宝物の双子：大物総裁の寵愛を受ける妻 のすべてのチャプター: チャプター 31 - チャプター 40

秋雨は奈央と真希とおしゃべりをしていた。スタッフがやってきてドアをノックし、秋雨に「谷口様、花嫁が出てくる時間です、式が始まります」と告げた。秋雨はうなずき、奈央は彼女の白いベールを下ろした。真希は彼女の後ろを歩き、スカートを引きずるのを手伝った。この時、一清はタクシーから降りてきたところだった。彼女は目を上げ、目の前のホテルを見ると、招待客であふれていた。彼女は緑色のドレスを着ていたが、ガウンでもない地味なスタイルだった。着飾った参列者たちに比べると彼女はかなり地味だった。一清は手にした招待状を握りしめ、深呼吸をした。彼女は自分に言い聞かせた。母親の遺品をもらったら、すぐにその場を立ち去ろうと。彼女はエレベーターに乗り、階段を上って宴会場に向かった。宴会場には、メロディアスな曲調の結婚行進曲が流れていた。秋雨は白いウェディングドレスを着て、ハイヒールを踏みしめ、ゆっくりと回転階段を下りていった。勝利の喜びを胸に、一清の目に映った彼女の微笑みには、嫌味がさした。　　「谷口さんが出てきました！」「カチッ」という音と閃光に目がくらみそうになった。階段の入り口には、高貴なタキシードを着た体格のいい男が立っていて、秋雨を愛おしそうに見つめていた。その視線は、まるでプリンセスを見つめる騎士のように深く、敬虔なものだった。秋雨が階段を下りてきて、優雅に手を差し伸べた。このカップルは手をつないでバージンロードを歩いた。一清はこの光景を見ながら、数年前のことを思い出していた。「清ちゃん、いつか君の手を握ってバージンロードを歩きたい。私たちは永遠に一緒だ」と目の前の男の人に言われた。その結果、振り向いたら、誰かの手を握っていた。一清はうんざりし、ばかばかしいと感じた。当時の自分はそんなことを信じるほど愚かだった。良いことといえば…彼女は今、何も感じていないことだった！「この谷口さんは本当に美しいですね、兼家の若旦那も才能があって、二人はとてもお似合いですね」隣にいた客がささやいた。「おっしゃる通りです、この谷口さんは大スターですよ！ 将来、どんな綺麗な子供が生まれるかすごく楽しみにしていますわ」別の客は、興味深げにその様子を見ながら、返事した。この二人の会話は急に一清の

その言葉に固まった一郎は、話すことに集中するあまり、電話をかけるのを忘れていた。彼は自嘲するように笑った。「鬼本社長、本当に申し訳ございません。あの子はどこに行ったのだろう？今すぐ彼女に電話して聞いてみます、少々お待ちください」彼はひとまずその場を離れ、急いで一清に電話をかけた。一清は遠くからそれを見ており、顔が嫌味に満ちていた。彼女は母の遺品を持ち帰るためにここに来たのだ。ダラダラしてないで、さっさと持っていきたかった。彼女は一郎に近づき冷たい声で、「かけなくても結構です」と言った。彼女がやって来たのを見て、一郎の口調は不快感に満ちていた。「なぜこんなに時間がかかった？」　彼はうんざりした表情で彼女を上から下までじろじろみて、「今日みたいな結婚式になぜこんな格好をしているんだ？みっともない！」と言った。その後、白い目で一清を見た。　　もし鬼本社長がこれを見たら、谷口家を見下すかもしれない。まともな服も着ていない、貧しい乞食のような格好だった。幸いなことは、鬼本家の息子も大してよくないから、一清を拒むことはないはずであることだ。この嫌味な口調を聞くと、一清はとても可笑しいと思った。これが彼女の本当の父親だった。彼女は冷たく笑い、彼をにらみつけた。「私が彼らの結婚式のためにここにいると思ってないでしょうね？ 母の遺品を受け取りに来ただけですよ。着飾って時間を無駄にする必要はないです」秋雨は彼女のものを奪い、さらに彼女にあの妖婦の支援までさせようというの？ありえない。一清は手を伸ばし、うんざりしてこう言った。「物を返してください！」一郎は冷ややかで、両手を後ろに回し、ものを渡すつもりはまったくなかった。「何を急いでいる？これを受け取るためだけに来てくれと頼んだわけじゃないんだ」　寒気が走った。案の定、彼は善意を持ってなかったのだ。彼女は冷たい声で、「じゃあ、何のためですか？」と聞いた。彼の意図が何であれ、彼女が彼に協力するわけがなかった。一郎が答えようとしたところ、鋭く、少し古風な女性の声がした。「あら、清ちゃんじゃないか？」近くにいた琴はそのタイミングを見計らい、わざと声を張り上げながら駆け寄ってきた。　一清は固まり、嫌な目で彼女を見つめた。またこの嫌な女だった。嫌

