煙草を成瀬莉奈に渡し、火をつけてあげた。「たまに一本吸うだけでいい」佐々木俊介はあまり煙草を吸わなかった。取引先と商談のための接待で、たまに吸うだけで、普段何か考え事がない以上、煙草を手に取ることはまずないのだ。唯月は男がよく煙草を吸うのが嫌いで、口が臭くなると思っていた。成瀬莉奈はよく煙草が吸うが、普段淑やかな淑女のふりをしなければならないから、佐々木俊介の前では一切吸ったことがなかったが、いま佐々木俊介と最後の一線も超えて、唯月と離婚の準備もし始めたことで気が緩んでいる。だから、彼女はその偽装はもう必要じゃないと思い始めた。今後一緒に生活すると、いつかばれることだから。彼女は煙草を半分くらい吸ってから、佐々木俊介の肩にもたれかかり、優しい声で聞いた。「何かあったの?」「ないよ」成瀬莉奈は笑いながら、柔らかい手が誘うように彼の胸を軽く触った。「どうしたの?あのブスと離婚したくなくなった?」「まさか?ただ離婚協議書に何を書けばいいのかと考えてるんだ。親に唯月に四百万をやろうかと相談したけど、それは多すぎると言われたんだ。姉も同じ意見で、唯月が結婚してから全くお金を稼いでないから、そんなに多く分けなくてもいいって。でもさ、どう言っても結婚して一緒に生活したことがある仲だろう。それに、俺が先に浮気をしたから。そこまで厳しくしなくてもいいと思って。それに、唯月に四百万あげたら、彼女もこれ以上しつこくできないだろう。万が一、俺らのことをあちこち言って騒いだら、俺らの名誉も傷付くんじゃないかって」成瀬莉奈は煙草の火を消してから言った。「ご両親とお姉さんはあなたの家族だもんね。もちろん俊介のことを考えてああいうんだよ。だから、ちゃんと家族のアドバイスを考えるのは悪いことじゃないと思うよ」すると、彼女はまた甘えた声でねだった。
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第440話

成瀬莉奈はいい気をしていないが、顔には出さなかった。彼女はまだ佐々木家の嫁になってないから、このようなことに口を出すのはよくないのだ。下手して佐々木俊介の機嫌を損ねると、彼の家族の反感も買うかもしれない。佐々木陽はまだ2歳ぐらいで、物心があまりついておらず、自分でできることも少ない。今後彼女の顔色を伺う生活をしなければならないから、懲らしめる機会ならいくつもある。今は急がなくてもいいのだ。「いいんじゃない?」成瀬莉奈は離婚協議書を佐々木俊介に渡した。「二枚コピーしてあげるから、明日あの女に持っていってサインしてもらって。二人は一枚ずつ持って、来週の月曜日に役所へ行ったら離婚の手続きができるでしょ」佐々木俊介は笑った。「俺より急いでるな」「そんなことないもん」成瀬莉奈も笑いながら佐々木俊介に離婚協議書をコピーしてあげた。その夜、二人は結婚して幸せに一緒に生活している夢を見た。夜はあっという間に明けた。翌日、内海唯花は起きてから、すぐ結城理仁がドレッサーに置いた紙を見つけ、牧野明凛に電話をした。「唯花、まだ眠いよ」牧野明凛は目も開けず、欠伸をしながら電話に出た。「昨日遅くまで起きていたの」内海唯花は笑った。「絶対起きてないと思った。メッセージ送っても絶対見ないから電話したの。結城さんの同僚は今日午前十時にカフェ・ルナカルドで待ってるって。印として、一輪の赤いバラを持っていくみたいで」「……言われなかったら、今日お見合いするのを忘れるところだったわ」牧野明凛は目を開け、ようやくベッドから身を起こした。「またルナカルドなの?わかった、遅刻しないからね」早めには帰るかもしれないが。「じゃ、ちゃんと目覚まし時計を設定して。電話を切るよ」「唯花、一緒に行かないの?」牧野明凛は毎回お見合いをするとき、唯花に頼んで付き合ってもらい一緒に行っていた。内海唯花のさっきまでの軽い口調はがらりと重くなった。「お姉ちゃんが今日、佐々木俊介と離婚の話をするんだ。私はお姉ちゃんの唯一の家族だから、行かないと」「そうだね、ちゃんと唯月姉さんを支えないと、佐々木家のやつらにいじめられるかもしれないよ。そういえば、昨日の晩、あのクズ男がうちの店に来たよ。陽ちゃんのおじいちゃんとおばあちゃんが陽が恋しくなったから、迎えに来たっ
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