その後、唯は出雲おばさんが言っていた「変わった」というのが、単に紗枝への態度が変わっただけだと気づいた。それでも啓司は出雲おばさんに対しても以前より穏やかな口調で話すようになり、確かに変化が見られた。医師チームが到着すると、さまざまな高級医療機器も一緒に運び込まれた。唯はそれを見て感心したように言った。「紗枝、これ全部あなたが手配したの?」「医療機器は啓司が手伝ってくれたの」紗枝は正直に答えた。彼女は、今回専門医を招けたのが啓司のおかげだとは知らなかった。出雲おばさんはそのことを知っていたが、啓司が「紗枝には話さないでほしい」と頼んだ。彼は紗枝に恩を感じさせ、無理に自分と一緒にいさせることを望んでいなかったのだ。このことがきっかけで、出雲おばさんは啓司が本当に変わったと確信した。その後、おばさんは午前中を通じて専門医の診察と治療を受けた。治療が終わると、医師は紗枝に説明した。「夏目さん、高齢者特有の病気を完全に治すのは難しいですが、手術を行うことで寿命を延ばすことが可能です」「分かりました。手術はいつ頃できますか?」「まずは一定期間、薬を服用していただき、その後手術の日程を調整しましょう」医師との打ち合わせが終わり、紗枝は彼らを見送った後、出雲おばさんに声をかけた。「お医者さんが、手術をすれば体調が良くなるって言ってました。すぐに元気になりますよ」出雲おばさんは自分の体調をわかっていたが、紗枝を安心させたくて微笑みながら答えた。「そうね、少しでも長く一緒にいられるように頑張るわ」「うん」唯も横から老人を励まし、家の中は穏やかで和やかな雰囲気に包まれていた。その頃、啓司は会社に行く準備をしていた。医師たちが帰ったのを見計らって家を出た。移動中に牧野に電話をかけた。「昨日の件、調査は進んでいるか?」「黒木拓司で間違いありません」「指示したプロジェクトの件はどうなっている?」「順調に進んでいます」牧野は、この調子なら今年が終わる頃には啓司が会社を取り戻せるだろうと確信していた。啓司はようやく電話を切った。一方、紗枝と唯は逸之に会うため病院へ向かった。その頃、逸之は病室のベッドに横たわり、冷たい目で窓の外を見つめていた。そこに看護師がやってきて優しく声をかけた。「逸ち
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