秋雨は策略が成功したことを喜んだ。一清の心臓は高鳴り、全身の血が流れに逆らっているのを感じた。口の中に血の味を感じ、彼女は舌を噛み、生々しい感情を抑えた。一清の鋭い視線がまっすぐに秋雨を突き刺さった。彼女の声には骨まで凍るような冷たさがあった。「そう。では私は、この姉妹愛に感謝しなければならないの？ 残念だけど、当時の母は私を産んだだけで、私には妹がいないの。愛人の隠し子で出世した娘が、こんなところで私との関係を持ち込むな」その言葉は鋭く、秋雨の出身を直接皮肉していた。この言葉が飛び出すと、琴と秋雨の顔つきが変わり、一郎も顔色が変わった。　世論の方向性が変わり、彼らに火がついたのだ。「その昔、谷口一郎さんは妻を裏切って筒井琴さんと関係を持った。だから二番目のお嬢さんがいるのよ」　誰かがささやいて説明したら、不満そうな声が上がった。「家族を大事にする人に見えるけど、まだこんなことをやっているんだ」「谷口夫人はとても優雅だから、愛人だったとは知らなかった。」　琴と秋雨は、まるで背中に棘が刺さったようだった。結婚式をこのようにかき乱され、右京は不機嫌そうに顔をしかめて言った。「清ちゃん、今日これだけの人が集まっているのだから、たとえ祝福してくれなくても、そんな不愉快な言葉は言わないでくれないか。ここ数年、あーちゃんはあなたのことをずっと心配していたんだよ。なんでそんなことが言える？」　彼の言葉で、秋雨への守りと一清への非難は明らかだった。一清は冷たく笑った。「私のことを心配しているの？二日前、彼女は自ら私の家に来て、おばあちゃんを突き飛ばして、病院送りにしたわよ。そして今、彼女はまだここで演技をしている、芸能界の女優にとてもふさわしいわ。そうでないなら、本当に賞を与えられるべきね」彼女は舌打ちし、あてこすりを言った。この言葉で、皆の顔は見苦しくなった。　まだマスコミが残っていたから、秋雨が濱田夫人を突き飛ばしたことは、おそらくまた芸能界のトップニュースになるだろう。一清が望んだのは、谷口家の面目を失わせることだった。彼女に何度も面子をつぶされ、谷口家のスキャンダルを暴露された一郎は、腹を立てて言った。「もういい！ 今日は彼らの結婚式だ。黙ってくれ！」一清は歯を食いしばり、憤慨している一

