「さて、次の出品は、大正時代の染付瓷をモチーフにしたデザインの着物です。とても時代を感じさせる一品で、コレクション価値も高いです。開始価格は1,000万円からです」「1,100万円」「1,200万円」「1,400万円」「……」あっという間に、この着物は2,000万円まで競り上げられた。三井鈴もタイミングを見計らって入札した。「3,000万円」周囲の人々は三井鈴だと気づくと、次々と札を下ろし、競り合いをやめた。しかし、予想外のことに。ここで、安田翔平が手に持っていた札を上げた。「3,600万円」今夜、安田翔平が初めて値を付けたが、それは三井鈴からこの着物を奪うためだった。「おお、これは驚きの展開だ。安田翔平と三井鈴が対決している」「前妻VS前夫、果たしてどちらが勝つのか?」「なんだかワクワクしてきた」「……」三井鈴は安田翔平が入札してきたことに驚き、眉をひそめながらもすぐに対応した。「4,400万円」安田翔平も続けて札を上げた。「6,000万円」まるで目的を達成するまで譲らないかのような勢いだ。今夜、安田翔平がここに来た目的の一つは、この着物を手に入れることだった。この着物は元々安田家のもので、安田おばあさんの結婚時の持参金であったが、安田家が設立初期に困難に直面した際に売却することになった。安田家が危機を乗り越えた後、安田翔平はこの着物を取り戻したいと思っていた。だが、この着物は博物館に渡り、長らく売却不可の状態にあった。今日ようやくオークションに出されたのだ。安田翔平はどうしても手に入れたいと思っていた。「8,000万円」三井鈴もこの着物を手に入れたかった。今回のショーにこの着物があれば、間違いなく観客を驚かせることができる。「1億2,000万円」二人は全く躊躇することなく入札を続け、まるで数億円が単なる数字でしかないかのようだった。「1億6,000万円」「2億円」「2億8,000万円」「……」ついにこの着物は4億円まで競り上がった。安田翔平は眉間にしわを寄せ、三井鈴の方向を見つめたが、この時点で三井鈴の注意は完全に旗袍に集中していた。安田翔平は彼女の目の奥にある期待を見抜いた。それは、彼女が愛する物に対する切なる渇望だった。
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