「カーン!」部屋の中にある置き時計が0時を告げた。出雲おばさんは振り返り、その目を細めながら時計を見て、つぶやいた。「もう0時ね。私は寝るよ」「はい」紗枝は彼女の去っていく背中を見送りながら、手をほんのり膨らんだお腹にそっと置き、先ほどの言葉を思い返して複雑な気持ちになった。つい最近まで出雲おばさんは啓司を嫌っていたはずなのに、どうしてこんなにも態度が変わったのだろう?それどころか、「一緒になってもいい」とまで言うなんて。紗枝は再び遠くにいる啓司と子供たちを見つめたが、首を振った。ダメ、同じ過ちを繰り返すわけにはいかない。道端の枝や積もった雪が片付けられると、啓司は2人の子供を連れて部屋に戻った。紗枝はすぐに暖炉をつけ、彼らがもっと暖まれるようにした。「あとでお風呂に入って、早く寝なさいね」2人の子供は頷いた。子供たちは啓司に指示するだけで、寒さを感じることはなかった。それに対して、啓司は美しくて長い手が真っ赤に凍えていたが、表情には少しも変化がなかった。ここに来てから、啓司は今まで一度もやったことがないような仕事をしてるのよね......紗枝は今夜起きた出来事を思い出すと、彼と目を合わせることができず、子供たちが暖まったのを見届けると、すぐに2人をお風呂に連れて行き、服を準備した。外で長い間凍えていたせいか、啓司の心の中の熱はようやく冷めた。......クリスマス。朝早く、紗枝は子供たちのために美味しい朝食を準備し、家の装飾も整えようと動き始めた。数年ぶりに日本でクリスマスを祝うことになったのは、海外で過ごしていたからだ。彼女はキッチンに向かったが、中に入る前に啓司がシェフと一緒にいるのを見つけた。彼はカジュアルな服にエプロンをつけ、家庭的な雰囲気を醸し出していた。啓司は後ろからの足音に気づき、手にしていたケーキを置いて顔を少し向けた。「紗枝ちゃん」それはただの陳述だった。人が少ない時、啓司は足音で誰が来たのかを判断できる。「うん」紗枝は少し気まずい様子で言った。「今日の朝食はケーキ?」シェフがすぐに答えた。「今日は色とりどりのクリスマスクッキーを準備しています。一緒に作りませんか?」紗枝は啓司がキッチンにいるのを見て、なかなか足を踏み出せなかった。
Last Updated : 2024-12-11 Read more