雅之は手を伸ばして、里香の口に貼ってあったテープをはがした。「うっ!」里香は痛みに顔をしかめ、一息ついてすぐに言った。「雅之、もうちゃんと考えたわ。あなたの言うこと、分かったし、了承するわ」雅之は意外そうに眉を寄せ、「なんで急に考えが変わったんだ?」と尋ねた。里香は唇をかみ、何か言おうとしたその時、遠くから声が響いた。「おい!そこで長話してる暇あるか?潮が満ちてきてるんだぞ!」里香は一瞬驚いた表情を見せ、「まず、ここを離れよう」と促した。雅之はすでに長い足を踏み出しており、里香をひょいと抱き上げると、岸へ向かって歩き出した。車に乗せると、待ちくたびれた様子のかおるが飛び出してきて、里香にしがみつきながら泣き叫んだ。「うぅ、里香ちゃん!もう会えないかと思って、本当に心臓止まるかと思ったんだから!」里香は軽く咳をし、「ゴホン、ゴホン......ほんと、大袈裟よ。私は平気だから」と苦笑した。そこに月宮の冷たい声が響いた。「あんまりしがみつくと、本当に二度と会えなくなるぞ」月宮が眉をしかめている。人の好意を理解できないこの女に、なんでわざわざ自分がこんなこと言うんだろう、とも思いながら。しかし、かおるはその言葉など気にもせず、泣き止みもせずに里香を抱きしめ直した。「ごめんね、里香ちゃん。まずは縛られてる紐を解くからね。あの二宮家の奴ら、ほんとにろくなもんじゃないわ。離婚してやっと解放されたと思ったのに、またあのおばあさんが絡んできて......あの人たち、あなたが死ぬまで追い詰めないと気が済まないの?」かおるがそう吐き捨てた瞬間、冷たい空気が辺りを包み込んだ。かおるはハッとして、チラリと雅之を見やり、「何よ、こっち見ないでよ!」と平然と顎を上げて睨み返した。雅之は無言でかおるの襟首を掴むと、軽々と横に放り出し、そのまま車に乗り込んでドアをピシャリと閉めた。驚いたかおるは目を大きく見開き、叫んだ。「ちょっと!何やってんのよ!?ドア開けなさいよ!まだ里香ちゃんに言いたいことがあるのよ!このクソ野郎、ドア開けろってば!」かおるが勢いよくドアを叩きつけるも、雅之はまるで相手にしていない。車がそのまま発進し、かおるが月宮に引き戻されなければ、タイヤに轢かれかねなかった。「逃げるんじゃないわよ!」かおるは袖をまくり
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