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第206話 突然現れた宮脇由里

三井鈴は思わず言った。

それが田中仁が今日ここに来た理由でもあった。

「この着物は現在、国立博物館に収蔵されているんだけど、今夜のチャリティーオークションで出品される予定なんだ」

その一言に、飯塚真理子が先に声を上げた。

「何をぼーっとしてるの!値段なんて気にしてる場合じゃないでしょ!絶対にこのドレスを手に入れなきゃ」

星野結菜もすぐに賛成の意を示す。

「そうね。この着物がショーに不可欠なら、なんとしても落札するしかない」

三井鈴の視線は、着物から離れなかった。

彼女は田中仁を見上げ、静かに言った。「仁兄、お願い、これが欲しい」

「わかった。じゃあ、今夜は僕が一緒に行こう」

「もちろん、私たちも一緒よ!」飯塚真理子と星野結菜が声を揃えた。

……

夜7時。

会場となる「浜白第一会館」は、まさに熱気に包まれていた。参加者は浜白の上流階級ばかりで、まさに一大イベントの様相だ。

飯塚真理子と星野結菜はおそろいの洗練されたドレスに身を包み、華やかに登場。

その場にいた多くの人々の視線を一気に集めた。

「あれ、あれは真理子さんじゃない?あの有名なバイヤーショップのオーナー」

「隣にいるのは、確か一流ファッション雑誌の編集長じゃないか」

「二人は親友だったんだな、羨ましい限りだ」

「挨拶しに行こう」

……

多くの人々が名刺交換を求めて押し寄せ、飯塚真理子と星野結菜はその場を支配していた。彼女たちの話し方や身のこなしは優雅で、すぐに新しい知り合いを作り上げた。

一方、三井鈴は田中仁の腕を軽く掴んで、静かに会場に入っていった。その姿に、周囲の人々は目を奪われた。

今夜の三井鈴はまさに美しさの象徴だった。シンプルでありながら洗練されたドレスが彼女の落ち着いた品格を引き立てていた。

田中仁もまた、非凡な雰囲気を纏っていて、二人並ぶ姿は誰が見ても完璧なカップルに映った。

周囲の人々は、かつて三井鈴が安田翔平との婚約があったことを知っていたが、今この瞬間、三井鈴と田中仁の姿を見た者は、誰もが「この二人こそお似合いだ」と思わずにはいられなかった

「三井さん、この場にご出席いただけるなんて、本当に光栄です!」会場主催者がすぐに駆け寄り、笑顔を浮かべた。その態度はひどく恭しい。

三井鈴はただ微笑んだ。

「せっかくのチャリティーですから、少しで
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