彼女の言葉を聞いて、一郎は怒りに震えた。彼は罵った。「この無礼者！」彼は歩み寄り、一清の顔に向かって手を振り上げた。全ての力が彼女の顔に降りかかろうとしていた。　誰もが冷たい空気を吸い込んだ。彼女の小さな顔は、皮膚を破ることはなくても、半日は腫れるだろう。その時、一郎の手が止められた。彼の手首は大きな手に強く挟まれ、動くことができなかった。いつのまにか歩いてきた栗原朱墨だった。黒のドレスコードは長く、気高かった。誰もが驚きに満ちて彼を見た。彼は誰だ？　一郎はまだ怒っていて、ちらっと見上げると、見たこともない青年だった。　このガキは誰だ？なんという度胸だろう、谷口社長さえ挑発する勇気があった！　その瞬間、彼は怒って言った。「なぜ俺を止めた？」　朱墨は彼を一瞥し、氷のように冷たい声で言った。「今日は少なくとも大事な日です。兼家家はこの劇を見るために俺をここに招待したのですか？」そう言うと、彼はうんざりした表情で一郎の手を振り払った。　彼は翔から渡されたハンカチを取り、手を拭いた。一郎は数歩後ずさりしてよろめいた。　立ち止まる間もなく、克之が興奮した面持ちで歩いてくるのが見えた。「栗原社長、いらっしゃいましたね」　この言葉が出た瞬間、現場は衝撃に包まれた。　栗原社長？栗原ということは、もしかして栗原家の人？その場にいた人達が静かにつぶやいた。「兼家家が栗原家を結婚式に招待したという話は前から聞いていましたが。ウソだと思っていましたが、まさか本当だったとは。招待されたのは、つまり栗原グループの社長、栗原朱墨ですよ！」その場にいたお金持ちのお嬢様の多くが、こそこそ話していた。彼女らは朱墨の綺麗な顔を見つめ、思わず顔を赤らめた。「この栗原社長は、本当に若い才能の持ち主ですよ！」「そうですね、栗原家の社長はとても上品で控えめだと前から聞いていたのですが、まさかこんなことが！」彼らの目は輝き、心臓は太鼓を打つようだった。もし栗原社長と結婚できたら、本当に前世で作ってきた幸運のようなものだった。一清でさえ、彼を見ずにはいられなかった。こんなイケメンがいるのだろうか？彼に比べれば、彼女の隣にいた右京は暗くなって光が失われた。容姿、体型、気質、家

一清は信じられない様子で一郎を見ながら、顔には怒りが表れていた。この言葉が出たとき、一郎の顔は一瞬真っ白になった。　この件が明らかになれば、娘を売った彼の行動が確定することになるだろう！倫理の底を超えることだと思われるだろう。今後、谷口家が上流社会で足場を築くにはどうすればいいのか？　周囲の人も騒然としていた！　彼らは一斉に一郎を見て、心の内で疑っていた。　谷口家の長女が言ったことは本当なのだろうか？その言葉に大谷秋雨と筒井静の顔色が沈んだ。秋雨の鼓動は加速し、手に汗を握っていた。　平静を装うことが難しいほどだった。静と彼女の娘は互いに目を見合わせ、相手の目に不安を感じた。これは決して公表してはならないことだ。　そうでなければ、今夜の報道陣はこの記事を報じるだろう。その時、谷口家の評判は地に落ち、おしまいだ。特に秋雨は有名人であり、世間を騒がせることは間違いなかった。　その時、罵られるだけでなく、ブロックされる可能性もある。カチッという音が数回鳴り、秋雨は不安を感じずにはいられなかった。　彼女はメディアを追い払うこともできない状況なのだった。彼女は銀歯を食いしばり、憎しみのこもった目で一清を睨みつけた。一清は、なぜ栗原家と知り合ったの？それに、この栗原社長は何なの？明らかに結婚式のためにここに来たはずだった。それどころか、彼は彼女の家族の面子を潰しに来た！彼女は心の中で思い巡らした。今の状況では、誰かを見つけて、谷口家に言い訳をしなければならなかった。世論については、それまで待つしかないし、炎上を避けるためにお金を使うしかなかった。右京は固まり、彼女を振り返り、質問に満ちた目を向けた。　彼女はすぐ彼にウィンクをした。　彼は気づき、自然に翔に話しかけた。「加藤様、私たちを誤解しているようですね。この件は、思っているようなことではありません。鬼本家の若旦那さんは、初めはふざけていましたが、今は悔い改めて更生しています。彼の足は負傷していますが、まだ回復することができます。清ちゃんの幸せのために、どうしても結婚させたいのです。誤解しないようにお願い致します」　彼の言葉はとても力強く、谷口家の疑いを一蹴した。　翔は彼を信じずに軽く笑った。　この兼家家の